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XTAR PB2SL V2 充電器をレビュー、モバイルバッテリーとしても使えるリチウムイオン充電器

XTAR PB2SL V2 充電器をレビュー、モバイルバッテリーとしても使えるリチウムイオン充電器

本記事は、レビュー用サンプル品の提供を受けて構成しております。

XTAR リチウムイオンバッテリーUSB充電器 PB2SL V2

今回は、中国深セン市の充電器/リチウムイオンバッテリーブランド XTARのUSB充電器 PB2SL V2をレビューします。

PB2SL V2は、同社が販売するUSB対応リチウムイオンバッテリー充電器の最新モデルです。

USB電源でリチウムイオンバッテリーセルを充電する機能に加えて、USBの出力機能を備えたモデルです。リチウムイオンセル充電器ながらもモバイルバッテリーとしても使用できます。

新型のV2モデルになったことでUSB出力の急速充電プロトコルの対応数が増え、新たにUSB PD PPSにも対応しています。

製品仕様

製品名 PB2SL V2
外観
対応リチウムイオンセル 18650/18700/20700/21700
最大切断径 Φ18mm
ストローク径 2,000min-1
カット数 4,000min-1
バッテリー 18V
重量 2.4kg
寸法 676×176×164mm
本体価格 25,500円(税別)
販売年月 2022年06月

リチウムイオンバッテリーセルを充電できるモバイルバッテリー

PB2SL V2は、モバイルバッテリーにもなるUSBリチウムイオンバッテリー充電器です。

この製品は、リチウムイオンバッテリーセルを充電できる充電器でありながら、USB電源の入出力端子を備えており、モバイルバッテリーのようにスマホやタブレットなどUSB機器への充電が可能な機能も備えています。

製品上側には、放電端子のUSB-A端子と充電・放電の機能を備えるUSB Type-Cコネクタを備えています。

PB2SL V2の側面は磁石で固定できる蓋になっており、フタを取り外すとリチウムイオンバッテリーをセットできるようになっています。

端子部分は摺動するメタル電極にになっていて、リチウムイオンバッテリーセルを装着すると、押し付けるようにして固定されます。

実際にリチウムイオンバッテリセルを装着するとこんな感じになります。写真はPanasonicの18650GAを装着しています。

円筒型リチウムイオンバッテリーの一般的なサイズは18650ですが、近年普及が進んでいる大容量サイズの21700セルの装着にも対応しています。

フタには強力な磁石が埋め込まれており、簡単に取り外し・固定ができます。蓋の真ん中には電池を押さえつけるノブがあり、18650装着時には横、21700装着時には縦にします。

USB充電器の接続でリチウムイオンバッテリーを充電

USB充電器に接続すると、装着したリチウムイオンバッテリーセルを充電できます。

USB PD充電器から見た時の充電波形は下記のグラフのような感じになりました。いくつかの手持ちのリチウムイオンセルを装着して、充電時の電流波形を観察しています。

Panasonic 18650GA×2本 (25.2Wh)

Samsung 30Q×2本 (21.6Wh)

LG Chem M52V×2本 (36.9Wh)

ざっくりとした感覚ですが、USB PD充電器を使用して9Vネゴシエーションが行われた場合、大体10Whあたり1時間くらいの充電時間が必要になります。

ちなみに、USB PD充電器を接続しても最初の5分くらいはプレチャージの挙動となるらしく、5Vからの充電となるようです。

モバイルバッテリーとしても使用できる

スマートフォンなどのUSB端子を備えたモバイルデバイスなどをCtoCケーブルで接続すれば、モバイルバッテリーとしても使用できます。

筆者が使用しているiPhone 15 Proを装着してみると、USB PDの9Vネゴシエーションで18Wが給電されました。

USB PDテスターを接続して、PB2SL V2の最大給電能力である18W(12V-1.5A)で放電終止状態まで放電したグラフが下記の図のようになります。

Panasonic 18650GA×2本 (25.2Wh)

Samsung 30Q×2本 (21.6Wh)

LG Chem M52V×2本 (36.9Wh)

放電効率は概ね85%くらいでしょうか。30Qの測定に関しては放電効率76%とかなり落ちてしまっているのですが、5年前に偶然秋葉原で見つけた出自不明の30Qだったので、セルそのものの劣化で損失が大きくなっていると想定しています。

一応、USB PD 18Wで温度保護も発送せず完走できました、ただし、18W出力であっても放電による発熱は結構大きかったので、バッグなどに入れて使うのは少し気にした方が良いかもしれません。

また、放電終了間際の電圧降下量が要求12Vに対して10Vまで降下しているのが少し気になるところです。USB-IFが定めるところでは、Fixed PDOの電圧に対して電圧許容範囲は±5%と定義されているため、この電圧降下の挙動はPDとしては不適合になります。

ただし、5V動作ではこの電圧降下は発生せず、9V動作は電圧降下量が抑えられると考えられるため、実際のUSB機器の接続には影響はないと考えています。12V動作は電圧降下によって不適合ではあるものの、12V動作はPDだとオプションの扱いであり、実際に12Vだけを要求する情報機器は多くないため、実用上、ほとんど影響しないと考えられます。

入出力状態と残量表示が分かるインジケータを搭載

PB2SL V2は側面にインジケータボタンを搭載しています。

ボタンを押すと、バッテリー残量、入出力状態、入出力電圧、入出力電流の情報が表示されます。

ちなみに、バッテリー残量表示に関してはリチウムイオンセルを交換できる構造の製品であるため精度は高くないと思っていたのですが、1%単位でしっかり表示して急に増減する挙動もありませんでした。もしかしたら内部にクーロンカウンタが入っている仕様なのかもしれません。

放電時のプロトコルを確認

PB2SL V2では、USB出力時の多彩な急速給電プロトコルに対応するようになりました。下の写真はUSB Type-C接続時の急速充電プロトコル確認です。

そして、こちらがUSB-Aの急速充電プロトコルの確認です。

こうして見てみると、OPPO系統のVOOC以外の急速充電プロトコルを網羅したちょっと珍しいモバイルバッテリーです。実際、Type-CのUSB PDに一本化されているためUSB-Aの急速充電は消えつつあるのですが、少し古めのスマホを使用している方は重宝するかもしれません。

また、下の写真は実際にUSB-AでQC3.0の出力動作を試しているところです。USB-Aの急速給電はうまく動作しないことも多いのですが、本機はちゃんと5Vを超える電圧が確認できました。

容量が異なるバッテリーセルの装着にも対応

充電率やバッテリー容量が異なるリチウムイオンセルの装着にも対応しています。

PB2SL V2はスマートエネルギーバランスと呼ばれる機能を搭載しており、バッテリーセルの状態が異なっていても安全に充放電を実現しています。

写真は充電率30%のM52Vと充電率100%の18650GAを装着してみたところです。だいたい中間となる63%と表示されました。このことからセルの電圧を測定して、残量を割り出しているようです。

サイズ対応外のリチウムイオンセルを付けてみる

対応セルは18650/18700/20700/21700の4種類ですが、ほかの円筒型リチウムイオンセルも装着してみます。

これは14650セルです。通電はできますが細いセルなので持ち歩くには少し不安定です。スペーサーなどを付けて18650サイズにすればよいかもしれません。

こちらは18500セルです。全長が短いので端子に届きません。これも長くするスペーサーを付ければ使用はできそうです。

ちなみに、PB2SL V2にはブラケットが付属していますが、フラットトップのリチウムイオンセルの場合は21700であってもブラケット装着推奨です。

上の写真の21700セルはサイズ的にはぴったりなのですが、+面がフラットトップのため接触しておらず動作しない状態になっています。

ブラケットを付けて21700セルを装着すると、ピッタリすぎてギチギチになりますが、持ち運びには一番いい感じになります。

基本的に、ブラケットは保護回路付きの21700セルを使う時に取り外すもので、それ以外のサイズの時は常時ブラケットを付けた方が良さそうです。

上級者向けのデバイスだが、活用できる可能性は無限大

XTARは手軽に使えるUSB充電のリチウムイオンバッテリーセル充電器を販売しており、今回のPB2SL V2は手軽さの極致のような製品だと思っています。

USB充電で動いてしかもカバーが付いて持ち運びしやすい充電器なので、屋外で急に充電したくなったときや車の車載充電器とする使い方にも良さそうな製品です。リチウムイオンセルをそのまま装着する製品は、電子タバコやフラッシュライトなど屋外に持ち運ぶ製品なので用途的にも親和性は高いと思います。

モバイルバッテリーとしては昨今の市場だと18Wは若干貧弱にも見えてしまいますが、スマートフォンへの充電用途であれば十分とも考えられます。このあたりは、接触端子の構造や不特定多数のリチウムイオンセルを装着できる製品であるため、セルの過電流を防ぐために実用上18Wが限界だと思っています。

あとは、非常に治安の悪いリチウムイオンバッテリーの使い方になりますが、製品やバッテリーパックからリチウムイオンセルを取り出して、生きてるセルだけモバイルバッテリーとして再利用する方法としても活用できそうです。

製品としての安全性に関しては、装着したセルの電圧を個別に監視する方式になっているため電気的には安全性が保たれていると考えられます。ただし、製品コンセプト的に温度や衝撃に関してはカバーできない製品であるため、モバイルバッテリーとして持ち運ぶ場合には注意も必要です。

特に、マグネット固定の蓋はセルを交換するには便利な構造ですが、モバイルバッテリーとして持ち歩いた際には不意の衝撃で蓋が外れてセルも飛び出してしまう可能性もあります。外に持ち運ぶ場合には、マジックテープなどで固定してフタが外れないようにした方が良いかもしれません。

わかる人が適切に管理できる分には便利な製品ですが、リチウムイオンバッテリーの生セルを剥きだしで使える製品でもあるため危険性も高い製品です。基本的には保護回路搭載のリチウムイオンバッテリーを使うようにして、生セルで運用する場合には十分注意して使った方がよさそうです。

ちなみに、本製品はリチウムイオンバッテリー充電器のためバッテリーは付属していないので注意が必要です。モバイルバッテリーとして使うにはリチウムイオンバッテリーセルを持っている事が前提の製品なので注意してください。

まとめ

XTAR リチウムイオンバッテリーUSB充電器 PB2SL V2

VOLTECHNO製品評価 4 out of 5 stars (4 / 5)

持ち運びが容易なリチウムイオンバッテリーUSB充電器、モバイルバッテリーとしても使える

良い点
  • モバイルバッテリー機能を搭載
  • 多彩な円筒型リチウムイオンセルに対応
  • 多彩なUSB急速給電に対応
  • 仕様が異なるセルの装着に対応
  • インジケータで動作状態が分かりやすい
悪い点
  • フタが磁石固定式で外れやすい
  • PD18W仕様で入出力性能が若干低め
  • 電池は別売

XTAR 保護回路搭載リチウムイオン電池

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