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3Dプリンタ運用のためにフィラメントドライヤーを購入しました
3Dプリンタの造形品質を向上するために、フィラメントを乾燥させるCreality Space Pi フィラメントドライヤーを購入しました。
フィラメントドライヤーとは、名前の通り3Dプリンタのフィラメントを乾燥させるためのツールです。
3Dプリンタを含む樹脂の成形作業は水分の影響を受けやすく、吸湿したまま成形を行ってしまうと寸法が出なくなったり表面が荒れるなどの造形品質に悪い影響が発生します。そのため、3Dプリンタの造形では造形ミスを減らす手段としてフィラメントを乾燥させておくのが有効になっています。
今回購入したCreality Space Pi フィラメントドライヤーは、3DプリンタメーカーのCreality(クリアリティー)が販売するフィラメントドライヤーです。
フィラメントドライヤーとしては比較的高い70度の熱風温度仕様を備えており、2ロールを同時に乾燥できる大容量仕様であることや、LCDパネルによるタッチ操作と温度、湿度、残時間の表示など、数あるフィラメントドライヤーの中でも高付加高価格帯なのが特徴です。
- Creality Space Pi 2ロールモデル
- Creality Space Pi 1ロールモデル
製品の特徴
「最大70度の熱風循環タイプのフィラメントドライヤー」
今回購入したCrealityのフィラメントドライヤーは、熱風が噴出してドライヤー内を循環することでフィラメントを乾燥させるのが特徴の製品となっています。
熱風は内蔵のファンによって噴き出すのでボックス内部の360度全ての面から兼ねるが行われ、フィラメントを効率的に乾燥させるとしています。ヒーターも80W PTCヒーターを内蔵しているので温度の過度な上昇による乾燥の不均一も抑えられ、均一な乾燥を実現するとアピールしています。
とは言え、下の写真のように実際に吸湿したPA12-CFフィラメントに使用してみたところ、乾燥ムラがでてしまうこともあるので、この辺りは普通のフィラメントドライヤーよりマシな程度として捉えた方が良いかもしれません。
このあたりはナイロンフィラメントの特性もあるのかもしれませんが、実際にムラなく乾燥するには定期的に位置を変えたり乾燥時間を十二分に取る必要がありそうです。
フィラメントを2本同時乾燥できる
Crealityのフィラメントドライヤーは1ロールモデルと2ロールモデルの2仕様が販売されているのですが、筆者は2ロールモデルを購入しました。
筆者の使用している3DプリンタはBambu Lab X1CにAMSを使用しており、サポートフィラメントを必要とするシーンが多いので、必然的に使用するフィラメントも造形用のフィラメントとサポート用のフィラメントで2本になってしまいます。そういう時、2本同時に乾燥できるフィラメントドライヤーは無くてはならないツールとなっています。
LCDタッチパネル搭載で状態確認と操作が簡単
Crealityのフィラメントドライヤーはこの手の製品としては珍しくLCDタッチパネルを搭載しています。
右下の電源ボタンを押すと、LCD全体が立ち上がって温度と湿度、設定温度や材質のプリセット、タイマ時間などを表示してくれます。
このタッチパネルに関しては、光度も高くて遠くから見た時の視認性も良いのですが、タッチパネルの方式が感圧式のような質感になっていて、少し強めに押さないと反応しない構造になっています。また、電源ボタンに関してはタッチパネルながら長押ししないと起動しないので、ちょっと操作性が独特な部分もあります。
ちなみに、素材ごとに温度を自動で切り替えてくれるプリセットを搭載しているので、細かいフィラメントの切り替えも結構便利です。
ACアダプタ不要のコンセント直結仕様
この手の機器で結構嬉しいポイントが、ACアダプタが無くコンセント直結の仕様となっている点です。
ACアダプタがあると配線周りがごちゃごちゃしやすく、他のACアダプタと混ざって色々と不都合も多いのですが、汎用的な2ピン仕様のコードを挿せるので背面周りもすっきりできます。
あとは実際にCreality Space Piを半年程度使った感想
このフィラメントドライヤーを購入したのは2024年7月で、このレビューを書くまでの半年間は大体フィラメントの乾燥のために動かしています。筆者はBambu Lanの3Dプリンタを使用しており、フィラメントの装填はAMS経由で行っているので本当に乾燥用途にしか使っていないのですが、この製品を使っていて気付いたことを書き連ねていきます。
先程言った通り、筆者はAMSを使っているので影響は受けていないのですが、スプールを保持するシャフトが細すぎてスプールを回す時の抵抗が大きいのではないかなと感じています。
一応、このフィラメントドライヤーはフィラメントを引き出して直接3Dプリンタに装填できるような穴もあるのですが、スプールを回す時の抵抗が大きすぎて造形に影響が出てしまうのではないかなと思っています。
ゆっくり引っ張る分には問題無いのかもしれませんが、カーボンフィラー配合の硬いフィラメントを使用する時などは折れてしまうのではないかなと心配です。
また、大きな樹脂のフタ物にはありがちではあるんですが、フタがちゃんとした位置に収まらないことが多いです。
上手く側面が上手く収まったと思っても、上側を見ると微妙に隙間が空いてしまっていることもあります。温度計や湿度計を見る限りはちゃんと乾燥できているので問題はなさそうなのですが、密閉が甘いのではないかなと気になってしまうのはちょっと印象が悪かったりします。
あとこれは使い方が悪かっただけなんですが、筆者は新品のフィラメントを開けた時に入っている乾燥材をフィラメントドライヤーの中に放り込んでいます。その時たまたま熱風が噴出される場所に乾燥材が落ちてしまい、噴出部が熱によって少し変形してしまいました。
写真はちょっと分かり難いのですが、右奥の熱風噴出部が微妙に歪んでしまっています。自然循環のフィラメントドライヤーならこういうことは起らないので、熱風が循環する方式の場合こういう点にも気を付けなければいけません。
必要な機能は十分満たしているが、細かい部分の作りが荒い印象
今回のCreality Space Piに関しては、フィラメントドライヤーそのものの性能としては悪くない製品です。
一昔前のフィラメントドライヤーは50度までの製品も多かったのですが、昨今の3Dプリンタ事情はエンジニアリングプラスチックを使うことも増えているので、70度出せるフィラメントドライヤーはほぼ必須になっています。
そういう点で考えると、フィラメントの乾燥との点に関しては全く問題ありませんし、パネルに表示される情報も他社のフィラメントドライヤーならボタン操作しなければいけないところが、本機種なら何も操作することなく必要な情報を一目で把握できるので良いポイントだと思っています。
しかしながら、フィラメントドライヤーとしては割と高価な部類の製品ながらも、細かい部分の作りが荒い部分もあるため、そういう点でちょっと残念だなと思う部分もあります。そういう意味では、良くも悪くも満足感と残念さを兼ね備えた製品と言えるのかもしれません。