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Bambu Lab X1C用にサードパーティのチャンバーヒーターを購入
3Dプリンタ造形の失敗を減らすために、3Dプリンタのエンクロージャー内の温度を一定に保つチャンバーヒーターを購入しました。

3Dプリンタのチャンバーヒーターとは、3Dプリンタを囲うエンクロージャー内の温度を一定にするための機能を担う部品です。機能的な名称としてはアクティブヒーティングチャンバーと呼ぶ場合もあります。
ABSやPAなど温度による収縮率が大きい樹脂素材を使う場合は、樹脂をノズルから射出したそばから冷却によって収縮が始まってしまい、ヘッド剥がれや積層は剥がれが起きて造形が失敗することがあります。
そこで3Dプリンタをエンクロージャーで覆って造形途中の温度低下を防ぎ、さらにヒーターで内部の温度を高い状態で維持してしまおうとするのがチャンバーヒーターです。
とは言え、エンクロージャーで囲う3Dプリンタは中位クラスの製品でもよく見かけるようになりましたが、チャンバーヒーター搭載の3Dプリンタは搭載する製品は上位モデルの製品でもほとんどありません。筆者は昨年Bambu Lab X1Cを購入しましたが、本モデルにもチャンバーヒーターは非搭載の仕様になっています。
筆者は、PA-CFやABSを造形することが多いので、極稀に発生するヒートベッド剥がれなどの現象に頭を悩ませる場合もあります。そこで、剥がれによる造形の失敗が減ることを期待してサードパーティのチャンバーヒーターを購入してみました。
チャンバーヒーターを装着&プリント

今回装着するチャンバーヒーターは、AliExpressで購入したBambu P1S/X1C/P1P/X1 用チャンバーヒーターです。
本機はAC給電で単体動作するチャンバーヒーターのため、X1Cのコントロールパネルによる温度設定や電源制御には対応していません。電源は側面のロッカースイッチで、温度調整は前面パネルのスイッチで行います。
3Dプリンタ内部にはスペースがあるので、そこにチャンバーヒーターを装着します。

3Dプリンタ内部にはこんな感じでチャンバーヒーターが収まります。固定を行うレールには初めから穴が空いており、そこにチャンバーヒーター上部のインサートナットでネジ止めできる構造になっています。

チャンバーヒーターの電源の取り方については製品本体や販売ページに解説が無いので、適当に配線を行います。今回は、3Dプリンタの主電源のロッカースイッチに連動するよう、X1Cの裏側に設置されている電源ユニットの100V端子にチャンバーヒーターを接続します。
チャンバーヒーターは付属のネジで固定します。電源を取るための配線は、樹脂カバーの隙間に端子を通せる穴が空いているのでそこに電線を通すことにしました。

X1Cの電源ユニットにアクセスするために背面パネルを外す必要があります。幸い、Bambu Labは公式wikiで手順を全て解説しているので、作業に特に困ることはありませんでした。
Replace the Rear Metal Panel – X1 Series
背面パネルを外すと、主電源スイッチや排気ファン、Poopの排出ダクトなどにアクセスできます。右下にあるメッシュになっている部分が電源ユニットなので、そこにチャンバーヒーターの電源端子を接続します。

端子カバーを外すと、各電源配線を固定している端子台が露出します。

AC電源の接続部分にチャンバーヒーターの電源端子を噛ませてネジ止めします。

接続できたら、チャンバーヒーターの電源を入れて動作することを確認します。問題がなければ端子カバーや背面パネルを分解した時と逆の手順で組み立てます。

X1Cを元通り組み立てると、チャンバーヒーターはこのような感じになります。チャンバーヒーターを使う時は、側面のロッカースイッチをONにして、温度調整は正面のSETボタンを押してプラスとマイナスボタンで温度を設定します。

と言うわけで、早速ABSで造形を行ってみました。写真は3Dプリンタで作る収納システム Multiboardの9×9 Multiboard Tilesです。

X1Cの最大サイズギリギリの250mm×250mmですが、端面が剥がれることなくしっかりヒートベッドに張り付いています。

とは言え、Multiboardの造形はチャンバーヒーターを装着する前から行っており、使用しているフィラメントABS-GFを使用しているため変形や反りは抑えられているのですが、10月に入って急に寒くなってきたこともあり、チャンバーヒーターで温度を上げておくに越したことはないと思います。
エンクロージャー3Dプリンタの積層剥がれは元々少ないが効果には期待
チャンバーヒーターを導入してみたものの、3Dプリンタでの必要性はそれほど高くありません。実際、多くの造形はPLAやPETGで行われ、これらではチャンバーヒーターは推奨されません。エクストルーダー内部でフィラメントが軟化し、詰まりの原因になる恐れがあるためです。
ABSやPAなど、高温で収縮が大きい樹脂では効果が見込めますが、エンクロージャーとヒートベッドだけでも内部温度は約40℃まで上がるため、形状や用途によってはヒーターなしでも十分に安定します。チャンバーヒーターが真価を発揮するのは、外気温が低い環境で収縮の影響を受けやすい大型造形を行う場合に限られる、というのが実感です。
筆者は1造形あたり300~500gのPA-CFを使うことが多いため、失敗すると材料費だけで約5,000円の損失になります。そのリスク低減のため、6,000円程度のチャンバーヒーターなら導入する価値はある、と判断しています。
なお、今回はサードパーティ製のため導入リスクにも留意したほうが良さそうです。X1Cはエンクロージャー加熱を前提とした設計ではなく、部品の早期劣化の可能性があるためこの辺りは考慮が必要となります。さらにAliExpressからの個人輸入品である以上、事故発生時の責任は自己負担になる点も理解した方が良いかもしれません。






