マキタ 日立 RYOBI一番性能のいいフラッグシップインパクトはどれか


国内電動工具3社のフラッグシップインパクトが出そろう

今まで、国内電動工具メーカーのインパクトドライバはマキタと日立工機の2強でしたが、2017年春に待望のRYOBI新型フラッグシップインパクトが発売され、性能的に3社で横並びとなりました。

インパクトドライバのフラッグシップ(高級)モデルは、高性能・小型・防水とフラッグシップに相応しい性能を備えています。しかし実際のところ、インパクトの性能を表す締付けトルクとは何なのか?とか、他社のインパクトとどう違うのか?という点について各電動工具メーカーは明確なアピールポイントを出していません。

そこで今回は、性能を表す基準となる締付けトルクについての説明と、簡単なインパクトドライバ性能の比較の方法について解説していきます。

締付けトルクがインパクトの性能?

インパクトドライバを始め、インパクトレンチ・ドライバドリル等の電動工具の性能を表す基準の一つして締付けトルクが表記されています。電動工具を選ぶ際にこのトルク値を基準にして選ぶ方も多いと思います。

さて、このインパクトの性能と表す指標である締付けトルクですが、果たして本当にインパクトドライバの性能を正しく表せているのでしょうか。この答えはイエスでもありノーでもあります。

電動工具メーカーが表記している締付けトルクという表記は、ほとんどの場合、高力(ハイテンション)ボルトで鋼材を締付けた際のトルクであり、その締付けトルクは限られた条件下での値となります。そのため、常にカタログスペックのトルク値で締付けられるわけではありません。締付け条件が異なれば締付けトルクも大きく変動します

例として、マキタTD170Dの取扱説明書に記載されているボルトの種類・ボルト径と締付けトルクの関係を記載します。M14高力ボルトの締付けが一番トルクが高く、径が細くなるにつれてトルクは減少することがわかります。この参考値からもわかるように、締付けトルクは様々な要因を受け、常に一定ではないことがわかります。

マキタのTD170Dの取扱説明書に記載されているボルト径と締付け時間のグラフ。普通ボルトより高力ボルトの方がトルクが高くなり、径が細くなるほどトルクが低くなる。(マキタTD170D 取扱説明書P,33)

もう一つ、締付けトルクがインパクトドライバの性能の絶対的な指標にならない理由として、この図はあくまでもボルトの締付けに関する資料であり、木ビスの締付けに関する資料ではないという事です。ボルトの締付けトルクが速いからと言って、木ネジの締付けも早いとは言い切れないのです。

例として、オイルパルスドライバが上げられます。オイルパルスの締付けトルクは20N・m~30N・mと通常のインパクトよりも低くなっていますが、木ネジの締付け時間に関しては170N・mもあるインパクトとの締付け時間にトルク差ほどの大きな違いはありません。これは、インパクトの打撃力が強く・打撃時間が短いという構造に対して、打撃力が弱く・打撃時間が長いというオイルパルスの特性が木ネジの締付け作業では有利になるからです。

また別の例を挙げると、コーチボルト(太い木ネジ)の締付け作業では250N・mも出るインパクトレンチと150N・mのインパクトドライバの締付け時間が大きく変わらないという例もあります。

このように、カタログに示されている締付けトルクというのは、指定された条件下でのボルト締付けトルクを示しているだけであり、木ネジ締付けなどを代表とする別の環境下では条件が異なるため、締付けトルクをインパクトドライバの性能として表すのは不適切と考えられるのです。

ボルト締付けの基本は軸力

本来であればボルトの締付け以外にも木ネジの締付け性能などについても詳しく言及するべきなのでしょうが、メーカーがそれを比較できるデータ開示しておりません。この点については非常に残念ですが、ここから下はボルト締付け作業の性能についてのみ言及したいと思います。

ネジを回して締付けるときに回転方向に回す力を締付けトルクと言います。ですが、実際にネジを固定して材料を材料と締結させている力は締付けトルクではありません。ボルトを締めこんでいくと、ボルトは引き延ばされバネのように元に戻る力を発生させます。このボルトが元に戻ろうとして材料を締め付ける力こそ、材料を締結させている力の正体であり軸力と呼びます。

本来であればこの軸力を直接管理してネジが締付けられていることを確認したいのですが、軸力を測定することは非常に難しいため、代用となる測定方法が活用されます。その中の1つが後述するトルク法です。

ちなみに、ボルトを締付ける力のうち約5割が摩擦となり、3割から4割は摩擦に打ち勝つ熱として損失され、残りの1割程度が軸力として残るとされています。

トルク測定が締付け管理の主流

トルク法は締付けの際にネジを回すトルク値で締付けを管理する最も一般的に使用されている締付け方法です。このトルク方は管理や作業が容易である一方で、外的な影響を多く受け、軸力のばらつきが大きいという問題が発生します。外的の影響の例としては被締結材の機械的要素やボルト径・潤滑剤・温度・締付け速度などが挙げられます。

各社フラッグシップインパクトの比較

マキタ TD170D


マキタ TD170DRGX 充電式インパクトドライバ 青 18V 6.0Ah

マキタ製のフラッグシップインパクトTD170Dです。

TD170Dは締付け開始時の締付けトルクは低くなっていますが、1.5秒ほどで他社相当の締付けトルクが出ます。

これは木ネジ締付け作業時のフィーリング(カムアウト防止)を重視しているために、仕様としてソフトスタートを強くしているものと推定されます。

左はTD160D(14.4V)、右がTD170D(18V)の締付けトルク(TD170D 取扱説明書P3)

TD170Dはソフトスタートの影響が強く出ているせいか、1秒未満での締め付けトルクは低い傾向にある。(マキタTD170D 取扱説明書P,33)

日立工機 WH18DDL2


日立工機 18V コードレスインパクトドライバ 6.0Ahリチウムイオン電池1個仕様 急速充電器 ケース付 グリーン WH18DDL2(LYCK)(L)

トリプルハンマを採用した日立工機製のインパクトドライバWH18DDL2です。

日立工機のみインパクトのトルク測定に何故かM14高力ボルトを使っており、他社より厳しい条件となっています。(一般的に小さいボルトの方のトルクは小さくなりやすい)

WH18DDL2は1秒未満で締付けた場合の締付けトルクが非常に高くなっています。その一方で1秒以上締め付けてもトルクの上昇幅が少ないことがわかります。

左はWH14DDL2(14.4V)、右がWH18DDL2(18V)の締付けトルク。日立工機のみ締付けトルク測定にM14高力ボルトを使っている。(日立工機 WH18DDL2 取扱説明書P,11)

WH18DDL2は0.5秒~1秒間の締付けトルクが非常に高い。しかし、1秒以上の締付けではトルクの上昇が穏やかになる(日立工機 WH18DDL2 取扱説明書P,24)

 

RYOBI BID-10XR

RYOBIの最新フラッグシップインパクトBID-10XRです。カタログスペック上の締め付けトルクは180N・mと最大のトルクとなっています。

BID-10XRはトリプルインパクトを採用したWH18DDL2とM14高力ボルト締付け同じような締付けトルク曲線となっていますが、M12ボルト締付けでは若干劣っています。細いボルトは締付けが若干遅くなる傾向があるようです。

RYOBI BID-10XRの締付けトルク。条件はマキタと同じ

図をまとめてみた

国内3社のインパクトのスペックを並べてみましたが、各社で縮図や測定時間が異なるので駒かな違いがよくわかりません。そんなわけで、マキタのグラフを基準にしてM14ボルトでの締付けトルクを同じ尺度でまとめてみました。

3社のインパクトのM14高力ボルトの締付けトルクをマキタ基準の縮図でまとめてみたところ。締付け時間2秒では各社同じ締付けトルクになるが、1秒未満では差が出る

一枚の図にまとめると、各社のインパクトドライバの個性が見えてきます。

マキタのTD170Dは締付け始めのトルクは低くなっているものの、1.5秒以上の締付ければ他社並みの締付けトルクが確保できます。しかし、1秒以下ではトルクが低く感じるかもしれません。

日立工機のWH18DDL2は締付時間1秒未満での締付けトルクが高くなり、M12ボルトになるとさらに顕著になります。ですが1秒を超えると締付けトルクの上昇は小さくなります。

RYOBIのBID-10XRもWH18DDL2と概ね同じ曲線を描いています。ですが、M12ボルト締付け時ではWH18DDL2ほど早くありません。

まとめ

今回検証してみるとカタログスペック上では10N・m以下のスペックの違い内容に見えますが、1秒未満の締付け作業で大きな違いがある事がわかりました。

カタログスペックに記載されているインパクトドライバの締付けトルクという表記は、一応の目安であって、絶対的な性能を表すものではありません。ボルトの径や材料が変わってしまえばトルクも大きく変わってしまいますし、コードレス工具などでは電池残量の影響を強く受けてしまいます。

また、木ネジの締付け作業などでもボルトに締付けトルクの数値はあまり参考になりません。

今回は取扱説明書に記載されている条件のみで比較してみましたが、実際の締付け作業や木ビスの測定などを行ってみればまた違う結果になると思います。特にインパクトドライバは締付けの早さなどもそうですが、フィーリングも重要な工具です。重量バランスだったりソフトスタートのかかり具合だったりと、様々な要因で使いやすい工具というのは人によって変わってきます。

今回の記事はあくまでもインパクトの性能について言及した記事ですが、インパクトドライバ選ぶ際の購入の参考の一つとして頂ければ幸いです。