VOLTECHNO(ボルテクノ)

ガジェットとモノづくりのニッチな情報を伝えるメディア

2020年8月30日

テスターで電子回路の不良を探すテクニック|電子回路検証のプラクティス

テスターで電子回路の不良を探すテクニック|電子回路検証のプラクティス

電子回路が壊れた、動かないなんて時に使う測定機器と言えばテスターです。とりあえずテスターを使うということは知っていても、実際にどうやって使うのか、どうすれば悪い部分を見つけられるのかがわからない方も多いと思います

今回の記事では、テスターを使ってどうやって電子回路の悪い部分を発見するのか?と言う一例を実際の回路と共に紹介します。

現象|モーター駆動回路でモーターが動かない

この回路は、前回のArduinoの記事|Arduinoでモーターを動かす方法を解説!回路とスケッチを紹介で最初に考えた電子回路でした。

Arduinoからの信号を受け取り、トランジスタとFETでスイッチングしてモーターを駆動させるシンプルな回路です。動作的には、1段目のトランジスタをOFFにすると、行き場のなくなった電流がFETに流れ込みモーターをON状態にしてくれます。

しかし、実際にこの回路を構成したところ、モーターを動かすことはできませんでした。モーターを繋がない無負荷状態ではしっかりと5Vのスイッチングできているようですが、肝心のモーターを繋げると全く動きません。

回路図で理論的な動作を検証し、テスターで実際の動作を確認する

電子回路の検証はテスターを使う所からスタートします。測定する回路の耐圧さえ満たしていれば、ホームセンターで買える安価なテスターでも問題ありません。

テスターは電子回路検証におけるもっとも基本的な道具で、主な使い方は「回路に正しく電気が流れているか」を確認する道具です。

基本は接点不良を確認から

ブレッドボードやユニバーサルで制作した基板で一番初めに疑われるのが接触不良です。ブレッドボードではピンの接触不良、ユニバーサル基板でははんだ不良などが原因となって接触不良が発生します。

後述の電圧測定でもこの工程を兼ねることが出来ますが、接触不良と部品不良の切り分けが行いにくくなるので、前もって接点確認を行っておくのが望ましいです。

回路の接点確認では、接触不良や断線等はなさそうでした。次の工程は回路に電源を加えて回路の動作をテスターの電圧測定で確認します。

電圧測定で電子部品の故障を発見する

テスターで電圧を図る理由は「回路が正しく動作しているのか」を確認できる事にあります。

安定な状態で変化のない電子回路は定常状態と呼ばれ、電子回路各点の電圧を比較的簡単に計算することができます。この定常状態における計算上の電圧実際の電圧に相違がなければ、測定した部分は正常に動作しているものと判断することが出来ます。(例外も多いですが)

Arduino信号OFF時の計算上の回路の各点電圧
Arduino信号ON時の計算上の回路の各点電圧

計算上、Arduinoから出力される信号がOFFとONの時の回路の電圧は上の図のようになります。最終段のFET(Q2)のD端子の電圧が0Vになっていれば、そのラインの電力は全てモーターで消費されていることになります。

モーター接続時の実際の回路各点の電圧
モーター接続時の回路各点の電圧。モーターを接続するとFETのD端子の電圧が計算と合わなくなった。

実際に測定した回路の各点の電圧は上の図のようになっていました。

モーターを接続していない場合では計算と一致していますが、モーター接続時にFET(Q2)のDの電圧が降下していない事が確認できます。これはFETがON状態になっておらず、モーターを回すための十分な電流が流れていないことを表しています。

原因部位を特定したらその部分を深く確認する

電圧測定の結果、FET以外の回路は正常に動作していることから、回路が動かない原因はFETにあるようです。電子部品の破損が考えられる場合は「電子部品が壊れた」「使い方が誤っている」の2パターンが考えられます。

普段使えた電子回路が突然壊れた場合であれば、部品の経年劣化による「壊れた」パターンが当てはまりますが、今回のような新しく作った回路の場合はほとんどの場合「使い方が誤っている」のがほとんどです。

FETの使い方が誤っているのかを確認するには、部品のデータシートを確認する必要があります。

今回使用したFETは、秋月電子通商で入手できるサンケン電気のFKV575です。このFETをONさせるには6V以上の電圧を加える必要があり、5V駆動の回路では動作しない事が原因でした。

グラフ下線のVGSに注目すると、5Vの電圧ではほとんど電流がほとんど流れない事が判明した。

判明した原因を元に、新しく回路を作り直す

FETが動作しないのは電圧が足りない事が原因だったため、トランジスタの1段目の部分を12Vラインに変更しFETをより強力に駆動させることで想定通りに動作してくれるようになりました。

ちなみに、単純にモーターを動かすだけならこの回路でもいいんですが、万が一この回路構成でトランジスタがショートモードで破損すると、12VがArduinoに加わることになりマイコンが故障します。この回路を実用的に使用する場合は、「トランジスタをフォトカプラに変えて12Vラインと5Vラインを分離する」「FETを5Vラインで動くものに変更する」等の根本的な対策が必要です

原因|FETの選定と回路の構成が悪かったため

FETのVGSに電源電圧の半分も加えれば大体のFETは動くだろう、と言う考えから構成した回路でしたが、5V前後の低電圧回路においてはこの考えは完全な誤りであり、FETをONさせる電圧にまったく足りなかったことが原因でした。

対策|回路構成を変更する

この回路を動作させるには、2つの解決法がありました。1つ目が「FETを5Vで動作するものに変更する」、2つ目が「回路構成を変更してこのまま今のFETを動作させる」です。

先の記事では「どんな部品を使っても動作する」事をコンセプトに挙げているので、対策としては2つ目の「回路を変更する方法」を採用します。

変更した回路図。幸いにも電源アダプタに12V ACアダプタを使用していたため、FETの駆動を12V系にすることで部品を足すこともなく対策することができた。

原因と対策はこんな感じで簡単にまとめられますが、ここからは実際に回路の問題点を発見するまでの流れを解説していきます。

電子回路の検証には、基礎知識とノウハウが重要

電子回路の動作検証や修理には、電子回路の基礎的な知識や電子部品の動作の理解、そして経験などのノウハウが必要になります。検証方法も「この方法から始めるべきだ!」「測定機器はこれを使え!」というセオリーやガイドラインがあるわけでもなく、現象に応じた様々なアドリブが求められます。

今回の内容もほんの一例であり、他にも様々なアプローチが存在します。

実際の電子回路を修理する場合においては、回路図がない場合がほとんどです。その場合では、回路のパターンから回路図を推測したり、電子部品の配置や用途、特性から各点の電圧を推測して検証を進めます。そのためには基礎的な電子回路の知識と、実際の回路設計のノウハウや解析の知識が必要になります。

測定機器についてもこの回路自体がシンプルで、テスターだけで動作を確認することが出来ましたが、PWMの確認などになればオシロスコープ、デジタル信号の解析などになればロジックアナライザといったように検証したい内容に応じて様々な測定機器が必要になってきます。

電子回路を作る・修理するということは試行錯誤の連続です。苦労もありますが、解決して世界に一つだけのプロダクトが出来た時の達成感は何事にも代えられないものです。

Return Top