マキタと日立工機の電動工具の違い

国内の大手電動工具メーカにはマキタと日立がありますが、この違いについて販売店の意見やネットの総評、私的見解も含めて考えてみました。

 


国内の大手電動工具メーカはマキタと日立

工具メーカー2016年の世界シェア(手工具含む)。トップはブラックアンドデッカー、その後ろにボッシュ・TTIと続く。ここ数年のTTIグループの伸張はすさまじく、これまで工具世界シェア3位だったマキタを押しのける結果となった。(出展StanlyBlack&Decker: 2017 Investor Overview April)


電動工具はマキタ日立工機リョービパナソニックなど日本のメーカーをはじめ、ブラックアンドデッカーボッシュヒルティミルウォーキー(TTI)など欧米にも有名な電動工具メーカーがあります。

その中でも日本市場ではマキタと日立工機が強く、プロユースでもDIY用途でも様々な種類の電動工具が販売されています。電動工具といえば一般的にはホームセンターというイメージがありますが、この2社は地元密着型の金物屋プロ向け工具店などで強い販路を持っています。マキタや日立工機の看板を上げた金物屋を見かけたこともある方もいるのではないでしょうか。

ちなみに、世界トップシェアのブラックアンドデッカーとボッシュですが、日本では流通量が少なく販売店も多くないので国内ではあまりメジャーではりません。カインズホームなどの一部の大型ホームセンターで取り扱いはありますが、金物屋での販路が非常に少ないために使う方は少ないそうです。


他の電動工具メーカについての解説はこちらの記事へどうぞ

【2017年版】電動工具にはどんなメーカーがある?電動工具メーカーガイド

2016.12.27

Li-ion工具のラインナップとアフターサポートに強いマキタ

マキタはリチウムイオンを使ったコードレス工具の多彩なラインナップ強固な営業網によるアフターサポートが強みです。

現在、コードレス工具のバッテリーは14Vから18VのLi-ionバッテリーに変わりつつあり、マキタは18V工具のラインナップ強化に努めています。(コードレスのコーヒーメーカまで売っています)

18VLi-ionバッテリーに対応した電動工具はマキタが150モデル日立が101モデルマキタのほうがラインナップが多く、マキタのバッテリーさえ持っていれば様々な作業を1つの18Vバッテリーで済ませることができます。(一部互換性のないバッテリーもあります)

また、マキタの36V工具は18V電池を2本使用する方式で、36Vの専用電池を用意する必要がないため、手軽に高出力36V工具を導入できるというメリットがあります。

マキタは支店・営業所の数が多くアフターサポートが強い

マキタはサポートや修理対応が速いと評判です。その裏付けとして支店・営業所の数を比べてみるとマキタが135ヵ所に対して日立が46ヵ所(日立工機販売 営業所の一部を含む)と圧倒的にマキタのほうが営業拠点が多くサポート体制も良いと評判です。

工具が壊れた場合、購入した販売店へ修理を依頼するのが一般的ですが、マキタの場合直接営業所に持ち込むことでの修理対応も可能です。

また、マキタの工具は修理代金が安く、長期的に工具を使い続ける場合はランニングコストが非常に安くなるという特徴があります。仕事に使う道具としての非常に高いアフターサービス体制はマキタというブランドに高い付加価値を与えています。

catalog

カタログ裏に記載されているマキタ(左)と日立工機(右)の支店・販売店数。マキタのほうが圧倒的に支店・販売店が多く、そのため修理対応も早い

園芸・農業用途へも事業を広げるマキタ

最近のマキタが新事業として進めているのが充電式園芸用機器の研究開発・製品開発です。

2013年に草刈正雄主演の刈払機CMを始めてから、マキタは刈払機を初めとする園芸工具のラインナップを充実させてきました。マキタはエンジン式が主流だった園芸工具に充電式園芸工具という製品を認知させ売り上げを伸ばしてきています。現在では他社にはない特徴的な園芸工具として充電式せん定ハサミや充電式運搬車なども開発しています。

今までの園芸工具と言えばエンジン式のものが主流でしたが、エンジン工具独特の取り扱いの不便さや昨今の環境問題によるニーズを受けてエンジン工具の電動化を進めています。現在はまさに園芸工具は充電式への転換期に差し掛かってきているとも言えるのかもしれません。

マキタ以外の電動工具各社でも園芸工具の取り扱いはありますが、マキタは農機具メーカーと比較しても園芸工具のラインナップが多く、全国各地で製品実演会も積極的に行っているため充電式園芸工具のリーディングカンパニーとも言えるでしょう。

独自技術と性能に強い日立工機

日立工機は2017年1月13日に米投資ファンドKKRに売却決定となりました。日立から離れた今後の日立工機の動きに注目です


日立工機 コードレスインパクトドライバ WH18DDL2(2LYPK)(S)

日立工機は独自技術と電動工具の性能という面で強みがあります。

主流のリチウムイオン工具のラインナップ数こそマキタより少ないですが、電圧が合っていればすべての容量でのバッテリーの使いまわしが可能で、最近では14.4Vと18Vの両方に対応した電動工具も販売するようになりました。(14.4Vと18Vの両対応はパナソニックだけではなくなりました)

近年の電動工具メーカーの中で最も早く6.0Ah電池を販売するなど、性能向上に対して最も貪欲なのが日立工機です。また、来る8月23日に待望の次世代型電動工具『マルチボルト』シリーズが発表されました。今後も日立工機の高性能化は続きそうです。

日立工機 マルチボルトとは?――次世代型のコードレス工具

2017.08.27

そのほかにも、業界で初めてスライド丸のこを販売したり、他社にはないACブラシレスモータの電動工具を発売、最近ではトリプルハンマ形状のインパクトを開発するなど、技術面ではマキタを若干リードしています。

あまり認知されていない日立工機の特徴として、電池の充電速度が圧倒的に早く、すぐに作業を再開できるという点があります。(6.0Ah電池充電時間はマキタが55分、日立工機は30分)

ちなみに、日立工機のリチウムイオンバッテリーは電圧さえ合わせれば全機種共通であり、DIYモデルのバッテリーでもプロ用モデルに使うことができます。現在、日立工機はACブラシレスモーター搭載製品と6.0Ah電池でメーカー2年保証というサービスを行っておりサポートにも力を入れ始めています。

 

日立工機の代表的な電動工具。卓上スライド丸のこC7RSHC 日立独自のスライド機構(後ろにパイプが飛び出ない)に加えレーザーマーカーや鏡面板など使いやすさをと精度を両立した高性能スライド丸のこ

日立製作所から離脱した日立工機(2017年1月13日追記)

日立工機は2017年1月13日に日立製作所の資本から離れ、米投資ファンドKKR傘下になるとの発表がありました。

日立製作所は事業再編を随時進めており、その中での非中核事業である電動工具事業が対象になったと考えられます。公開買い付けに関する意識表明によると、今回の公開買い付けの理由としては下記のように記載されています。

3.本公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由

③ 当社における意思決定の過程及び理由

今後の製品のコードレス化が進む状況への対応として、KKR のノウハウやリソースを活用しながら、当社独自の回路設計等バッテリー技術に裏付けられたコードレス製品を中心とした新製品の開発・投入、当社の高い技術的優位性を顧客により認知させるための販売・マーケティング戦略の強化、進行中の構造改革の一つである海外の製造販売拠点統合による効率化M&A を中心とした非連続的成長機会の追求等、当社の製造開発、 販売・サービスの体制を変革することは、当社の企業価値の向上に資するものであるとの結論に至りました

このことから、今後、日立工機はKKRのノウハウやリソースを活用したマーケット戦略を推し進めるようです。

さて、日立工機ユーザーとして気になるのは、今後のアフターサポートや製品展開についてです。この事に関してはKKRのプレスリリース中の下記の記載内容が参考になるものと考えられます。

KKRは日立工機の役職員と一丸となり、同社の優れた技術開発力と、KKRの有するグローバルリソース・ノウハウを掛け合わせることで、中長期的な事業成長基盤の強化を目指していきます。

つまり、日立工機の経営陣は残るようなので、根本的な経営方針は変わらないものと考えられます。よって、KKRグループとなった後も現状の修理体制や2年保証、製品開発などは継承されるものと考えられます。

現状、詳細な情報は開示されておらず今後どのようになるかわかりませんが、日立工機が持つ日立ブランドの扱いや、製品展開など動きに注目です。

電動工具の性能の比較

電動工具の性能をカタログスペックで比較することは難しいのですが、工具の性能を比べた表が下になります。(できるだけ同作業環境下での資料を探しました)

一概には言えませんが、基本的な性能の部分で言うと日立工機の工具のほうがパワーがあるようです。勿論、作業環境や相手材料・作業者などによって大きく変わりますし、数値では表せないスペックも存在します(というか、電動工具メーカーが詳しい資料を開示してないので…)

インパクトドライバ

製品
日立工機 18V コードレス インパクトドライバー 充電式 レッド 蓄電池・充電器別売り WH18DDL2(NN) 本体のみ

マキタ TD170DRGX 充電式インパクトドライバ 青 18V 6.0Ah
最大トルク 177N・m 175N・m
寸法 全長127mm×高さ237mm×センタハイト29mm 長さ117 mm×幅79 mm×高さ236 mm
質量 1.5kg(BSL1860 装着時)
1.4 kg(BL1830B装着時)
備考 トリプルハンマ搭載

インパクトドライバの最新モデルを比較するとWH18DDL2のほうが締め付けトルクが高くなっています。一方、マキタのTD170Dは本体形状の小ささを謳っており2社の方向性の違いが明確になっています。

個人的には日立工機WH18DDL2のトリプルハンマを採用したインパクトドライバはかなりイイ!と思っています。特に、木ネジの締め付け時であればトルク数値以上に早く締まる気がします。現状、インパクトを購入するのであればWH18DDL2一択でしょう。(WH18DDL2から14.4V、18Vで電池が共用になったのもgoodです)

一方、TD170Dはヘッド部分がかなり小さくなっているのに十分パワーがあるという特徴があります。ヘッド部分の全長が小さいので腰から下げるタイプの工具袋にすっぽりと入れることができます。

追記:マキタの製品画像がTD147DになっていたのをTD170Dに修正しました。(2016年9月修正)

【マキタ・日立】インパクトドライバーの選び方【最新インパクト比較】

2016.09.21

 

ディスクグラインダー

製品
日立工機 18V コードレスディスクグラインダー 充電式 砥石φ100mm グリーン 蓄電池・充電器別売り G18DBVL(NN) 本体のみ

マキタ 充電式ディスクグラインダ GA508DRT
1充電あたりの作業量
コンクリートの筋付け
(切込み深さ10mm)
14.3m(G18DBVL) 約13.8m(GA408D,GA508D)
寸法 全長326mm×ギアカバー全高60mm 長さ362mm×幅140mm×高さ151mm
質量 2.2kg(バッテリー装着時)
2.4 kg(バッテリー装着時)
備考 変速あり

ディスクグラインダーについては二社ともブラシレスモータ採用機種を販売しています。

カタログスペックでは若干G18DVBLが優位となっていますが、これくらいなら誤差範囲しょう。特筆するべきところは変速機能の搭載くらいでしょうか。

 

丸のこ

製品
日立工機 18V コードレス丸のこ 充電式 刃径125mm 蓄電池・充電器別売り 本体のみ C18DBL(NN)

マキタ 充電式マルノコ アルミベース 18V 125mm 青 本体のみ HS471DZ
1充電あたりの作業量
2×10材の切断本数
240本 240本
寸法 277×168×237 長さ362mm×幅140mm×高さ151mm
質量 2.5kg(バッテリー装着時)
2.4 kg(バッテリー装着時)
備考

丸のこについてはほぼ同じスペックとなっています。マキタは全長が短いのに対し、日立工機は全幅が小さくなっています。ちなみに販売店のおっちゃん曰く、全幅が小さいC18DBLのほうがバランスが良くてのこ刃交換が楽だそうです、このへんは好みですが。

 

結局どのへんが違う?

電動工具のニーズというのは、現在の国内市場シェアの結果から言ってしまえばアフターサポートが最も重要度が高いと考えられます。そのため、営業力が強くアフターサポートも手厚いマキタの方が好まれているといえます。

工具自体の性能で言うなら製品開発が後発気味でもある日立工機の方が優位ではありますが、性能差は誤差程度なのが現状です。

日立工機を選択する基準としては、独自機能(スライド丸のこやトリプルインパクト・ACブラシレスモーターなど)が他社にない魅力的な部分になるので、それらの独自機能に価値を見出せる場合であれば日立工機を選ぶべきだと考えています。

市場での評価

電動工具市場というのは職人気質のユーザーが多く、ユーザーや販売店からの口コミによる影響が強いと聞きます。特に電動工具は壊れてしまう製品ですので、アフターサポートが手厚いマキタが好まれる傾向にあるようです。

今の電動工具は防じん・防水のIP56やAPTなどと謳われていますが、集積回路を搭載した電子回路はホコリや水・静電気・衝撃に弱いに決まっていますし、バッテリーなどもまだ防じん・防水化が進んでいないため、使い方が荒ければ簡単に故障してしまいます。実際のところ、電動工具という製品は車なんかよりも遥かに過酷な環境下で使われている工業製品の一つだと思います。

故障してしまう事は仕方ないとしても、電動工具を使って稼いでいる職人さんにとって、仕事道具が使えなくなるのは非常に困るものです。そのためサポートの強いマキタが市場で選ばれているのは当然の事と言えるでしょう。

また、大量に電動工具を揃えるプロ用途ではバッテリーの使いまわしなども多く、既に所持している電動工具や、周りの人が持っている電動工具とバッテリーを合わせるいう目的で、マキタを買いそろえてしまう方も多いようです。

マキタの方がサポートが良いと書いていますが、日立工機もサポートの強化に力を入れ始めたようで、6.0Ah電池・ACブラシレスモーター機種は2年保証になっており、最近ではWEBによる修理受付も始めたようです。(2016/09追記)

まとめ

  • 修理などのアフターサポートに強いのがマキタ
  • Li-ionコードレス工具のラインナップ数はマキタのほうが多い(マキタが150モデル日立が101モデル
  • 性能・機能などの技術面では日立工機のほうが優位
    (ただしこの性能差は僅差であるため性能差のみで日立工機を選ぶのは厳しい。トリプルハンマやACブラシレスなどの独自技術が日立工機を選択する余地になる)
  • 日立工機は電池の2年保証やWEBによる修理受付などサポートに力を入れ始めている

日立工機 マルチボルトとは?――次世代型のコードレス工具

2017.08.27