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インサートナットの熱圧入用の専用コテ先(チップ)がある
3Dプリンタを使用していると、ネジ固定を組み込みたいシーンは多いと思います。今回紹介するのはインサートナットの熱圧入に使用するはんだごて装着用のインサートチップです。

このインサートチップは、はんだごてに装着するインサートナット熱圧入用のコテ先(チップ)です。
インサートナットの熱圧入はインサートナットを過熱すれば圧入できるので太いこて先などでも作業できるのですが、インサートナットの径とコテ先の径が合わないために圧入が曲がってしまったり、こて先に付着しているはんだがネジ山に付着してネジが効かなくなってしまったりと色々なトラブルも発生してしまいます。
そういう時にインサートナット専用のコテ先を使用すれば、インサートナットの熱圧入を綺麗に行うことができ、大量に作業する場合の効率化も図ることができます。
セラミックヒーターのはんだごてに装着
このインサートチップははんだごてに装着するコテ先です。ただし、全てのはんだごてに装着できる訳ではなく、HAKKO T18シリーズのコテ先に装着できるはんだごてを用意しなければいけません。
ちなみに、HAKKOのT18コテ先とgootのPX-60RTはコテ先構造が共通なので、国内で販売されているセラミックヒーター式のはんだごてであれば大体装着できます。
下の写真では、goot (大洋電気産業)のCXT-41にインサートチップを装着しています。

はんだ作業用のコテ先を外して、インサートチップをヒーターに差し込みます。

インサートチップを装着したら、普通のコテ先の交換と同じように保護パイプで固定します。保護パイプがしっかり固定されていないと、チップ先端を装着する時に空回りしてしまうので、少し強めに締めておきます。

最後に、圧入を行う径のインサートチップ先端部を取り付けます。この先端部が万が一固着してしまうと、インサートチップ自体が保護パイプから外れなくなってしまうので、先端部の締付は軽くでOKです。

実際にインサートナットの熱圧入を行ってみる
早速、インサートチップで熱圧入を行ってみます。
熱圧入作業にに使用するのは、海外3Dプリント界隈で人気の10インチラックに装着するRaspberry Pi用の7連マウントです。樹脂素材はABS-GFでインサートナットにはM3×6mmサイズを14個 熱圧入します。

使用するインサートナットは縦ローレットです。溝が真っすぐなので圧入は容易ですが、樹脂との接触面積が低く圧入時の巻き込みも少ないので回転トルク方向の強度としては若干低めになります。ただし、固定するのはRaspberry Pi ボード1枚だけで大きな締結トルクを必要としないので、実用的に問題は無いと想定しています。

火傷しないよう綿手を2枚被せた上で、手でインサートナットがチップの先から落ちるのを抑えながら熱圧入したい場所に位置を合わせます。

熱圧入する位置に合わせたら、はんだごてを垂直にして押し込んでいきます。インサートチップを使うと接触面積が広いためか樹脂の軟化が早いので、少し力を入れ気味でやるのがおすすめです。

と言うわけで、14個のインサートナットを圧入したのがこちらです。やはりインサートナット専用のチップを使った方が綺麗に圧入できるので見た目も美しく仕上がります。

インサートナット熱圧入の数が多い時には是非とも用意したい
今回のインサートチップは、成型後の後付けインサートナット(アウトサート)を付ける専用のニッチなものですが、インサートナットの圧入を行う方には是非ともおすすめしたい製品です。
普通のコテ先でも上手くやれば熱圧入は可能ですが、大量に熱圧入を行うとなると歪んで入ってしまったり、圧入中にコテ先がずれて成型品に傷をつけてしまったりが発生することも十分考えられるので、そういう失敗を減らすためにも用意しておいた方が良いと思います。
また、インサートナットの熱圧入を行う場合、熱したインサートナットに誤って触れて火傷してしまう場合も多いので、綿手袋の装着は必須です。2枚重ねて装着すれば火傷を防げて作業性も高められるので、できるだけ素手で作業するのは避けるようにしましょう。
インサートナットの熱圧入をはんだごてで行う場合、はんだごてを動かす量がはんだ作業よりも多いので、電源コードが無いコードレス式のはんだごてが一番活躍できる領域だと思っています。

ちなみに、記事内では中国ブランドの低価格なインサートチップセットを使用していますが、goot(大洋電気産業)製のインサートナット挿入用こて先もあります。中国製のインサートチップは少し緩いのですが、goot製の方はM3/M4サイズに合わせてフィットするように作られているので、作業性としてはgoot製の方が良いかもしれません(ただし、寸法に余裕が無いので一部使用できないインサートナットもありました。)









