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2024年1月22日

コードリールの「定格電流」と「限度電流」の違いに注意、適切に使って電気火災を防止しよう

コードリールの「定格電流」と「限度電流」の違いに注意、適切に使って電気火災を防止しよう

コードリールとは

コードリールとは、電源電線を収納する巻取り機構を有し、その巻取り機構または電線の先端部に接続部が付属する製品です。コードリールは電気用品安全法で定められた名称であり、一般呼称としては電源ドラムや電工ドラムと呼ばれる場合もあります

コードリールを使うことで、電源が遠く離れた場所にある場所でも電源を取ることが容易になり、幅広いシーンでのAC電源機器が使えるようになります。一般的には業務用として現場作業やイベント設営などに使用する製品ですが、最近は家庭用に向けたモデルもあります。

このコードリールは長い電源コードを巻き取って収納できるので、運搬や敷設に便利でなくてはならないのですが、電気火災の原因にもなりやすい注意が必要な一面もある道具です。

電源コードを束ねて使用したことによるコードの被覆や温度上昇を起因とする電気火災は全体の約3割を占めている。
画像引用:STOP!電気火災|東京消防庁

コードリールの定格電流と限度電流について

コードリールは、製品に応じて「定格電流」と「限度電流」の2種類の電流値が定められています。

具体的な違いとしては、「定格電流」はコードリールに電線を巻いたまま使用できる電流値を表しており、「限度電流」は電線を全て引き出した状態で使用できる最大電流値を示しています。

コードリールには2種類の電流値を記載している。
画像引用:再確認!コードリールの正しい使い方|東京消防庁

何故コードリールに2種類の電流値が定められているかというと、電線の被覆の許容温度が大きく影響しているためです。例えば、コードリールに使われているビニルキャブタイヤケーブル(通称:VCTケーブル)の被覆の耐熱温度は60℃までとなっています。

一般的なイメージとして電源コードは発熱しない印象もあるのですが、電気を通す全ての物は例外なく発熱するため、電源コードも使っている間は少しだけ発熱しています。

普段使っている電源コードは、電流量に対して電線が太いためほとんど発熱量が少ないのと、放熱量が大きいため電線の被覆を溶かしてしまう程の温度に達することはありません。しかし、コードリールに関しては、電動工具や大型アンプなど大電力機器の動作に長い電線を使うことが多いのでコードリール自体の抵抗値が高くなりやすく、そこにリールで電線が巻かれて収納されてしまうと放熱が妨げられて熱が籠って温度が上がってしまいます。

仮にコードリールで10Aの電流を供給している場合、電圧降下量が10Vとするとコードリールだけで100Wもの発熱が発生することになります。電線が巻かれている状態であれば、放熱が間に合わずすぐに60℃に達して被覆がドロドロに溶けてしまいます。

実際に定格電流を超えるとどうなるのか

電気機器を販売する株式会社ハタヤリミテッドでは、実際にコードを巻き付けた状態で定格電流を超えた状態にどうなるかの電線溶解実験を行っています。

実験では、定格5Aのコードリールに対して巻いたままの状態で25Aの電流を流しています。

電気を加えて1時間経過したところで電線が溶解して短絡しています。動画は実験装置なので装置の最大電流で制限されていますが、実際の電源ではブレーカが落ちたり発火する可能性があります。

この時点でうっすらと発煙しています。

電線を取り出してみると、内部の被覆は溶けてドロドロになっていました。

コードリール使用時には電線を全て出すのが推奨

コードリールは定格電流を守れば電線を巻いたままでも溶解、短絡する心配はありませんが、基本的には電線を全て出して使用するのを推奨しています。

というのも、機器の消費電力は使用する状態でも変わることが多く、電動工具などは使用シーンや作業によって想定以上の電流が発生する場合もあるので、電流値には余裕を持って使用する必要があるためです。

コードリールは巻いた状態の定格電流と限度電流は2~3倍の差があるので、「定格内の消費電流だから大丈夫だろう」と思い込んでいると負荷をかけすぎて電線を痛めてしまったり、自分の知らないうちに機器を接続されてしまう場合もあるので、定格内の使用でも可能な限り電線を引き出すようにしましょう。

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