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2024年2月2日

充電式インパクトドライバ四半世紀の進歩を振り返る、マキタインパクトはどこまで進化しているのか

充電式インパクトドライバ四半世紀の進歩を振り返る、マキタインパクトはどこまで進化しているのか

2000年5月発売 初のスライド構造バッテリーモデル TD200D

マキタが2000年5月に発売したインパクトドライバが、スライド構造採用の24Vニッケル水素バッテリー搭載インパクトドライバ TD200Dです。

このTD200Dは、当時のインパクトドライバとしては驚異的な締め付けトルク 200N・mを実現しており、羽子板ボルトのような負荷の大きい木工ねじ止め作業にも対応できました。

しかしながら、ただでさえ重たいニッケル水素バッテリーに加えて、当時のブラシモータ出力で大きな打撃力を実現するためにメカ部が大型化したために、インパクトドライバとしては大型の全長232mm、重量2.9kgになってしまいました。マキタ公式でこの製品は肩掛けストラップの装着が推奨されている程です。

スライド構造の採用により充電式電動工具でもバッテリーの大型化や高出力は実現できるようになったものの、肝心のバッテリー性能の水準が追い付いていなかったために当時の主流には成り得ませんでした。TD200Dの発売以降、200N・mクラスの充電式インパクトのコンセプトはリチウムイオンバッテリー時代までお蔵入りになります。

ちなみにこの24Vモデルは、従来の製品よりも性能を大幅に向上をコンセプトとして統一されたデザインを採用していたのが特徴です。当時はニッケル水素のバッテリーの世代ながら、丸ノコやハンマドリルなどもシリーズ化されています。

2002年9月発売 軽量小型の9.6Vモデル TD100D

TD200Dの2年後に展開したのが、小型軽量の9.6Vニッケル水素バッテリーを採用したTD100Dです。

締付けトルクは95N・mと控えめな仕様になったものの、小型バッテリーの採用によって取り回しが向上したのが特徴です。

このインパクトドライバはバッテリー込み重量1.5kg、フックとLEDライトが本体に標準搭載、スライドバッテリーによるスリムグリップも特徴としており、現在の充電式インパクトドライバの原型となった世代の製品です。

ちなみに12VモデルのTD122Dも同時期に発売しており、こちらは最大締付トルク110N・mに対応しています。

2005年2月発売 リチウムイオンバッテリー採用モデル TD130D

2005年2月に発売したのが、リチウムイオンバッテリー初対応の充電式インパクトドライバ TD130Dです。

リチウムイオンバッテリー登場以前の充電式電動工具は出力性能やバッテリー容量、何よりもメモリー効果などの要因から現場作業の主力工具としては一歩引いた位置にあり、当時のユーザーは玩具のような扱いを受けることもある製品でした。

それがリチウムイオンバッテリーの登場により、充電式電動工具はAC電源の電動工具から移行できるようになったことで、充電式電動工具は現場作業の主流になっていきます。このTD130Dの発売とマキタ14.4Vシリーズの展開を契機に、国内競合だった日立工機を押しのけてマキタが国内1位が確定したとも言える市場状態になりました。

とは言え、当時のリチウムイオンバッテリー搭載の充電式電動工具は今ほど完成度の高いものではなく、特にマキタ14.4V-3.0Ahはニッケル水素バッテリーの技術を踏襲したものに過ぎず、何度かの設計変更や保護機能の追加などが行われています。

スライドニッケル水素バッテリーの技術を踏襲する今日マキタ18Vシリーズは、今やマキタにとって欠かせない製品シリーズになったものの、古いバッテリーの充放電制御をベースにしたことがマキタ互換バッテリーや粗悪コピー品の乱立による製品事故要因の遠因にもなってしまったため、ある意味でマキタは頭を抱える状態になってしまっています。

2008年6月 初のブラシレスモータ搭載インパクト TD132D

リチウムイオンバッテリーの登場から約3年後に登場したのが、ブラシレスモータ搭載インパクト TD132Dです。

ブラシレスモータは今でこそ電動工具に広く採用されているモータですが、従来のブラシモータの電子制御とは比べ物にならないほど複雑な電子回路やソフトウェアが必要になるため、機械製造業として電動工具を作っていた従来の電動工具メーカーには開発難度の高い製品でした。

ブラシレスモータの登場によって、ブラシが不要になることでメンテナンス性が向上し、物理的な接点が無くなることでモータとしての信頼性の向上、モータ効率の向上、本体サイズの短縮化などさまざまな恩恵を受けられるようになりました。

しかしながら、当時のブラシレスモータはまだまだ発展途上でありお世辞にも信頼性が高いとは言い難い製品でした。またモータそのものの汎用性も低く、高負荷への適応は難しかったためインパクトドライバ以外への適用は数年先になります。

ちなみに、ブラスレスモータ搭載インパクトドライバは日立工機が3ヵ月ほど早く販売を行っています。その後、2010年代の充電式電動工具のブラシレス化も日立工機が先行していたものの、ブラシレス化そのものはマキタ優位の市場シェアを崩すまでには至りませんでした。

2011年2月 防滴防じんAPT搭載インパクト TD134D

2011年2月に発売したのが、マキタ独自の防滴防じん規格 APTに対応するインパクトドライバ TD134Dです。

バッテリーの性能向上によって充電式電動工具の取り回しが良くなると、今度は色々なシーンで使われるようになりその流れで防じん防水性が求められるようになりました。

これまで、AC電動工具が水にぬれると感電の危険があり、ニッケル水素時代の充電式電動工具は性能不足から限られたシーンでしか使われなかったことを考えると、性能向上や市場規模の拡大が進むと同じ製品でも求められるものも変わる事例の一つなのかもしれません。

ちなみに当時はアクセサリにもバッテリプロテクタが展開されており、防じん防水に対する意識は今以上に高いものでした。

2012年1月 防滴防じんブラシレス TD136D

2012年1月に登場したのが、防滴防じんAPTとブラシレスモータを搭載するインパクトドライバ TD136Dです。

この時期になるとブラシレスモータの開発技術も向上し、ブラシモータ以上の出力性能を実現できるようになったことでメカ部のコンパクト化も実現できるようになり、取り回しと作業性の両立が可能になりました。

さらに、電子回路部分のコーティング技術の向上とブラシレスモータの信頼性が高まったのも伴い、これ以降の充電式インパクトドライバは防じん防水構造が標準搭載となりました。

筆者の個人的な心象ですが、この時代のブラシレスモータ+防水防じん構造で充電式インパクトドライバは製品として完成し、ユーザーが必要とする基礎的な部分の進歩はここでほぼ止まったものと考えています。この先のマキタインパクトは18Vバッテリー搭載のTD170Dシリーズが主流となり、全長短縮と締付トルク増加による性能向上を追求するスペックアップの時代に進んでいきます。

2022年1月発売 40Vmaxシリーズ現行モデル TD002G

少し時代は飛んで、現在の充電式インパクトドライバの最上位モデルが40Vmax TD002Gです。

36Vバッテリーによる高電圧駆動によって最大締付トルクは220N・mを実現しており、形状の異なる2種のハンマスプリング搭載によって打撃感も向上、Bleutoothアダプタによるセッティングの書き換えなどさまざまな付加機能も搭載しています。

ハウジング外観も一般的なシボ加工に留まらず、迷彩柄シボなど意匠性も高くなり、インパクトドライバの性能だけではなく外観的な部分でもこだわりを感じる製品となっています。

TD002GとTD200Dの製品比較

スライドバッテリー初採用のTD200Dと40Vmaxシリーズ最新モデルのTD002Gを比較した表を下記に示します。

単純な比較ですが、この20年ほどの技術発展によって同じ200N・mクラスのインパクトドライバでありながらも重量は約半分、全長も半分以下になっており、インパクトドライバそのものとして約2倍の性能向上を実現しています。

製品名 TD002G TD200D
外観

最大締付トルク 220N・m 200N・m
無負荷回転数 0~3,700min-1 高速:0~2,000min-1
低速:0~1,600min-1
打撃数 0~4,600min-1 高速:0~3,000min-1
低速:0~2,500min-1
防水防じん IP56 ×
LED 4灯 ×
バッテリー 40Vmax 24V
重量 1.6kg 2.9kg
寸法 119×86×247mm 全長232mm
本体価格 28,200円(税抜) 53,300円(税抜)
販売年月 2022年1月 2000年5月

この先の充電式インパクトドライバはどのように進化するか

スライドバッテリー構造の充電式インパクトドライバを振り返りながら紹介しました。今回紹介した製品の中には、実際に購入して現場で使っていた方も多いと思います。

充電式インパクトドライバに関しては、この20年でサイズや重量、スペックが約2倍に性能向上したことから、もしかしたら次の20年でまたさらに2倍の性能向上もあり得るかもしれません。

とは言え、性能向上に関してはバッテリー性能の向上やモータ技術の発展によって実現できる余地はあるものの、サイズ感については実際の取り回しの面で限界に近いとも考えています。例えば、スライド10.8Vの小型インパクトサイズで200N・mを実現できたとしても、締結作業時の反動やフィーリングが悪化してしまうため、それはそれでまた別の改善策が必要になります。

今後の発展の方向性としては、むしろBluetoothなどの連動機能を活用した付加価値や、モータ制御を応用した新機能などの方面に進む可能性もあると予想しています。

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