電動工具にブラシレスモーターを使うメリット

ここ数年間で電動工具のモーターもブラシモーターからブラシレスモーターに置き換わりました。ブラシレスモーターを搭載した電動工具と言えば永い間インパクトドライバーだけでしたが、ここ最近では更なる小型化・高性能化が進み、丸のこやディスクグラインダなど様々な電動工具にもブラシレスモーターが採用されています。

そこで今回は、電動工具のブラシレス化によるメリットというものを私的見解も含めてまとめてみました。

ブラシレスモーターを電動工具に使うメリット

今まで電動工具の主流だったブラシモーターはコイルの巻き線が回転するモーターでしたが、ブラシレスモーターは磁石が回転するモーターという構造になっています。

現在、ブラシレスモーターはブラシモーターのブラシの摩耗による騒音やノイズ、ブラシの寿命という課題を解決したモーターという事で、電動工具のみならず車からコンピューターまで幅広い用途で活用されています。

さて、このブラシレスモーターの電動工具にはどんなメリットがあるのでしょうか。

カーボンブラシの交換が不要


日立工機 カーボンブラシ No.43 普通カーボン 2個入 999043

ブラシレスモーターの最大の特徴は、その名前の表す通りカーボンブラシがなくなったことです。ブラシがなくなったことによって、ブラシの交換という手間がなくなりました。

消耗部品であるブラシがなくなったことによって、モータ単体で見た場合でのメンテナンスフリーを実現しています。(もちろん電動工具として見ればベアリングやギアの消耗はあります)

また、ブラシが無くなることにより電磁ノイズが減少するという特徴もあります。ブラシモータはブラシと整流子の間に電気火花が発生し電磁ノイズが大量に発生することがあります、そのため、昔のブラウン管テレビやラジオの近くで使用するとノイズの影響を受ける事があります。

ブラシレスモーターでも若干ノイズは発生しますが、ブラシモータと比べれば大きく低減されています。

モーターを小さく・軽くできる

ブラシレスモーターは整流子(ブラシと接触するところ)がなくなったため、モータを小さくすることが出来ます。更に、重量面においても整流子部分が丸ごと無くなった分、軽くなっています。

マキタのブラシモータとブラシレスモータの大きさ比較。高出力ブラシレスモータの登場で全長の小型化が進んだ。

エネルギー変換効率がとても良い

ブラシレスモーターは構造上、とても電気エネルギーを運動エネルギーに変換する効率がとても良くなっています。効率が良いという事はコードレス工具のバッテリーを長く持たすことが出来る事にも繋がるため、バッテリーを使う電動工具ではブラシレスモーターを使う事は非常に大きなメリットとなります。

なぜ、ブラシレスモーターの効率がいい理由として、ブラシ(摩擦)がなくなった事が第一に挙げられますが、それ以外にもロータ部分に磁石が組み込まれたからという理由があります。ロータ部分に永久磁石が組み込まれたことによってコア損失(鉄孫)がなくなったため、モーター効率が向上しています。

水(防滴)・ホコリに強い

ブラシレスモーターはむき出しの電気接点が無くなったことによって、防水・防じんの処理がしやすくなったという特徴があります。防水・防じんに対応した工具の内部はシリコンでコーティングされており、制御基板や配線などが影響を受けにくいように保護されています。

従来のブラシモーターは電気的な接点がむき出しになっているため、水やホコリに非常に弱くなっています。(マキタにはブラシモータでもAPT規格のものがありますが…)

ソフトウェア的な付加価値をつけやすい

ブラシレスモーターには、モーターを駆動させるためにマイコン(小さなコンピューター)を必要とします。マイコンは電動工具の制御回路上にあり、この働きによってモータを動かしたり、LEDを制御したりします。

ソフトスタートやインパクトなどに搭載されているテクスモードなども、ブラシレスモーターを駆動するために搭載されているマイコンの中に入っているソフトウェア制御によって実現しています。

また、ブラシレスモーターはブラシモーター以上の制御のノウハウが必要になり、この辺りの微妙なフィーリングの違いが電動工具メーカーの特徴して表れています。

特にソフトによる付加価値の中では、日立工機の電動工具に搭載されているキックバック軽減システムなどの安全面に考慮された機能が特徴的です。また、海外の電動工具などではIoTを導入した電動工具も発売されていることから、今後も更なるソフトウェアによる付加価値が電動工具にももたらされるものと考えられます。

ブラシレスモーターの欠点

制御回路が必要

ブラシレスモーターには高度な制御が必要になるため、それを制御するための制御基板(電子回路)が必要になります。ブラシモーターは単純に電源に繋げてしまえば簡単に回転しますが、ブラシレスモーターの場合はローターの位置検出や、インバーターの制御など、様々な制御の元でモーターを回転させています。

ブラシレスモーターでは、モーターの他に制御回路が必要になるため、電動工具のどこかに制御回路を設置するスペースを確保する必要があります。

価格が高い

ブラシレスモーターを制御する制御回路は、ブラシモーターを制御する回路よりも複雑になっているため、その分のコストが上昇しています。

ブラシレスモーターは『制御回路(マイコン)+プログラム+インバーター回路+モーター+位置センサ』と様々な部品によって構成されているため、モーターの原価は非常に高くなります。またブラシレスモーターはブラシモーター以上の開発コストがかかります。

工具の本体価格が高くなるのはもちろん、修理価格も異常に高くなることがあります。

まとめ

電動工具の進歩というのは、突き詰めてしまえば『小型化』『高性能化』に尽きると思います。そんな中登場したブラシレスモーターというのはこれらの条件を満たす事の出来る、非常に有効なモーターです。

ブラシレスの電動工具は高価ですが、その価格差を補ってくれる以上の性能を持つようになり、現在の電動工具はブラシレスモーターがスタンダードになりつつあります。まだまだ価格も高いため、現在はプロ向けにしか展開されていないブラシレスですが、その価格差を十分に埋めてくれる性能を持っているのがブラシレス電動工具です。

特に、プロの方が選ぶインパクトドライバーであれば、ブラシレスモーターを選ぶことには何のデメリットもないと言えます。

 

また、これはブラシレスモーターの営業表現として個人的に気になっているところですが、ブラシレスモーターは確かにブラシがなくなった事によって寿命が大きく向上したモーターと言えます、しかしこれを持ってメンテナンスフリーと主張するには若干抵抗があります。

これは個人的なイメージですが、現在のブラシモーターは言うほどライフサイクルそのものはそこまで短くなく、よほどの酷使をしない限りはカーボンブラシ3.4本分は使い続ける事が出来ます。そしてそれくらい使った電動工具はベアリングやギアも寿命に近づいているので、それぐらいになって初めて寿命となります(修理・点検等のメンテナンスが必要になる)。しかし、ブラシレスモーターは単にブラシがなくなっただけであり、ベアリングやギア周りの寿命が根本的に改善されたわけではありません。そのため、ブラシレス電動工具のメリットにメンテナンスフリーをアピールするのは若干語弊があり、もっと軽量になった点などをアピールするべきでは?と考えています。