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古いコンセントのプラグを付け替えて再利用する
写真は数年間電気ヒーターの延長コードとして使用していたものですが、使用しているうちに刃受け金具部分が劣化してしまったようで、発熱でプラグの樹脂部分が炭化していました。
この状態でも一応使用はできるものの、発熱やトラッキングによる発火が怖いので、延長コードの差し込み口を付け替えて再利用します。
今回の記事では、延長コードの差し込み口の交換手順を解説しています。プラグやテーブルタップ等の交換作業もほぼ同じ手順なので参考にしてみてください。
一般的に、テーブルタップの交換の目安は3~5年とされています。
※参考:安全の点検チェック|一般社団法人 日本配線システム工業会
コンセントプラグの付け替えで用意するもの
- 補修するコード
- 新しいプラグ
- 電工ペンチ
- 圧着端子(1.25-3.5M相当)
- #2プラスドライバー
延長コードの交換修理には最低限の道具として上記の工具が必要です。
今回は圧着端子を使った作業手順を解説していますが、圧着端子を使わなくても作業自体は可能です。ただしプラグの製品仕様書の作業手順では圧着端子による接続を定めているので、できる限り仕様書に準じて圧着端子を使用するようにしましょう。
圧着端子を使わずに撚り線のまま巻締め接続を行うと電線のほつれによるネジの緩みが発生しやすく、発熱や発火の恐れもあるので、撚り線を使う場合には圧着端子接続が推奨されています。
コンセントの付け替えに使う圧着端子の選び方
圧着端子はどのようなものを使っても良いわけではありません。プラグごとに圧着端子のサイズは指定されており、それに準ずる圧着端子を使用する必要があります。
とは言っても、仕様書で指定されていることが多いJSTやニチフの圧着端子はホームセンターで取り扱っていない場合もあるので、その場合は形状が類似する圧着端子で代用します。
ACプラグ WH4615の仕様書ではニチフの1.25-3.5Mを推奨していますが、今回は代用品としてオームのR1.25-4.0丸型端子を使用します。少し大きめのホームセンターであれば10個セットや100個セットで販売しています。
ちなみに圧着作業でははんだ付けの併用は厳禁です。はんだコーティングしてから圧着したり、圧着した配線に対してはんだ付けしたりすると断線や接触不良の原因になるので避けましょう。
電源ケーブルの補修に資格は必要?
今回解説する作業は電気工事士法施行令第1条で電気工事士等で定められている資格不要の「軽微な工事」に該当するため、資格を持っていなくても作業を行えます。
ただし、電気工事では無くても電気周りの工事であることには変わりはなく、危険な作業であることには変わりないので、安全確保や確認作業を十分に配慮してから作業を行いましょう。
コンセントプラグの付け替え手順解説
それでは、早速コンセントの差し込み部交換作業を始めてみましょう。
最初に、交換するプラグ部分をペンチでバッサリと切り落とします。この時反対側をコンセントが刺しっぱなしだと、切断した瞬間にショートして金属部がはじけ飛ぶので必ずコンセントを抜いているのを確認してから切り落としましょう。
プラグを切り離したら、導線の変色や錆び・断線が無いことを確認します。
問題なければコードを割いて2つに割りましょう。今回の作業では被膜を手で割けないコードを使用しているため、カッターナイフを使って割いていきます。
圧着の場合は、16~20mm程度割けばOKです。
割いたコードの被覆を剥きましょう。被覆を剥く範囲は約5~6mmです。電工ペンチにはコードの被覆を剥がすワイヤストリッパがあるので、導線の芯線径にあった場所を使って被覆を剥きます。
被覆剥き範囲は、圧着部の先端1mmほど銅線がはみ出る程度の長さに調整します。
被覆が剥けたら、1度圧着端子に導線を通して、長さが適切か確認しましょう。
長さに問題が無ければ、電工ペンチの丸型端子の圧着部に圧着端子を装着して導線を差し込みます。
電工ペンチを握って圧着部を押しつぶします。写真で使用している丸端子は圧着が固くて緩み不良が発生しやすいのでしっかりカシメます。
圧着が完了するとこのような感じになります。適切に圧着できていれば強く引っ張っても抜けないので、確実に圧着できているかを確認するため手で引っ張って圧着が外れないことを確認します。
電工ペンチは簡易的製品なので力加減が難しく、力が弱すぎると抜けてしまい強すぎると断線する場合もあるので、圧着したら引っ張りや目視で念入りに確認しましょう。
業務や産業機器用途、繰り返して圧着作業を行うような場合には、今回使用している電工ペンチではなく、JIS C 9711に準拠する工具もしくは圧着端子メーカー指定の専用工具を必ず使用してください。
もう一方も同じように圧着します。
2本とも圧着が完了したら、プラグのカバーを開けて内部の刃受け金具にネジ止めします。
インパクトドライバ等の高い締結トルクを持つ電動工具ではネジ山を破損してしまうため、手締めで作業を行います。
端子をネジ止めする時は圧着側を上向きにします。
最後にカバーで蓋をしてねじ止めすれば完了です。
作業が終わったら、念のためテスターの通電確認を行って内部で短絡していないかチェックし、ケーブルとプラグを引っ張って抜けないことを確認して作業を完了します。
タップや延長コードの発火事故は過去5年で309件
コンセントのプラグ付け替えは意外と簡単な作業です。余ったコードさえあればプラグやタップだけ買ってきて付け替えも容易なので、再利用することで新品のテーブルタップを買いなおすよりも安く再生できる場合もあります。
ただし、電工ペンチは圧着強度にバラつきが出やすい工具であるため、大量の圧着を行う場合はJIS 9711準拠の圧着工具の使用を推奨します。
さて、配線器具による発火事故は過去5年間で309件発生しており、このうち191件は火災事故にまで発展しています。
今回のようにコンセントが炭化してしまうようなケースは決して珍しい例ではありません。電気ヒーターや電動工具等の消費電力の高い機器を使っていると、条件次第で劣化が進んで簡単にトラッキング事故に発展します。
コンセント周りに関しては、普段からコンセントのホコリや異物が入らないように注意しつつ、劣化を確認したらすぐに交換・補修できるようにしておくのがおすすめです。