
京セラインダストリアルツールズは2025年3月4日に、公式サイト上で新しい電動工具 リンクコントロールシリーズ(Lシリーズ)を発表しました。リンクコントロールシリーズは電源コード式の電動工具で、ブラシレスモータとコントローラを分離することで工具本体を軽量化と省エネ化を実現する電動工具シリーズです。
2025年3月時点では、コントローラLC2010/LC2040とディスクグラインダ3種、ベルトサンダーとダブルアクションサンダーを展開しています。
- 2025年3月に京セラインダストリアルツールズが展開する電源コード式電動工具
- コントローラの分離で軽量化
- アプリによる更新や稼働情報確認が可能
- バッテリー不要でランニングコストに優れる
- 一般的な電源コード式工具よりも初期コストが高い
目次
ブラシレスモータの制御回路を分離したリンクコントロールシリーズ
リンクコントロールシリーズは、工具の心臓部であるブラシレスモーターから制御回路を分離させ、この二つを専用ケーブルで繋いだ独自の新発想から生まれた電源コード式電動工具の新しいシステムです。

このリンクコントロールシリーズ最大の特徴は、昨今の電動工具で主流のモータ方式であるブラシレスモータのモータとモータ制御回路を分離している点です。
コントローラー、ケーブル、工具、の3つのユニットを分離したことで、高出力と小型軽量化の両立を実現し金属加工業における現場のニーズを応える電動工具となっています。

一般的なブラシレスモータは電動工具本体にブラシレスモータと制御回路を一体化していたため、モータを高出力化すると工具本体が大型化してしまう欠点がありましたが、リンクコントロールシリーズはモータの高出力化に伴う電動工具の大型化を制御回路の外付けユニット化によって低減しており、加えて取り回しや耐久性にも優れる構造になっています。
電動工具は金属加工現場向けの5機種をラインナップ

2025年3月のリリース時点では、金属加工現場向けの電動工具として5機種を展開しています。制御回路の外付け化によって製品の最大出力を維持しつつも他社のブラシレスモータ製品よりも軽くなっています。
ちなみに、今後もラインアップを拡充を予定しているようで、より多くの金属加工ニーズに対応するとしています。
比較例 京セラLG1000とHiKOKI G10VE2
製品名 | LG1000 | G10VE2 |
---|---|---|
外観 | ![]() |
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モータ | ブラシレスモータ | ACブラシレスモータ |
トイシ径 | 100mm | 100mm |
スイッチ | スライド | スライド |
ブレーキ | 〇 | × |
変速 | 〇 | 〇 |
200Vモデル | × | × |
回転数 | 3,000~10,000min-1 | 2,800~10,000min-1 |
消費電力 | 1,010W | 1,050W |
最大電力 | 1,600W | 1,600W |
重量 | 1.4kg | 1.8kg |
寸法 | 266×117×89mm | 309×60mm |
本体価格 | 34,300円(税別) | 30,000円(税別) |
販売年月 | 2022年8月 | 2022年8月 |
エア工具比較で電気使用量を70~90%削減
金属加工の現場で多用されているエア工具に対しては、重さと出力の優位性だけでなく、エア工具との比較の一例として電気使用量を大型エアコンプレッサーから最大で70~90%の消費電力を抑えられます。

昨今の電気料金はエネルギー価格の高騰や円安によって値上げも進んでおり、電気光熱費の低減策としても有効な製品になると考えられます。
ちなみに、構造が近い電動工具として高周波と呼ばれる3相200Vインバータを接続する電動工具もあるのですが、高周波電動工具は誘導モータの搭載で二次銅損が発生する関係上、ブラシレスモータよりも効率が落ちてしまう欠点があります。
専用アプリでエラーの状況や対処法が分かる

リンクコントロールシリーズは専用アプリの接続にも対応しており、スマホアプリの接続によって制御ソフトの更新や工具の状況、不具合発生時の対処方法も確認できる機能を備えています。
所感としては好印象、工場のエア工具入れ替え候補として有力
今回の京セラ京セラ リンクコントロールシリーズに関しては、少しイロモノの印象も抱いてしまうのですが、製品のコンセプトとして決して悪いものではなく、比較的良い印象を抱いています。
最近の電動工具市場には色々とトレンドがあるのですが、その一つは工場現場におけるエア工具から充電式電動工具への置き換えです。リチウムイオンバッテリーの高性能化やモータの性能向上によって充電式化に置き換えるのも1つの選択ではあるのですが、コンプレッサーの電気代を抜きにしてもバッテリーの高さと電動工具本体の重量化はデメリットとして大きすぎるものだったので、今回のリンクコントロールシリーズは一つの解決策になるのではないかと考えています。
拡販先も金属加工工場をメインとする商材のようで、京セラ機械工具事業の切削工具事業との営業的なシナジーもある程度見込めるのではないかと見ています。
Bluetoothアプリに関しては現時点でアプリ紹介や使い方の解説が無いので詳細は不明ですが、アップデートや稼働情報の確認ができるのは業務向けの製品として良い機能ではないかなと思っています。と言うよりも、制御回路だけで追加コストが数万円必要になってしまうので、それくらいの付加機能はある意味で必須だと思っています。
製品的な競合としてはHiKOKIのACブラシレスモータシリーズのディスクグラインダと想定しています。カタログスペック的には同等なのですが、別売コントローラが高価な京セラ LG1000か、制御回路によって長さと重量があるHiKOKI G10VE2か少し悩ましい所です。この辺りは、実際の取り回しや耐久性なども関わってくるため一概には決定できないかもしれません。
また同社の着脱ケーブルシリーズとも競合してしまう可能性もあるのですが、基本的にはAC電源コード式の電動工具なので充電式電動工具ほどプラットフォームの縛りは少なく、ユーザー選択の範疇に収まるのではないかと考えています。
エア工具からの移行を考える場合、エア工具はコンプレッサで組み上げたエアをタンクに貯めてバッファとして働くので、一時的な高負荷状態になっても耐えられる利点がありますが、AC電源だとブレーカーの電源容量に依存する形となり、電源設備の容量によってはエア工具からそのまま置き換えとはいかない場合もある点に注意が必要です。
この辺りは、電源コード式全般の電動工具に言えてしまうもので、今回のリンクコントロールシリーズに限った話でないのですが、この辺りの運用的な部分は設備導入において考えなければならない点だと考えています。