フィラメントはAMSに乾燥材入りで保管していても、造形前の乾燥は必須だなと思い直した件

フィラメントはAMSに乾燥材入りで保管していても、造形前の乾燥は必須だなと思い直した件

FFF/FDM方式の3Dプリンタで最も大事なのが、フィラメントの吸湿を防止して可能な限り乾燥状態で印刷することです。筆者もそのことは十分理解していたのですが、最近購入した3DプリンタのAMSの防湿性能を少し過信して、造形品質の低下を招いてしまったので、その経緯とナイロンフィラメント造形の吸湿に関するメモです。

AMSに保管していたフィラメントの造形品質が悪化

筆者が最近購入した3Dプリンタ Bambu Lab X1Cはほとんど稼働している状態で、購入してから半年も立たずに造形時間は1,200時間も越えました。

主に使用しているのはPA-CF ナイロンフィラメントです。ナイロンは耐久性に優れ強度も高い樹脂なのですが、3Dプリンタでの造形は少し難易度が高めであり、特に吸湿性が高いのでフィラメントの防湿管理には特別気を配らなくてはいけません。

PA-CFフィラメントは吸湿すると、造形表面が荒れて白っぽくなったり、吐出が不安定になって寸法が全体的に収まらなくなる現象が発生します。具体的な問題点としては、外観性を損なったり、造形品とサポートが密着してサポート除去が困難になるなどの問題が発生します。

吸湿したPA-CFフィラメントの造形壁面。全体的に表面が荒れ気味で白くなっており、造形壁面が膨らんでサポートと接触してしまったためにサポート除去の跡が残ってしまった。

フィラメントドライヤーによっては乾燥時間でムラがでる

最近、筆者は28mmパイプと21mm厚のランバーコア合板を組み合わせた棚を製作中で、パイプを板につけるジョイントにはPA12-CFフィラメントで造形した自作のジョイントを使用しています。

フィラメント乾燥の影響が最も現れたのはこのジョイントを造形しているときでした。

本来、ナイロンフィラメントの乾燥は70℃で48時間以上が推奨値となっているのですが、10時間程度乾燥してから造形しただけでは、まだら模様が発生して外観性が悪化してしまいました。白くなっている部分は表面が少し荒れていて、手で触ると若干膨らんでいることも確認できます。

これは恐らく、造形時に吸水したフィラメントの水分が蒸発してノズル内圧力が安定しなかったために造形品質が悪化したものと想定されます。

このジョイントは1個当たり樹脂を10gくらい使っており、フィラメントの長さとしては約4m、リール巻き数では10巻き分くらいになります。まだらの模様もちょうど10回表れており、フィラメントドライヤーの乾燥ムラによって乾燥された部分と吸湿が残っていた部分で造形状態に差が出たことで、このまだら模様が現れたものと考えられます。


さらに20時間追加して30時間乾燥を行ったところ、まだら模様は少し残っていますが、手で触った時の違和感は無くなっており、寸法的な問題も無視できる程度になりました。


ここからさらに20時間乾燥を行い、計50時間の乾燥を行ったところ、ぱっと見でまだら模様が気にならない程度に改善されました。もう少し乾燥を行えば完全にまだら模様を消すことができそうです。

吸湿による寸法への影響を確認するため設計厚み2mm厚の部分をノギスで測定したところ、10時間乾燥品では2.3mmまで膨らんでいましたが、30時間乾燥品では2.16mmになり、50時間乾燥品では2.10mmまで改善されました。

乾燥材入りのAMSに入れていても造形前の乾燥は必須

ナイロンフィラメントで造形を行っていると稀にまだら模様が発生する時はあったのですが、最初は共振の影響やZ軸の潤滑不足だろうと気にしていなかったのですが、色々検証しているうちに小さい部品の造形でしか発生しないことがわかり、最終的にフィラメントの乾燥ムラにあることがわかりました。

一応、フィラメントの吸湿度が造形品質を左右されることは理解しており、超強力乾燥剤 OZOやシリカゲルをAMSの隙間に満たして、AMS湿度センサー上の表記では常に最低湿度を示す”1″表示になるように努めていました。さらにナイロン樹脂の中でも吸湿性が低いPA12を使用し、カーボンフィラーが入りなら吸湿もある程度は阻害されるので、フィラメントドライヤーで乾燥しなくても大きな問題はないだろうと思っていたのですが、実際は2週間程度のAMS保管で吸水の影響が出てしまいました。

フィラメントドライヤーは温風ファン搭載のCreality Space Pi Plusを使用しています。このフィラメントドライヤーはファンによる強制循環方式であり、乾燥時間が短いと乾燥ムラが発生する傾向があるようです。そういう意味だと、中途半端に乾燥を行うよりも時間を確保してしっかりと乾燥した方が良いのかもしれません。

海外で販売しているフィラメントドライヤーには80℃以上のものもありますが、日本で購入できるフィラメントドライヤーは温度が高くても70度なので、1度吸水したナイロンフィラメントを実造形上で問題ない程度まで乾燥するには48時間以上の乾燥時間が必要なようです。

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