京セラインダストリアルツールズ株式会社(RYOBIブランド)は、2018年3月にコード脱着式のディスクグラインダーの新製品7モデルを販売した。
本製品は、電動工具業界において工具本体から電源コードの『取り付け・取り外し』が可能な製品であり、配線の手間やコード交換の修理において、作業を快適にする製品となりそうだ。
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「なぜか」コードを脱着できる製品が存在しなかった電動工具業界
これまで電動工具業界において電源コードを脱着できる電動工具というのは、ほとんど販売されておらず、ほぼ全ての工具のACコードが工具本体に直接繋がっている方式だった。
そんな中、京セラ主導の下、京セラインダストリアルツールズに組織再編された新生RYOBIブランド第1段の製品となったのが『コード脱着式』の電動工具シリーズだ。
金属加工の現場などでは、作業工程に合わせて複数台のディスクグラインダを使い分けることが多く、ドラムリールの手配やコンセントまでの配線など、電源の準備や電源コードの絡まりなどもあり作業準備に時間を要していた。
また、配線が複雑になることでつまずきや転倒など怪我のリスクも付きまとうため、現場などでは5Sを掲げて安全対策を進めている。各社電動工具メーカーではこれらの問題を解決する方法として、コードレス化を勧めているメーカーもあるが、RYOBIでは『コード脱着』によってこれらの問題を解決しようという試みだ。
コード脱着によるメリット
コード脱着化による最大のメリットは、コンセント刺しなおしの手間を減らせる点にある。
グラインダは砥石径や砥粒粗さなど作業によって複数台の稼働が必要になり、その度に必要な台数のグラインダを準備し、ドラムリールやブレーカーの確保など前準備に時間を要していた。しかし、コードを付け替えるだけでいい本製品は、必要なコードとグラインダ本体を持っていればいいため下準備は簡単なもので済む。
また、コード脱着化による安全性の向上も見逃せない。
電源コードが少なければ足元の配線も整理され、つまずきや転倒など怪我のリスクが低減される。作業現場などでは狭い足場やコードに引っかけて足を取られる場合も多いため、コードが減らすことは作業現場の安全性も高めることが出来るだろう。
まとめ コードレスとは異なるアプローチの『コード脱着式』
電動工具各社はACコード式のコードレス化を推し進め、今では様々な電動工具がコードレス化されている。しかし「リチウムイオンバッテリーでAC電源を置き換えられるか」と言う点に対しては未だ疑問が残る状態だ。
出力面ではAC100Vの限界点と言える1500Wを満たすバッテリーは開発されているものの、AC200Vの3000W出力にはまだ遠く及ばず、バッテリー容量的にも1000Wを出力すれば稼働時間も1充電当たり10分程度になってしまうのが現状だ。更に、コードレス方式が根本的に抱える最大の欠点は『重量』である。
バッテリーは1つ当たりで500g程の重さがあり、装着位置も本体後ろになるため疲労しやすい欠点が存在する。この解決は現行のリチウムイオンバッテリーでは不可能に近く、逆に業界の動向としてはパワーを確保するために重量増加となっている面もあり、解決は次の世代となる次世代二次電池の完成を待たねばならない。
そんな中、電動工具はコード直付けの定説を覆し、京セラ資本になったRYOBIによる新しい試みとしてコード脱着式によって新たな市場を開拓しようという京セラインダストリアルツールズの試みには大きな期待が寄せられる。特に断線の多いACコード工具において予備のコードさえ準備しておけば断線時すぐ作業再開できるのも現場の要望の声を汲んだ結果と言えるだろう。
マキタや日立工機と言ったコードレスで圧倒的シェアを持つ国内市場に対し、『コード脱着』と言うニッチなアイデアで攻める京セラインダストリアルツールズの今後の製品展開に期待したい。