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2019年11月13日

電流値を測定する【逆引き回路設計】

電流値を測定する【逆引き回路設計】

電流検出にはシャント抵抗を用いる

電流を直接計測できるデバイスは少ないため、抵抗による微小な電圧降下を測定して電流値として測定換算するのが一般的な電流測定回路となります。

シャントとは”脇へそらす” “分流する”といった意味です。シャント抵抗とは本来分流させて電流計に並列に入れて測定可能な電流レンジを調節する抵抗器として使用されていました。今回使用する用途では、低い抵抗値の抵抗を使うことで回路全体への影響を避けながら、シャント抵抗の電圧降下量を測定して、オームの法則による電流値への換算を行います。

シャント抵抗は一般的な巻き線抵抗器も使用する事ができますが、一般的には電流検出用の高精度金属版チップ抵抗を使用し、抵抗値もミリオーダーの非常に低い値の抵抗器が採用されます。

非常に低い抵抗で高精度の電流検出を行うのは難しいので、シャント抵抗には電流検出専用のチップ抵抗器を用いる場合もある。
参考:電流検出用 チップ抵抗器 | ローム株式会社 – ROHM Semiconductor

シャント抵抗による電流測定回路

負荷の電流を測定する場合は、シャント抵抗(図中R SENSE)の電圧降下量をオペアンプで増幅し、マイコンなどで測定を行う事で電流値の間接的な測定を行っています。

シャント抵抗の値にもよりますが、検出される電圧レベルは非常に小さいので、十分な測定精度を確保できる量まで電圧レベルを増幅する必要があります。この回路構成におけるオペアンプのゲイン計算式は下記のようになります。

\begin{align}
OUT=\frac{RB}{RA}(V1-V2)
\end{align}

オペアンプのゲインはマイコンの電圧入力範囲と分解能、負荷の電流量などの仕様に合わせつつ実測を行いながら調整します。

この回路構成はローサイドセンシングと呼ばれ、負荷とGNDの間にシャント抵抗を設置する構成となっています。

ローサイドセンシング構成では一般的な差動オペアンプを採用する事が可能であり、端子に入力される電圧がゼロに近い利点を持ちます。欠点としては、シャント抵抗の電圧ドロップ量分だけ負荷がGNDから浮いてしまうため、他の回路との構成によっては問題となる場合があります。

設計時の注意点

この電流検出回路は広く使われる基本的な測定回路ですが、このシャント抵抗を使用して電流検出を行う回路には大きく分けて3つの注意点があります。

まず使用するオペアンプの選定ですが、電源電圧からグラウンドまでの同相入力電圧をサポートするオペアンプを選ぶ必要があります。また電流検出に使われるオペアンプにはフルスイング入力および出力のオペアンプを使用します。

2つ目の注意点としては、増幅率設定抵抗のR1およびR2の許容誤差を考慮しなければならない点です。この抵抗値の誤差はアプリケーション量産時の電流検出の誤差に直接影響を及ぼします。

3つ目は電子部品を実装する配置に関してです。シャント抵抗、ゲイン設定抵抗、オペアンプは出来るだけ近くに配置する構成にする必要があります。シャント抵抗の低電圧ドロップの検出はノイズやリンギングの影響を多く受けるため、配線を再誕西影響を最小限に収める必要があります。

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