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PLAやABS以外のフィラメントで3Dプリンタをもっと楽しく!
FDM方式の3Dプリンタで使われるフィラメントといえばPLAやABSが一般的ですが、この他にも様々な樹脂材料を使用したフィラメントが販売されています。
3Dプリンタブームも落ち着いた2010年代後半になってからは、木質フィラメントや金属粉配合フィラメントなど、通常の射出成型のプラスチック製品には使われない材料のフィラメントが販売されるようになりました。
特殊フィラメントの種類とは
特殊フィラメントとはPLA、ABSに分類されない樹脂フィラメントの事を指しますが、その分類は大きく分けて2つの種類に分けられます。
1つはPLAやABS樹脂ににフィラーと呼ばれる充填剤を混ぜ合わせることで、その混ぜ込んだ素材の特性を持たせたフィラメントです。
そしてもう1つがスーパーエンジニアリングプラスチックと呼ばれる、耐久性、機械的特性に優れた樹脂を使ったフィラメントです。
これらのフィラメントについて詳しく説明していきましょう。
フィラ―配合フィラメント
特殊フィラメントのなかで最も種類が多いのは、樹脂にフィラ―(充填剤)を配合したフィラメントです。
フィラ―とは、マイクロサイズやナノサイズの粉末状の材料の事で、フィラーを添加することで母材となったプラスチックに新しい特性を持たせる事が可能になります。
3Dプリンタのフィラメントでは木粉や金属粉などを配合しており、フィラーの材質と近い質感を得ることができます。成型条件は母体となったPLAやABSの特性を引き継ぐため、いままでの成形条件と同じ設定で成型できるのが特徴です。
フィラーを配合したフィラメントは、造形時にノズルが詰まりやすいという特徴があるため、少し注意が必要です。
エンジニアリングプラスチックフィラメント
ナイロンやTPUなど、機械的強度が高く耐熱性などにも優れたエンジニアリングプラスチックを使用したフィラメントがこれに当てはまります。
本来、3DプリンタはPLAやABSなどの積層造形に適した樹脂があって初めて普及したものです。それ以外の樹脂の造形は非常に難易度が高く、ノズル詰まりやベッド密着などでトラブルが起こりやすいため、フィラメントとして3Dプリンタに使われることはありませんでした。
現在では、樹脂材料の改良により3Dプリンタでも使用できるようなエンジニアリングプラスチックフィラメントも販売されています。ですが、これらは造形温度に一般的なフィラメントよりも高い温度が要求され、熱収縮性も高い材料が多いため、使用できる3Dプリンタも限られてきます。
しかし、これらの樹脂はPLAやABSの持たない摩耗性や耐熱性を有しているため、一度造形してしまえば高い耐久性を持たせることができます。
木質フィラメント
AFINIA(アフィニア) 純正スペシャルPLAフィラメント 木質 100m
特殊フィラメントの中で最も一般的なのが『木質フィラメント』です。
この木質フィラメントは木材フィラーを添加しており、3Dプリンタで造形すると木材のような質感を得ることが出来ます。また、造形時に木材フィラーが焼けるため、温度を調整することで色合いの調整も可能です。
その一方で添加されている木材は有機物であるため、フィラーが焼けてノズルが詰まりやすいとと言う話もあるようです。
金属フィラメント
BTXXYJP 20%メタル+ 80%PLA 3Dプリンタフィラメント金属PLAフィラメント1.75ミリメートルブロンズアルミニウム、アルミニウム銅Impressora 3D Filamento (Color : 100g pure copper, Size : フリー)
金属フィラメントといっても、針金を溶かして造形するわけではありません。フィラーに金属粉が配合されており、金属に近い質感を持たせることができるフィラメントです。70%~80%程の金属粉が配合されており、造形した後に研磨することで金属に近い光沢を得ることができます。
金属粉が混ざっているためフィラメント自体の重量も非常に重く、重量感のある造形を行うことが出来ます。金属フィラメントも様々な種類があり、銅色・銀色・金色など様々なバリエーションがあります。
その一方で、金属粉がノズルを削る、テーブルが移動する方式の3Dプリンタではテーブルのモーターに負荷が掛かるなどの懸念があります。
体積あたりの重量も大きいため、通常のフィラメントと同じ感覚で造形すると、陥没や脱落などを引き起こします。形状によっては空間充填率を上げたり、サポートの密度を上げる必要があります。
蓄光フィラメント
SHINA 3DプリンターフィラメントPLA ダークカラーシリーズ 1KG 1.75mmグロウ(2.2lbs)、寸法精度+/- 0.05mm、夜光グリーン(夜光緑)
フィラメントに蓄光材料を配合したのが『蓄光フィラメント』です。このフィラメントは暗い所でぼんやりと光る特性を持ちます。薄く造形してLED照明のカバーなどに用いると面白い造形品ができるかもしれません。
プラスチックとしてのベースはPLAのものが多いようで、造形も比較的簡単に行うことが出来ます。
母体となっているPLAは紫外線によって劣化する樹脂なので、蓄光するからと言って太陽光には当てないほうがいいかもしれません。
ナイロンフィラメント
FLASHFORGE フィラメント ナイロン pa 1.75mm 500g 3dプリンター用 ナチュラル
耐摩耗性に優れるエンジニアリングプラスチックの代表と言えばナイロンです。靭性・摩耗性など優れた特性を持つため樹脂歯車などに使われています。
ナイロンは熱収縮性が高く、融点の温度調整も高精度で行わなければならない樹脂材料で、3Dプリンタでの造形は非常に難しいものになります。また、ナイロンは吸湿性も高いため保管場所にも気を払わなければなりません。
ナイロンは一度造形してしまえば高い耐久性を持つ樹脂材料です。メカ部品やギヤなどの可動部品にも使用できるレベルになってくるでしょう。この辺はいつか検証したいですね。
TPUフィラメント
サインスマート 3Dプリンタ用 弾性樹脂 TPU フィラメント 0.8kg 1.75mm径 柔軟性も耐久性も優れる新型素材 ブラック
TPUとは”熱可塑性ポリウレタン”と呼ばれる軟質樹脂の事です。ゴム弾性を持つプラスチックとしてエラストマーとも呼ばれることもあります。
伸ばしたり捩じったりしても、割れや曲がりが発生しないため、3Dプリンタを使ったスマホケースの造形によく利用されているフィラメントです。
デュアルノズルのエクストルーダーを搭載した3Dプリンタであれば、通常のフィラメントと組み合わせることで、射出成型でも造形難易度の高い2層成型を3Dプリンタで簡単に実現することが出来るでしょう。
ポリカーボネートフィラメント
SHINA 高い靭性とふっくらした色の透明な 3Dプリンタフィラメント 1.75mmポリカーボネート材料 3Dフィラメントカラーブラック
最も安定性の高い熱可塑性のプラスチックがポリカーボネートです。
プラスチックの特性としては透明性・衝撃性・耐熱性・難燃性などに優秀な物性を持っています。身の回りで使用される製品としてはCDのディスクなどが有名です。
ポリカーボネートは樹脂として優秀な物性を持つが故に、造形自体が不安定と言える3Dプリンタでの造形難易度は非常に高いものになります。
ノズル温度250℃~270℃、ヒートベッド温度80℃以上と非常に高い温度を要求されるため、この設定条件を満たす3Dプリンタから探す必要があります。また、テーブルとの密着性も弱く、温度による反りも発生するので専用の密着シートの使用が推奨されています。
非常に造形難易度が高いフィラメントですが、ポリカーボネートは一度造形さえできてしまえば耐久性に優れたプラスチックになるので、実用用途では最も現実的なプラスチックと言えるでしょう。
ポリプロピレンフィラメント
武藤工業 3Dプリンターフィラメント PP(ポリプロピレン) 1.75mm 500g 樹脂 材料 1U017751
樹脂材料の中で、最も身の回りに使われているプラスチックがポリプロピレンです。PPの名称で普及しているポリプロピレンは、おもちゃやスポーツ製品、タッパーなど身の回りにあるもののほとんどがPPで成形されています。
PPはプラスチックとして優れた汎用性を持ち、吸水性が低く薬剤耐性に強いため、トレーや容器などの液体に関連する用途で良く使われます。
3Dプリンタで使えるPPフィラメントはフィラーとしてガラス繊維やカーボンが配合されているようで、それによってPPが持つ熱収縮性の問題を解決させているようです。
まだまだフィラメント自体の数は少なく一般的ではありませんが、プランターや水周りのパイプなど使用するのであれば最適なフィラメントと言えるでしょう。
PVBフィラメント
Polymaker 3Dプリンター用PVBフィラメント PolySmooth 1.75 mm (ホワイト)
Polymekerが販売するPVB樹脂を使用したフィラメントがPolySmoothです。
このPVBフィラメントは有機溶剤に溶解する樹脂材料で、アルコールを塗布して表面を溶かすことで積層跡を綺麗に消すことが出来るフィラメントです。
専用の表面処理機であるPolysherも販売されているため簡単に表面処理を行うことができます。フィギュアなど、見た目重視の造形で最適なフィラメントになります。