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マキタ LXT18Vバッテリの大容量化の今後と40Vmaxシリーズの競合はどうなっていくか【電動工具コラム】

マキタ LXT18Vバッテリの大容量化の今後と40Vmaxシリーズの競合はどうなっていくか【電動工具コラム】

マキタ LXT 18Vバッテリの9.0Ahと12.0Ahの登場が間近

先日、Makita Brazilがマキタ18Vシリーズの大容量バッテリ BL1890 (9.0Ah)とBL18120 (12.0Ah)を発表しました。

マキタ18Vシリーズは、現時点のマキタ主力の製品シリーズながらも2015年12月に発売した6.0AhバッテリのBL1860Bを最後に新型の18Vバッテリを発売していませんでした。

この10年程の間で、他社製品では121700セル採用による8.0Ahバッテリーや積層セルを採用するバッテリーなどが登場し、マキタも40Vmaxシリーズでは21700セルを搭載するBL4040バッテリや10S2P仕様のBL4050Fバッテリなどを展開しましたが、マキタ18Vバッテリだけは頑なに大容量のバッテリを展開しませんでした。

そのような中、今回発表されたBL1890とBL18120は、現行のBL1860Bを超える大型バッテリーで製品名の通り、18Vバッテリシリーズの9.0Ahと12.0Ahを備える大容量バッテリです。

今回の記事では、マキタが18V大容量バッテリを展開したことによるマキタ LXT 18Vシリーズの今後の動向と40Vmaxシリーズとの兼ね合いについて考察します。

18V大容量バッテリの登場でマキタLXT 18Vシリーズはどうなるか

今回、マキタは18Vの大容量バッテリを発売しましたが、筆者の推測としては、元々マキタは18Vバッテリの大容量化を行う予定は無かったと予想しています。

マキタ18Vシリーズは世界有数の製品ラインナップ数を揃えている充電式電動工具シリーズですが、その中にはバッテリーを2本使用する18V×2シリーズや防水性能を持たせたライト類などがあり、それらの製品はBL1860Bのバッテリサイズに合わせて開発されています。

マキタは、このような製品に装着できなくなる18Vバッテリの大型化を避けたい意図があったと考えています。これは10年程前の話ですが、マキタは過去に14.4V/18Vシリーズで3.0Ah世代の充電式電動工具に新開発の4.0Ahバッテリを使用できないようにしたことがあるため、その時の悪評を強く意識していたと思われます。

マキタの14.4V/18Vシリーズは3.0Ah世代(2005年頃)と4.0Ah以降の世代でバッテリの保護方式が異なっており、3.0Ah世代の製品は現行の6.0Ahバッテリなどでは動かせなくなっている。現在の製品では気にする必要はない
画像引用:14.4V、18Vの高容量バッテリが使える機械の見分け方はありますか?|マキタサイト

マキタの戦略としては、18Vシリーズの製品展開はあくまでもBL1860Bで継続することにし、バッテリーの大容量化は40Vmaxシリーズに担わせることで18Vユーザーと40Vmaxユーザーの棲み分けを狙っていたと考えられます。

マキタにとって誤算だったのは、既存18Vユーザーからの40Vmaxシリーズへの移行が想定していたほど進まなかったこと、そしてマキタ互換バッテリによる大容量化が見過ごせない存在になりつつあることが要因と想定されます。

大容量18Vバッテリを作らざるを得なくなりつつある市場環境

ここからは互換バッテリーの話に映るのですが、現在のマキタ互換バッテリーは単なる純正品のコピーに留まっておらず、独自の進化を歩みつつあります。その中でも注目されているのが、バッテリーセルの並列数を3並列にした9.0Ahバッテリーや21700セルを搭載した8.0Ahバッテリーの存在です。

この手の互換バッテリーは曲者な存在であり、「純正にはない大容量バッテリーだから仕方なく使っている」という大義名分をユーザーに与えかねない製品です。

実際、これらの大容量互換バッテリーのレビューを見てみると、「電池切れの心配がいらない」「純正バッテリーにはない大容量だから安心できる」などの投稿も散見されます。実際Amazonの販売ページには「過去1か月でxx点以上購入されました」と表示され大体毎月どれくらい売れているのか見れるのですが、この手の大容量サイズのマキタ互換バッテリーは月300台程度は売れているようです。

この販売台数で数が出ているとするかはまた別の話ですが、実際に大容量バッテリーに対するユーザーの期待は少しずつ膨らんでいる状態であり、そういう大容量バッテリーの需要をマキタ純正18Vバッテリが組めていなかったのも一つの事実ではないかと考えています。

40Vmaxシリーズへの影響はほとんど無しと予想

18Vバッテリが大容量化してしまうと、40Vmaxの大容量バッテリの利点が失われてしまうように思えてしまうのですが、筆者の想定としては、出力1kW以下の製品では18Vシリーズと40Vmaxシリーズで同じ製品の展開を行い、高出力製品では40Vmaxのみで展開を行うことになると考えています。

これは筆者の推測ですが、今回の大容量18Vバッテリは出力面での性能向上が無いバッテリーと予想しています。

他社の18Vバッテリーは18Vでも高出力を取れるよう色々な工夫を凝らしているのですが、マキタ18Vバッテリに関してはバッテリ保護の関係から高出力仕様にすることが難しいため、BL1890/BL18120は単なる大容量バッテリになると考えています。もし仮にBL1890やBL18120が高出力仕様だったならば製品名の末尾にFが付いていたでしょう。

そういう意味で、40Vmaxシリーズは小型製品から高出力大型製品までカバーするオールラウンダーな充電式シリーズとして展開され、18Vシリーズは小型製品から中型製品くらいをカバーするシリーズになると予想しています。

実際のイメージとしては、製品カタログ上でBL4040バッテリを〇として扱っている製品に関しては、大容量18Vバッテリが登場したとしても18Vシリーズ化はされないと思っています。。

40Vmaxシリーズの製品カタログには推奨バッテリが記載されている。BL4040が〇でFバッテリが◎の製品に関してはマキタ18Vでの展開は難しいと想定している。

マキタ18Vバッテリシリーズはまだまだ続く

何だかんだで色々と言いましたが、マキタ18Vバッテリの選択肢が増えることは喜ばしいことだと思っています。

実際、インパクトやドリルなどの充電式電動工具に使うことは無いでしょうが、保冷温庫や充電式ファン、ライトを長時間駆動たい需要は確実にあり、ライト層向けの18V OPE機器の稼働時間を延ばしたい要望も強かったでしょうから、マキタ純正18Vの大容量バッテリは少なからず人気が出るのではないかと考えています。

BL1890バッテリとBL18120バッテリの発売日に関しては、今回のように海外の展示会で発表された場合だと1年近い期間が空いた後に正式発売となっているので、2025年末~2026年半ばぐらいが正式発売日になると想定しています。

今後のマキタの製品開発の傾向としては、18V×2シリーズやライトのような密閉形状の製品のモデルチェンジが進むのではないかと予想しています。例えば、日本未発売のロータリレーザー SKR001Zはバッテリー装着ユニットを使うことでスライド10.8V/18V/40Vmaxの3種バッテリーに対応できる構造になっているため、投光器などのライト類などはこのような形状の製品にモデルチェンジが進むかもしれません。

18V×2シリーズに関しては、ここ最近新製品が出てなかったので18V×2シリーズの開発は終焉していた印象だったのですが、ここ最近の特許傾向だと18V×2シリーズを意識した特許出願も行われるようになり、今回のバッテリーサイズ変更に合わせた新製品やモデルチェンジも行われると考えられます。

最近のマキタは電動工具、OPE機器、清掃分野に続く次の柱となり得る製品を模索していますが、なかなか新しい柱となり得るような製品の創生に至っていない状態です。そういう意味では、マキタの開発リソースを停滞させない為にも、新バッテリーの開発とそれに伴う既存製品のモデルチェンジで場を繋ぎたい思惑もあるのかもしれません。

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