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FDM(FFF)方式の3Dプリンタの種類・構造解説

FDM(FFF)方式の3Dプリンタの種類・構造解説

FDM方式の3Dプリンタの種類や機能ついて

この記事では3Dプリンタの方式として広く採用されているFDM方式の「ホーデン方式・ヒートベッド搭載」の3Dプリンタとは異なる独自構造を持つFDM方式の3Dプリンタの種類について解説します。

付加価値的な要素の強いオートレベリングやフィラメント切れ検出等については割愛します。

ダイレクトエクストルーダ方式

ダイレクトエクストルーダ方式とは、ヘッド部にモータを搭載して直接ヒーターにフィラメントを送り込む方式です。

一般的なFDM方式の3Dプリンタが採用しているホーデン方式と異なり、フィラメントの送り出しから樹脂吐出部までの距離が短くなるため、フィラメント弾性やホースの摩擦の影響が少なくなり、樹脂吐出も安定するため軟質材料でも高精度な造形ができるようになります。

その一方で、ダイレクトエクストルーダ方式はホーデン方式の上位互換にあたる構造ではなく、ヘッド部の重量・体積増加が負荷重量となるため、同じサイズのホーデン式3Dプリンタと比較して造形エリアが小さくなったり重くなったりなど本体サイズ的なデメリットがあります。

ダイレクトエクストルーダを標準で備える家庭向けの3Dプリンタは少なく、改造キットによって対応する例が多くみられます。

良い点
  • フィラメントの吐出性が良くなる
  • 幅広いフィラメントが使用できる
悪い点
  • ヘッド部が大型化する
  • 高速造形の点では不利
  • 低価格製品では改造キット対応が多い

デュアルエクストルーダ

画像引用:Creality 3D CR-X Pro

デュアルエクストルーダとは、言葉の通りエクストルーダを2つ備える3Dプリンタです。

1回の造形で異なる樹脂を吐出できる利点はいくつかあり、色の異なる2色造形や軟質樹脂と組み合わせた2層成形品の造形、水溶性サポート材を用いた複雑な形状の造形など、3Dプリンタの特徴を最大限生かした造形を可能にします。

良い点
  • 2色造形・2層成形が可能
  • 水溶性サポート材が使用できる
悪い点
  • 本体サイズの大型化

エンクロージャー

画像引用:QIDI TECH X-Plus

エンクロージャーとは3Dプリンタを覆うカバーを指す部品です。

造形中の樹脂は吐出後に冷却して変形するので、熱収縮率の高い樹脂を使用した時の造形中の反りや層剥がれの防止になくてはならない部品です。

低価格な3Dプリンタはエンクロージャー無しでも造形できる収縮率の小さい樹脂しか使用できませんが、エンクロージャーによって温度を保てばABSやエンプラ等の造形が難しい樹脂も安定して使用できるようになります。

2021年にはヒートチャンバーに関する特許が期限切れとなったため、エンクロージャーそのものに対して余熱機能を持つエンクロージャー式の3Dプリンタの登場も期待されます。

良い点
  • 熱収縮率の高い樹脂を造形できる
悪い点
  • 大きくて分解不可能

ベルトコンベア方式

画像引用:Creality 3D CR-30

ここ数年の間で隠れた話題になっているのが、ベルトコンベア方式のベッドを備えた3Dプリンタです。

ベルトコンベアによって連続造形や1方向に対して無限の造形サイズを実現できる強みがあり、長物の修復部品の制作や小道具・舞台美術用途など、これまで以上に3Dプリンタの強みを生かせる方式になっています。

最近では1,000ドルを切るベルトコンベア式の3Dプリンタも登場し、ライトユーザーでも手を出しやすい価格になってきています。

良い点
  • 連続造形が可能
  • 1方向に対して長さの制限がない
悪い点
  • 大型化・重量化
  • スライサー方向が独自

ペレット直接溶融方式

画像引用:Slab GEM 550D

フィラメントを使用せず樹脂ペレットを直接投入できるペレット直接溶融方式の3Dプリンタです。

一般的なFDM方式の3Dプリンタと異なり、ペレットを直接使用できるので樹脂単価が安く、幅広い樹脂材料を使用できる特徴を持ちます。

この方式は産業向けのFDM 3Dプリンタで研究が進んでいる方式で、現時点で家庭向けグレードに向けた製品はほとんどありません。

良い点
  • ペレットは単価が安い
  • いろいろな樹脂を使用できる
悪い点
  • 産業向けのみ
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