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2024年8月4日

Bambu Labの3Dプリンタ X1-Carbon Comboレビュー、600時間稼働の使用感

Bambu Labの3Dプリンタ X1-Carbon Comboレビュー、600時間稼働の使用感

話題の3Dプリンタ Bambu Lab X1-Carbon Comboを購入

約7年ぶりに新しい3Dプリンタ Bambu Lab X1-Carbon Comboを購入しました。

筆者はこれまでHICTOP 3dp-20 (Creality 初代CR-10)を長年使用していたのですが、エンクロージャーがない3Dプリンタをスタイロフォームで覆うなど無茶な使い方を続けていたためか、遂に動かなくなってしまったのでこれを機に新しいモデルへ買い替えることにしました。

新しい3Dプリンタの購入に関しては、ナイロンフィラメント造形に対応するデュアルエクストルータ搭載モデルを考えていたのですが、予算感や十分な印刷品質を持つ3Dプリンタがいまいち見つからなかったので、最近話題の3DプリンタブランドであるBambu Labの焼き入れノズル標準付属モデルのX1-Carbonを選びました。

せっかく新しい3Dプリンタを買うので、フィラメント自動交換機のAMS付属のComboモデルにしてみたのですが、これがまた自分の中で大ヒットしてAMS無しの3Dプリンタ時代には戻れないまでになっています。

そんなわけでBambu Lab X1Cを購入してから約600時間ほど造形したので、ここまでの使用感をレビューします。

最新モデルの3Dプリンタは「とにかく楽」の一言

筆者が以前使用していた3DプリンタはCreality 初代CR-10という古い3Dプリンタとの比較なので下記に述べた内容はX1Cに限った話ではないのですが、最新の3Dプリンタはとにかく運用が楽、というのが伝わればと思います。

自動キャリブレーションやベッドレベリングが便利

Bambu Labの3Dプリンタにはベッドとノズル間の隙間を自動的に補正してくれるベッドレベリング機能があります。オートベッドレベリングは3~4年前からメーカー問わず多くの機種に搭載されるようになった機能であり、今となっては3Dプリンタの標準搭載として当たり前になっているのですが、造形前の手間を減らせるのでならない機能となっています。

さらに、X1Cではフィラメント流量や共振特性などを自動で調整してくれるメンテナンス機能もあるので、造形時の手間をほとんど必要としません。

PEIプレートが造形品の取り外しが速くて簡単

最近の3Dプリンタ界隈では、PEIと呼ばれる表面特殊加工が施されたビルドプレートが普及していたようです。X1Cも標準でPEIプレートが付属しています。

筆者はこれまでガラスプレートを使った経験しかなかったのですが、実際に使ってみるとPEIプレートは定着性に優れてた使いやすいビルドプレートなのを実感できます。プレートは磁石で固定する構造になっていて、造形完了後のプレート取り外しも容易で、薄いPEIプレートは曲げながら造形品を剥がせるので造形後の樹脂片なども容易に除去できます。

AMSにシリカゲルを入れる乾燥ボックスを印刷。特別な設定や調節はしてないが手軽に綺麗な造形ができるのが魅力。

多色印刷だけじゃない、AMSのフィラメント管理が楽

Bambu Labの特徴と言えば、多数のフィラメントを自動で切り替えてくれるAMSの存在が大きいです。

AMSは造形中でもフィラメントを自動で出し入れしてくれるので、標準のAMSで4色のフィラメントの切り替えが可能で、さらにオプション装着で最大16色の多色造形が可能になります。

筆者は多色造形を使用しないので、AMSはキワモノ寄りな技術だと思っていたのですが、実際に使ってみるとフィラメントの準備や装着管理、補充の手間などから全て解放されたので、今となっては無くてはならない存在となっています。

サポートフィラメントの活用でサポートが多い造形でも綺麗に造形できる

AMSを使った造形のもう一つの利点が、サポート材用フィラメントを使った造形にも対応できる点です。上の写真は、PolySupport for PA12を接触面に使用して取り外したサポート部分です。

サポート材用フィラメントとは、3Dプリンタ造形時のサポートを剥がしやすく除去できるようにする特殊なフィラメントです。代表的なサポート材用フィラメントには水に溶けるPVAなどがあるのですが、最近は程よい定着性で造形完了後にそのまま剥がせるサポート材も普及しているようです。

Bambu Labのスライサーでは、サポートとモデルの間の接触部にのみサポート材を使う設定があるので、AMSによるフィラメントの交換回数を最小限に抑えつつ、サポート材用フィラメントを上手く使うことができるようになっています。

Bambu Studioの遠隔操作が便利

これも今となっては珍しくない機能ですが、Bambu Lab 3Dプリンタ専用のスライサー Bambu Studioはネットワーク接続機能に対応しており、クラウド経由で3Dプリンタの造形を開始できます。

筆者は造形を行っていないときは、PLAとPLAサポート、PA-CFとPAサポートの4種のフィラメントをAMSに装着しているので、外出先からでもBambu Studioのクラウド経由でコンセプト品の検証からプロトタイピング造形まで対応できます。

X1Cでは造形中のカメラを使ってPCやアプリ上で造形状態を目視で確認もできるので、何かの異常があったら遠隔で止めることもできます。

Bambu Lab X1Cで発生した造形中のトラブル

X1Cの造形で発生しただいたいのトラブルはフィラメントを原因とするAMSのせいです。このあたりのトラブルは、劣化していない適切なフィラメント運用で回避できます。

5年物のPLAフィラメントを使ったらAMS内部でバキバキになった

5年前に使用していた加水分解の進んだPLAフィラメントをAMSに装着したら、AMS内部でバキバキになって詰まってしまいました。写真はちょっと分かり難いんですが、ホース内部に白フィラメントが折れてそのままになっています。

AMS内部で折れると大体変な所に残ってしまうので、分解して折れたフィラメントを取り除かなければいけません。下の写真も分かり難いんですが、一番右のホースにうっすら白フィラメントが残っています。

AMSでのPVAフィラメントはフィラメント切り替えがうまく行かない

AMSはPVAやTPUなどの柔らかいフィラメントの仕様は非推奨となっています。

実際に使うとどうなるのかPVAフィラメントをサポート材にして造形してみたところ、フィラメント交換時においてフィラメントが柔らかいために既存のフィラメントを押し出す力が足りず、詰まりの警告が表示されてしまいました。

とは言え、AMSからの押し込みが足りないだけなので4~5回くらい根気よくリトライするといつかは押し出されて詰まりも解消できるのですが、実用上現実的ではないのでやめた方が良さそうです。

フィラメントがリールから全部抜けないと自動補給が動かない

AMSでの造形時ならフィラメントが無くなっても、同じフィラメントがAMSに装着されていれば自動的に切り替えて造形を続けてくれます。

ただし、AMSでフィラメントを切り替えるにはスプールからフィラメントが完全に抜ける必要があるので、スプールの穴にフィラメント端が引っかかって抜けないとAMSがフィラメント切れを検出できず、エラーが表示されてしまいます。

AMSにフィラメントを装着する前には、スプールの穴から見えているフィラメント端を切り落としておくのが良いかもしれません。

Creality K1とも迷ったが、Bambu Lab X1Cで大満足

新しい3Dプリンタを購入するとき、Creality K1シリーズとも迷っていたのですが、決め手はBambu Labの3Dプリンタの方が運用の点で色々と楽そうだと思ったためでした。

Crealityの3Dプリンタはコミュニティやサードパーティのアクセサリ分野も活発で、その中にはroot化やカスタムファームウェアなどもあり、非公式な部分での調整自由度が高いのも一つの特徴となっています。

とは言え、筆者は3Dプリンタの造形技術を極めたいというより、単純に造形物を必要としているタイプの3Dプリンタユーザーです。

実際、CR-10を使用していた時も色々カスタムはしていたのですが、うまく行かないことや手間やコストをかけた割に良い造形に繋がらなかったことも多かったイメージが強く、そういう意味で、色々と手を加えることで本来以上の実力を発揮できるCrealityよりも、手間をかけず手軽に実力が発揮できるBambu Labに魅力を感じました。

筆者の3Dプリンタ造形に関しては、主にPA-CFフィラメントを多用している方で、造形頻度もそこそこ多い方です。

ナイロンを使った造形の場合、造形速度を早く取れないので、高速造形3DプリンタとしてのBambu Lab X1シリーズ利点はあまり活かせないのですが、24時間以上の連続造形になることも多いので、AMSのフィラメント自動切換には本当に助けられています。常に、フィラメントの構成をPA-CF×2巻+PAサポート×1巻にして、夜間無人時にも連続稼働させています。

X1Cは高めの3DプリンタでBambu Lab公式ストアなど購入先も限られているモデルではあるのですが、3Dプリンタとしての安定性や遠隔操作機能、そしてAMSによるフィラメントの自動切り替え機能などの機能に頼るシーンも多く、今となってはX1C+AMSの組み合わせの無い時代には戻れなくなっています。

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