鉄を切る道具(1):幅広い用途に使える【ディスクグラインダー】

鉄の加工は木材やプラスチックに比べると一見難しそうな作業です。しかし、適切な道具を使えば思ったよりも遥かに簡単に切ったり削ったりすることができます。

金属を加工する道具には様々なものがありますが、それぞれ一長一短あります。今回から鉄の切断という作業に注目して様々な道具を紹介したいと思います。

鉄を切る道具(1):幅広い用途に使える【ディスクグラインダー】
鉄を切る道具(2):鉄パイプやアングル材を切断するならこれ【高速切断機】
鉄を切る道具(3):切断速度が速く面も焼けない【チップソーカッター】
鉄を切る道具(4):パイプ切断や解体作業に最適【セーバーソー】
鉄を切る道具(5):切断音も切りくずも少ない【バンドソー】
鉄を切る道具(6):板金加工や窓抜きに!【ニブラ】
鉄を切る道具(7):板金切断の専用工具!【シャー】
鉄を切る道具(8):寸切ボルト専用カッター!【全ネジカッター】


グラインダーとは?

By: Mark Hunter

ディスクグラインダーは研磨や切断によく使われ、小型で取り回しもよく非常に便利な電動工具です。それ故に金属や木材・コンクリートなど幅広い場面で使用されることもあります。この工具は単純に「グラインダー」と呼ばれたり「サンダー」や「ヘビーサンダー」あるいは「ディスクサンダー」などとも呼ばれたりします。

ディスクグラインダーの先端には切断砥石をはじめ様々なディスクを取り付けることができます。これを高速回転させることで様々な作業を行えます。取り付けるディスクを交換すれば切断や切削・研磨などの幅広い作業を行うことができ、金属非金属・木材などを問わず様々な材料の加工や仕上げを行うことができるのが特徴です。

 

殆どの金属切断作業に対応

By: Jonas Bengtsson

「金属切断を行うならなんの工具を買ったらいい?」と聞かれたら、間違いなくディスクグラインダーと答えます。その理由としては「取り回しがよく様々な作業に対応できる」「工具本体の価格が安い」「消耗品であるディスクの単価が安い」という理由が挙げられます。

金属切断作業を行える電動工具にはディスクグラインダーの他に高速切断機やチップソーカッターなどがありますが、ディスクグラインダーは構造も単純で多くの状況に使用することができます、また、構造の単純さゆえに他の工具に比べて価格が安く種類も豊富です。なにより、最大の特徴は消耗品の価格も安いという事です、切断砥石は一枚100円程度であり価格の割によく切れるのでコストパフォーマンスに優れています。

切断できる金属も幅広く、ディスクを交換すれば鉄・ステンレス・アルミ・焼き入れ鋼など幅広い材料に対応できます。

ディスクグラインダーのサイズにはΦ100mm~Φ180mmまで様々なものがありますが、交換できるディスクの種類は100mmのものが一番豊富なのでディスクグラインダー本体もΦ100mmのディスクに対応したものがオススメです。(勿論、作業自体は大型のディスクグラインダーを選んだほうが効率的です)

 

切断砥石を用意しよう!

レヂトン 切断砥石「金の卵」(10枚入) 105×1.0×15レヂトン 切断砥石「金の卵」(10枚入) 105×1.0×15

ディスクグラインダーだけでは金属の切断作業はできません。別途、切断砥石というものを準備する必要があります

切断砥石は各社様々なものがありますが正直なところ各社大差ないように思います。切断砥石は厚さが1mm~2.5mmのものがありますが、すべての場合において薄い砥石が有利というわけではないようです。薄手の材料には厚い砥石を、厚手の材料には薄い砥石を使用すると調子がいいようですよ。有名どころではレヂトンの金の卵あたりでしょうか。

参考:今週の問題(切断砥石)- 大工道具屋のひとりごと

私の知る限りでの一番薄い切断砥石はNORTONのエクスプローラ0.8mmのようです。

ちなみに、非鉄系の材料を切る場合は材料に合った専用の切断砥石を使うようにしましょう。アルミなどの軟らかい金属を切ると鉄用の切断砥石で切断すると回転砥石の自生作用が働かなくなり砥石がすぐダメになってしまいます。

また、切断砥石は切断専用の回転砥石なので面を使った研削を行うと砥石が破裂して怪我します。絶対に行わないようにしましょう。

便利だが音は大きく火花も散る

By: Phil

価格も安く取り回しにも優れるディスクグラインダーですが、欠点もあります。

ディスクグラインダーによる金属加工は基本的に砥石の回転運動による研削なので、高速回転するモーターの動作音や砥石で研削している時の振動など非常に大きい音が発生します。また研削砥石の特徴である自生作用による砥石の破片飛散と材料の研削による火花が大量に発生するため、可燃物のあるような場所で作業してはいけません。

 

研磨作業もできる

36704833_3beeeb4a26_oBy:Mat_the_W

鉄を切る道具としてディスクグラインダーを紹介していますが、本来は研削や研磨に使う電動工具です、特にバリ取りなどでよく使われます。

切断作業ではディスクの側面部を材料に当てて研削を行いますが、研削作業では分厚い砥石を使ってディスクの面の部分を材料に当てて研削を行います。使うディスクも回転砥石だけではなく紙やすりを重ねたような多羽根ディスクやナイロン繊維に砥粒を付着させたナイロンディスク、金属のブラシをつけたカップブラシなどがあります。

また、フェルトディスク等を使えば金属の鏡面仕上げ作業も行うこともできますし、木の皮むきやの木材の仕上げだって可能です(ウレタン系ニスを使えば木工塗装の最高ランクと言われる木材の鏡面仕上げだってできます)。このように幅広い材料に対応し、様々な作業を行える、これがディスクグラインダーをお勧めする理由です

 

様々なモーター

ディスクグラインダーに使われるモーターはACブラシモーターのみでしたが、現在はブラシレスモーターやバッテリーに対応したモーターなど様々なモーターが実用化されています。

ACブラシモーター

レヂトン 金のグラインダー(金の卵105×1.0 標準装備) RKG-100レヂトン 金のグラインダー RKG-100 砥石径100mm(切断砥石と切断砥石用カバーが付いています)

一番一般的なグラインダはコンセントに繋ぐタイプのカーボンブラシを使ったディスクグラインダです。

各社から様々な製品が販売されており、価格帯も\3,000~\20,000までと様々です。DIYなどでは安価なモデルでも十分ですが、500W前後の定格電力が低いものが多いので、物足りなくなったりいろんな作業を行おうと思ったら有名電動工具メーカーの廉価モデルを購入するのがオススメです。

 

ACブラシレスモーター

日立工機 電子ディスクグラインダー 砥石径100mm×厚さ3mm×穴径15mm AC100V 無段変速 G10VE日立工機 G10VE ACブラシレスグラインダー 砥石径100mm

最近、日立工機から販売されたのがACブラシレスモーターを搭載したディスクグラインダです。

ブラシがなくコイルの断線やコンミの摩耗がないためメンテナンスフリーなのが特徴です。また、コードレスブラシレス工具の特徴そのままに軽量・コンパクトボディで取り回しに優れています。そして最大の特徴は継ぎコードでの電圧降下でもパワーが落ちない事とエンジン発電機で使用できるという事です!!

ディスクグラインダーなどの電動工具は起動時の消費電力が非常に大きく、インバーターが搭載されていても容量が小さなエンジン発電機で急激な負荷変動を与えると、急激な電圧変動が発生して電動工具に内蔵されている電子制御回路などが破損することがあります。このACブラシレスモーターはメーカー側が明確にエンジン発電機で使用可能と書いてあるので、故障の心配なく安心して使用することができます。

欠点として、価格がほかのグラインダーと比べ高価なのと、ACブラシレスモーター自体が世に出たばかりでまだまだ未知数なのが難点でしょうか。原理上モーターに接点が存在しないのでメンテナンスフリーの長寿命なのは頷けますが、インバーターなど制御回路の寿命などが気になるところです。(ブラシの寿命よりは確実に長いでしょうが)

この辺は知り合いや販売店に使い勝手や評判を聞いて後日レビューしたいところです。

 

コードレスブラシモーター(充電式グラインダー)

日立工機 18V コードレスディスクグラインダー 充電式 5.0Ahリチウムイオン電池、急速充電器、ケース付 グリーン G18DSL(LJCL)(L)日立工機 18V コードレスディスクグラインダー G18DSL 砥石径100mm(充電器、バッテリー付き)

バッテリーで使うタイプのディスクグラインダーです。リチウムイオン電池の登場と性能向上によりディスクグラインダーでもコードレス化が一気に進みました。(マキタから9500Dというニッカドのコードレスが一応出ていますが…)

コードレスのため取り回しに優れ、よっぽど酷使させなければACのグラインダーに負けず劣らずの作業を行うことができます。しかし、それでもコードレスのグラインダーはACのものに比べてモーターにかかる電流が非常に大きいため過負荷や連続作業に弱くあまり無茶をしないように使いましょう。

個人的にはハンドルをつけてバッテリー側を掴んで作業するといい感じです。コードもなくACのグラインダーより持ちやすいのでバッテリーの重さはあんまり気になりません。

コードレスタイプは無名メーカーや新興メーカーによる取扱は殆どありません。メーカーはマキタ・日立工機・パナソニック・BOSCHから選ぶといいでしょう。

 

コードレスブラシレスモーター

日立工機 18V コードレスディスクグラインダ 充電式 レッド 砥石径φ100mm 6.0Ahリチウムイオン電池、急速充電器、ケース付 G18DBVL(LYPK)(R)日立工機 18V コードレスディスクグラインダー G18DBVL 砥石径100mm(充電器、バッテリー付き)

最近発売されたブラシレスモーターを使ったディスクグラインダーです。国内ではマキタと日立工機から販売されています。

ブラシレスモーター採用による接点がなくなったことによる長寿命化と、高効率によるパワーの向上で使い勝手がよくなっています。変速機能も搭載されたためステンレスの研磨や木材の切削など、より幅広い材料に対応しています。

また、コードレスブラシレス唯一の特徴として、持つところにくびれがあり、持つところの太さは全てのグラインダーの中で最も細くなっています。(コードの部分持てばいいじゃんって突っ込みはナシですよ)

 

グラインダーのスイッチ

グラインダーのON/OFFの切り替えにも様々な種類があります。

ディップスイッチ

ディスクグラインダーに多いのがこのディップスイッチです。

ON/OFFを両手で操作しなければならず、不意の事故が起きたときにすぐ停止させることができないのであまりオススメはできません。

スライドスイッチ

中~高級機種に多いのがスライドスイッチです。

片手でON/OFFを操作でき、スイッチに触れるだけで停止させることができるので比較的安全です。ちなみにスライドスイッチ部分にコンクリートの粉塵などが入ると摺動が悪くなってしまうので注意しましょう。

パドルスイッチ

マキタ ディスクグラインダ GA4034(高速型)パドルスイッチマキタ ディスクグラインダ GA4034(高速型)パドルスイッチ

マキタの一部機種に搭載されているのがパドルスイッチです(日立工機からも似たような大型スイッチが搭載された機種があります)

一見、簡単にスイッチが入ってしまいそうですが、ロックオフレバーが付いているため押すだけではスイッチは入りません。もちろん、スイッチを離せばすぐにOFFになるため一番安全なタイプのスイッチです。一番安全ではありますが、グラインダーの持ち方が固定されてしまうのと、常に握らなければいけないので握っている手が疲れてしまうのが欠点でしょうか。

 

その他機能

変速

変速機能が搭載されていれば簡単に焼き付いてしまうステンレスの研磨や一瞬でコゲてしまう木材の切削などが簡単に行えるようになります。また、カップなど一部のディスクは最高使用周速度が低いものがあるので、必ず変速できるタイプのグラインダーを選ばなければいけません。

ちなみに、低速回転で切断作業を行うと、研削が進まず砥石が熱で簡単にボロボロになったり鉄に焼きが入って切れなくなってしまうことがあります。

電子制御

ソフトスタートや定速度制御、過負荷を検知して停止させる機能全般を電子制御といいます。

ソフトスタートなしでは電源を入れたときに砥石がすぐ全速で回るため若干の衝撃があります。定速度制御は研削するとディスク回転数が下がるので、作業効率を落とさないように回転数を維持する制御を行います。また、過負荷は過電流によってモーターが焼けないようにする機能です、ちなみに連続使用によるモータ加熱では停止しないので連続作業時間は守りましょう。

電子制御が搭載されている分、工具本体に負荷はかかりませんが無茶ができないので人によっては使いづらいようです。(エアーで強制冷却しながら無理やり使う人には使いづらいようです)

再起動防止

スイッチがONのままコンセントを接続しても(バッテリーを刺しても)回転しないようにする機能です。

作業の最後にスイッチOFFさせないで、コンセントを抜いてそのままにしちゃう人が案外いるらしいです。

ブレーキ

マキタ ディスクグラインダ 低速高トルク ブレーキ付 100mm GA4033マキタ ディスクグラインダ 低速高トルク ブレーキ付 100mm GA4033

電源をオフにしたときすぐに回転が止まる機能です。

殆どのグラインダーは電源をオフにしても惰性で少しの間回り続けます。ブレーキが付いていればすぐ止まるので万が一傷害が発生しても深刻化しないかもしれません。また、頻繁に砥石を交換する作業ではブレーキ付きであることで効率が上がります。個人的にはあまり優先度の高くない機能です。

二重絶縁

二重絶縁マーク

グラインダーは常に振動にさらされ、鉄粉など導電性の粉塵が舞う環境で使用されます。そのためコイルや内部配線の被膜がはがれたり、むき出しの銅線と鉄粉がショートすると作業者に感電する事があります。

一般的には3Pプラグのアースを繋ぐことで漏電による感電を防ぐことができますが、二重絶縁構造の工具であればアースに接続しなくても安全に使用することができます(そのため二重絶縁構造の工具は2Pプラグです)。

基本的に感電による事故は殆ど起きませんが、万が一のことも考えて二重絶縁のグラインダーを選ぶことにしましょう。

 

切断作業は危険なので万全な装備を

By: Iain Farrell

個人的にですがディスクグラインダーという工具は最も危険と直結している電源工具だと考えています。

回転系の工具はいくつもありますが、ディスクグラインダーはその大きさに見合わない高出力や幅広い作業に使える取り回しの良さなど、一歩間違えれば簡単に事故に直結してしまう道具でもあります。故に、少しでも危険な作業だと思ったなら作業環境を考えなおしたり、自分の防護を見直すなど考えなければなりません。

マキタ ホイールカバー (切断砥石用) 192476-6ホイールカバー (切断砥石用)

また、先述のように本来グラインダーは切断作業を行うものではありませんでした。役人と各種メーカ間の交渉の末、切断砥石用のカバーを作ってやっと販売可能になったという経緯があります。そのため、切断作業を使うときは絶対に切断砥石用のカバーを取り付けなければいけません。もちろん、砥石カバーを外して作業を行うなんて事は論外です。

特に、一番やってはいけないのがグラインダーにチップソーを取り付けることです。回転砥石とチップソーでは必要な回転数やモータのトルクが異なりますし、防護カバーの面積が足りないのでチップが飛んだり、キックバックしたときなど作業者が怪我をすることがあります。

マキタ グリップ 36 コンプリート 152490-4グリップ 36 コンプリート

グラインダーにはできるだけハンドルを取り付けるようにしましょう。切断でも研削でもそうですが、片手でグラインダーを使っているとキックバックしたときに遊んでいる手を傷つけてしまうことがあります。できるだけハンドルを取り付けて両手で作業するようにしましょう。(グラインダーに付属してなくても\500くらいで買えるので用意しておきましょう)

ディスクグラインダーまとめ

使える材料 鉄・ステンレス・焼き入れ鋼・アルミ・木材・コンクリートetc…
使える形状 板金・ワイヤー・金属棒・パイプetc…
利点 幅広い材料に対応・ディスク交換で様々な作業に対応
欠点 火花が散る・作業音が大きい・危険性が高い
総合評価(最大★5) ★★★★★

 

鉄を切る道具(1):幅広い用途に使える【ディスクグラインダー】
鉄を切る道具(2):鉄パイプやアングル材を切断するならこれ【高速切断機】
鉄を切る道具(3):切断速度が速く面も焼けない【チップソーカッター】
鉄を切る道具(4):パイプ切断や解体作業に最適【セーバーソー】
鉄を切る道具(5):切断音も切りくずも少ない【バンドソー】
鉄を切る道具(6):板金加工や窓抜きに!【ニブラ】
鉄を切る道具(7):板金切断の専用工具!【シャー】
鉄を切る道具(8):寸切ボルト専用カッター!【全ネジカッター】