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CCCVとはリチウムイオンバッテリーで使う充電制御方式
リチウムイオンバッテリーは一般的に電圧と電流を制御する定電流・定電圧充電方式で充電制御を行います。この方式は略称としてCCCV(Constant Current, Constant Voltage)と呼びます。
CCCV充電とは、初めに一定の電流 (CC:Constant Current)で充電を行い、電池電圧が指定の値に到達したら一定の電圧(CV:Constant Voltage)に制御を切り替えて充電を続け、過電圧充電状態を避けつつ満充電まで充電を行う方式です。
リチウムイオンバッテリーは、充電電流・最大電圧がデータシート上で厳しく指定されているため、CC充電やCV充電だけではリチウムイオンを安全な形で完璧に充電することはできません。そこで電流・電圧の適切な制御によってリチウムイオンバッテリーの性能を最大限生かすCCCV充電方式が広く採用されています。
とは言っても、バッテリーの充電電流に関しては電圧ほど厳密な管理が求められておらず、僅かにバッテリー仕様を超えた充電電流を加えたとしても短時間に限れば致命的な発火・事故に至る例はあまりありません(もちろんダメージはあるので安全領域を超える使い方は一般的にも推奨されません)。しかし電圧に関しては例え0.1Vであっても電圧を超過してしまえば発火する危険性を孕むため、10mVクラスの厳密な電圧監視が必要です。
ちなみにバッテリーの充電方式としてのCCCVは、リチウムイオンバッテリー以外の鉛蓄電池等の2次電池にも採用する場合があります。
CCCV充電の挙動について
CCCV充電時の実際の挙動を表す図として以下のようなグラフが良く使われます。
この図は、充電時にバッテリーに加えている電圧値と電流値の時間変化を表すグラフです。下軸は時間経過を表し、左から右に進むにつれてバッテリーの電圧が上がり、充電電流が下がっている様子を示しています。
一般的なCCCVの条件設定としては、最低限のパラメータとしてCC・CV・終止電流の3つを定める必要があります。基本的にはリチウムイオンバッテリーのデータシートを参照して、製品仕様を超えない範囲で充電条件を設定します。
パラメータ | 解説 |
---|---|
CC | 充電スピードに影響する。この値を大きくすれば充電速度は速くなるが、大きく取りすぎると金属析出を誘発し電池発火する原因になる。一般的には1C以下の充電レートを遵守し、それ以上の充電レートを加える場合においては急速充電対応のバッテリーセルを用いてデータシートの指示(冷却条件等)を厳守する。 |
CV | 一般的にデータシート記載の数値を使用し変更することは無い。 |
終止電流 | CC制御領域で充電完了とする電流値。この値を小さくするほど公称容量に近づくが、充電時間も長くなる。 |
もちろんリチウムイオンバッテリー充電回路に常識的に搭載すべき保護機能として、温度や多セル構成時のセル電圧監視も忘れてはいけません。
CCCV充電の注意点は2つあり「満充電状態に近づくにつれ充電スピードが遅くなる」「充電器の最大負荷はCCからCVに切り替わる前後」に注意しなければいけません。
CCCVは途中でCV制御に切り替わる関係上、CV制御時の充電電流値は時間と共に減少します。満充電に近づくにつれ充電電流は小さくなるため、完全な満充電に近づければ近づけようとするほど終止電流を小さく設定し長い充電時間を設定しなければいけません。
充電スピードを謳う最近の電動工具用充電器では、CCからCVに切り替わるタイミングの7~8割の充電状態で「実用充電完了」と割り切るパターンも見受けられます。
もう1つは電源回路についてです。
何となくなイメージとして「バッテリーが空の状態が一番電気が入りそうだから充電開始直後が最大負荷だろう」と思い込んでしまう方も稀にいるのですが、バッテリーのCC充電は充電進行と共に電圧も上昇するため、最大負荷は電流・電圧共にピークとなるCCからCVに切り替わるタイミングです。電源設計や評価時には注意しましょう。
条件によってはプレ充電領域も必要
ちなみに実際のリチウムイオンバッテリー充電器では、深放電や寒冷地充電の対応として、本格的なCC充電前に微弱電流による予備充電領域を設け、バッテリーの状態を確認する制御を追加する場合もあります。
CCCV充電まとめ
- 初めはCC(定電流)方式で充電を行い、指定した電圧値へ到達したらCV(定電圧)方式に切り替えて充電を行う方法。
- リチウムイオンバッテリーを満充電できる方式だが、定電圧制御領域においては高精度な電圧検出・電圧制御回路が必要。