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マキタの充電式ファンジャケットをモバイルバッテリーで動かせるケーブルを作る

マキタの充電式ファンジャケットをモバイルバッテリーで動かせるケーブルを作る

マキタ充電式ファンジャケットをUSB PD電源で動かしたい

マキタの展示会で電動工具を購入したとき、おまけで充電式ファンジャケットを貰いました。

ファンジャケットは基本的にウェア・バッテリー・ファンがそれぞれ別売りになっていることが多く、今回もらったマキタの充電式ファンジャケットもウェア単体だけでファンとバッテリーアダプタは別売です。

マキタの充電式ファンジャケットの電源には、電動工具用バッテリを使用するバッテリホルダ A-72154か薄型バッテリのA-72126を使用します。しかし、電動工具用バッテリを使用するバッテリホルダはマキタバッテリのサイズの大きから取り回しが微妙であり、薄型バッテリは使用頻度が低く1シーズンに使用するには割高なのでいまいち購入意欲が湧きませんでした。

それでも近隣のプロショップにバッテリホルダが並んでいればバッテリホルダと18Vバッテリで運用するつもりだったのですが、店頭在庫が無く取り寄せだったので、ファンだけはマキタ純正のファンユニットセットを購入して、バッテリーはUSB PDのモバイルバッテリーを使用することにしました。

マキタ充電式ファンジャケット用のバッテリホルダ A72154
ファンジャケットへの電源供給のほかUSB端子なども備えているのだが、今時USB Type-Aがあってもあまり嬉しくないのでファンジャケット用のアダプタだとしてもいまいち食指は動かなかった。

今回の記事は、マキタ充電式ファンジャケットをUSB PDモバイルバッテリーで運用したときのメモです。

USB PDトリガケーブルと市販品のDCプラグを組み合わせる

マキタファンユニットセットに付属する接続ケーブルのプラグ形状はこんな感じです。左はファン接続側、右はバッテリ接続側です

パッと見では、左のファン接続側は極性統一 電圧区分3、右のバッテリ接続側は極性統一 電圧区分4に近い形状なのですが、細かい所の形状は微妙に異なるようで接続はできませんでした。

ファン側のDCプラグは、電子パーツショップ 秋月電子で購入した電圧区分3 MP-203が近い形状でした。

MP-203は外形と内径共に微妙にマキタ純正のプラグ形状と異なりますが、ファンユニットへの挿入はできました。

バッテリ側のプラグに関しては類似品が見つからなかったので、モバイルバッテリーの接続方法としては、USB PDトリガケーブルに電圧区分3 MP-203を2本繋げたケーブルを作って繋げることにします。

マキタファンユニットの動作確認

接続ケーブルを作る前に、ファンユニットに直流電源を接続して動作電圧範囲を確認しておきます

DCプラグは一般的にセンタープラスですが、稀にセンターマイナスの機器もあります。マキタのDCプラグ搭載製品は基本的にセンタープラスの製品しかありませんが、念のため0Vから少しずつ電圧を上げて壊れないように様子を見ます。

0.1V刻みで電圧を上げていくと、2.7Vからファンが回り始めました。

このファンユニットの最大定格電圧は10.8Vですが、手持ちのUSB PDケーブルが9Vなので9Vの消費電流を計測しておきます。

9Vで稼働させた時の消費電力は約3.5Wなので、ファン2個を接続した場合だと約7Wになります。USB PD 9V出力時時の一般的な供給電力は18~27Wなので、電力的には問題なさそうです。

ちなみに、ファンユニットの定格を超えた12Vを加えても恐らく動作すると思いますが、USB PDの12V出力はオプション出力で一部のモバイルバッテリーメーカーの製品だとPDOが無い場合もあるので注意が必要です。

PDトリガケーブルとDCジャックを繋げて完成

ここまで確認して問題無さそうだったので、DCプラグを配線してケーブルを完成させます。今回使用するUSB PDトリガケーブルには内径2.1mmのDCプラグが付いているので、DCジャックを付けて接続できるようにします。

DCプラグのハウジングを取り外してワイヤに通しておきます。

芯線に予備はんだをしたらDCプラグをはんだ付けします。

ファン側のプラグが2本分岐する箇所は圧着で接続します。ウェアのような動く製品に対して配線同士を半田付けすると割れて接触不良になりやすいと思っているので、筆者は圧着端子を好んで使用します。

圧着したら熱収縮チューブを被せて収縮します。

と言うわけでファンジャケット接続用ケーブルができたので、PDトリガケーブルを接続して動作確認します。

電源を入れたらファンが回ってジャケットが凄い勢いで膨らみました。

このファンユニットの最大定格10.8Vより低い電圧の9Vでの駆動ですが、それなりに風量は確保できているので良しとします。

USB PDモバイルバッテリーでファンジャケットを使用する時の注意点

今回、自作したUSB PDマキタファンジャケットケーブルを使用してマキタ充電式ファンジャケットを稼働しながら屋外で刈払い作業を行ってみましたが、特に問題なく使用することができました。9V駆動でファン性能は若干低下していますが、無いよりは遥かに快適な状態で作業できました。

さて、電源供給規格としてのUSB PDは、5Vから始まり、20V、28V、36V、48Vと多様な電圧に対応しており、供給電力も60Wを超える製品が多数販売されています。そのため、USB PDの仕様としてはファンジャケットを十分に駆動できるスペックを備えていると言えます。

今回の自作ファンジャケット接続ケーブルでは、このUSB PDの汎用性を活用していますが、ファンジャケットにUSB PDモバイルバッテリーを使う際にはいくつか注意点があります。

USB PD対応のモバイルバッテリーには、出力60Wや100Wを謳う製品も存在しますが、実際にはこの出力が常時維持されるわけではありません。使用中の温度上昇により、30~45W程度まで出力が下がったり、熱保護によって出力が停止してしまう製品もあります。

特にファンジャケットは、炎天下の屋外で装着する使用環境が前提となるため、熱がこもりやすい状況になります。そこに高風量・高消費電力のファンユニットを接続すると、過熱保護が働き、正常に動作しないケースも出てきます。

実際、モバイルバッテリーブランドとして有名なAnkerは、製品ページに「空調服の電源として使用しないでください」と明記しており、AUKEYやオウルテックなど一部のメーカーでも同様に、空調服での使用を非推奨としています。

Ankerのモバイルバッテリー製品ページにはご注意として「電熱ベスト、空調服などの電源として使用しないでください。」の一文が明記されている。

さらに、ファンジャケット純正のバッテリーでさえ、高出力モード時には1時間程度の使用制限を設けている製品があるほどで、このあたりはバッテリーを用いた電源製品における技術的な限界だと言えるのかもしれません。実際、モバイルバッテリーの変換効率は高い製品でも90%程度であり、1~2割は熱として失われます。つまり、どのような製品でも熱の問題は避けて通れない現実があります。

なお、今回のようにケーブルを自作しなくても、USB PDから任意電圧を取り出せるファンジャケット向けの専用ケーブルや、USB 5Vを昇圧する市販ケーブルも存在しています。ただし、モバイルバッテリー自体が炎天下での使用を前提に設計されていないため、そのような環境では正常に動作しなくなるリスクがある、という点は頭の隅に入れておいたほうがよいでしょう。

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