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エアダスタ(コンプレッサ)を人に向けてはいけない理由、悪ふざけでは済まない人災事故

エアダスタ(コンプレッサ)を人に向けてはいけない理由、悪ふざけでは済まない人災事故

当記事は解説画像にAI生成画像を使用しています。既存のキャラクター・イラスト等に酷似される場合はご連絡下さい。

悪ふざけでは済まない、人に圧縮空気を向ける行為

現場作業ではコンプレッサの圧縮空気を活用したエアダスターを使うシーンも少なくありません。

コンプレッサのエアダスターは銃のような形状でトリガーを引くと強力な送風が行えるのでいたずら心をくすぐり、他社に向けて吹き付けるなどで遊んでしまうことも少なくありません。しかし、エアダスターのような強力な圧縮空気を人体に向ける行為は極めて危険な行為であり、最悪のケースでは死亡事故につながる場合もあります。

具体的な事例としては、コンプレッサに繋げたエアダスターを面白半分で肛門に向けて発射し、その後に激しい腹痛を訴えて救急搬送、最終的に後遺症が残るか死亡事故にケースも少なくありません。

今回の記事では、人体に向けて圧縮空気を向けることの危険性について解説します。

なぜ圧縮空気が人体(肛門)に入ると危ないのか

コンプレッサの圧縮空気を人体、特に肛門に向けて噴射して事故が起きた場合、単なる肛門周辺のけがでは済まず腸管に穿孔が生じます。この場合、短時間のうちに全身状態が悪化し命に関わる重大な外傷になります。

腸管に穴が開くと、内部の便や細菌が腹腔内に漏れ出し強い炎症を引き起こします。細菌が血液中に入り込む敗血症を併発する可能性もあり、緊急手術までの時間が長引くほど予後は悪化し死亡リスクも高まります。1

また、大量の空気が体内に入り込むことで横隔膜が押し上げられ、呼吸困難を起こす場合があります。2そのため、感染が全身に及ぶ前の段階でも呼吸や循環に深刻な障害が生じる危険があります。

大腸穿孔で敗血症を併発した場合、死亡率は10~30%に及ぶともされており3、このような行為は命にかかわる危険な事故につながります。

コンプレッサによる実際の事故状況

人体(肛門)にエアダスターを向けたために発生する事故は定期的に発生しています。

時期場所被害状況出典
2013年6月石川県小松市激しい腹痛、検査入院NHKニュース
2017年7月京都府亀岡市直腸に複数の穴を空ける傷害産経新聞
2017年12月埼玉県杉戸町死亡産経新聞
2018年3月島根県浜田市直腸にけがサンスポ
2018年7月茨城県龍ヶ崎市死亡ハフポスト
2020年3月茨城県神栖市負傷毎日新聞
2020年11月愛知県名古屋市腸に穴が開く重傷、東海テレビ
2020年12月アメリカ死亡米国労働省
2021年10月インド死亡NATIONAL HERALD
2022年11月インド死亡THE TIMES OF INDIA
2023年5月インド死亡NDTV
2023年12月インド死亡NDTV
2024年3月インド死亡The news Minute
2025年1月インド死亡NDTV
2025年11月トルコ死亡People

このリストはニュース報道を収集したものですが、医学症例文献だと多数の症例が報告されており、実際にはニュース報道以上の事故が発生しています。

ちなみに、自己はエアダスターを人体(肛門)に密着させた場合に発生しているイメージがありますが、実際には衣服越しでノズルからある程度離れていても直腸穿孔に至るケースもあります。例えば、北米の症例では、ノズルから約25cm離れた距離で1秒以内の噴射によって直腸穿孔を起こした事例も報告されています。4

日本国内では企業による安全研修の実施やSNS上による啓蒙活動も行われたためか、2020年以降のニュースによる事故報道は確認されていませんが、この事故は世界的にも発生しており、海外でニュースになったケースにおいては極めて高い死亡率となっています。

最近はコンプレッサのニュースも減ったが充電式エアダスタも要注意

コンプレッサによる最初の事故は1904年に報告された事例が初出と言われており、それから1世紀以上経過した現代でも変わらず発生している人災とも言える事故です。5

日本国内では類似する事故のニュースは5年近く報道されていませんが、この手の労働事故は忘れたことに発生するのが世の常なので、注意喚起のために記事を執筆しています。実際、作業現場などでは「やっちゃったけど事故にはならなかった」ケースも大量に隠れており、行為としては至る所で行われているのではないかと思っています。

基本的に、圧縮空気は動力に対するエネルギー源としても使われるものです。例えば、0.7MPaの圧縮空気を1.5L/秒で消費すると考えた場合、単純な仕事率換算で約1.2kWのエネルギーを持っていることになります。ちょっとイメージしにくいのかもしれませんが、瞬間的だとしても人体に1.2kWくらいのエネルギーが加わればほとんどの場合で命に係わる状態になります。

近年は電動工具業界として、エア工具からの電動工具化を進めている背景もあるためか、圧縮エアを使う現場も少しずつですが減少しているようです。特に、汚れを吹き飛ばす用途に関しては、より手軽な充電式エアダスタの普及が進んだため、コンプレッサで使うような強力なエアダスタの使用は減ってきていると考えられます。

とは言え、充電式のエアダスタもコンプレッサ程とはいかないまでも強力な送風機能を搭載しており、最近は中国ブランドのより強力な充電式エアダスタも流通しているため、充電式だからと言ってコンプレッサと同じようなことをするのも厳禁です。

つい遊んでしまいたくなる工具であるエアダスターですが、簡単に悪ふざけが出来てしまう行為に対して命に係わる事故に発展してしまうため、絶対に行わないようにしましょう。

脚注

  1. Acute Perforation of the Gastrointestinal Tract|MSD MANUAL
  2. A Case of Pneumatic Rectal Perforation Caused by Compressed Air|NIH
  3. 大腸穿孔症例における術後リスク評価システムの有効性の検討|日本腹部救急医学会雑誌33(7)
  4. Transanal high pressure barotrauma causing colorectal injuries: a case series|NIH
  5. STONE – JULY 23, 1904
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