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冷却ができる電子部品「ペルチェ素子」の使い方

冷却ができる電子部品「ペルチェ素子」の使い方

電子工作では発熱する部品は数多くありますが、その逆の冷やすことのできる電子部品は多くありません。今回紹介するのは冷却を可能とする電子部品「ペルチェ素子」です。

冷却できる電子部品「ペルチェ素子」


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電子工作を行う方でも「ペルチェ素子」について詳しくない方も多いかもしれません。ペルチェ素子は「ペルティエ素子」や「サーモモジュール」と呼ばれる電子部品で、圧縮機や化学反応を用いることなく電気の力で直接温度差を発生させる電子部品の総称です。

冷却と聞くと「ファンで風を当てて冷やせばいいじゃない」と考えますが、室温以上から室温までの放熱であればヒートシンクとファンの組み合わせで効率的に熱を逃がすことができます。しかし、室温より低い温度で冷却する事は容易ではありません。

冷蔵庫やクーラーなどは、圧縮機などを使って断熱圧縮と断熱膨張を使って熱交換を行うことで室温以下に冷却を行っています。しかしこれは非常に大きなモーターや圧縮機などがが必要になるため、小型の冷却システムにするのには適していません。

ペルチェ素子は、熱交換を行わずに直接電気の力だけで室温以下へ冷却できる電子部品なので、機械部品や大掛かりな大掛かりな設備などを必要としないのが特徴です。

ペルチェ素子は手軽に使えるのが魅力だが、欠点も多い

ペルチェ素子は板状の電子部品で、電気を流して動作させると片面が吸熱を行い冷却され残りの片面は吸熱した熱と共に発熱を行う部品として動作します。この吸熱と放熱をうまく使うことによって、冷却できる製品を制作する事が可能です。

冷却時の振動はなく、フロンなどの触媒もしないため小さいシステムでも冷却構造を組み込むことが可能です。

ペルチェ素子は単体の部品で室温以下まで冷却を行える電子部品ですが、コンプレッサーなどを使うヒートポンプと同じような熱交換性能を持つわけではなく、効率の悪さを理由としていくつかの明確な欠点が存在します。

コンパクトで軽量、単体で動くシンプルさ

ペルチェ素子は冷却可能な部品としては、機械部品や化学反応を使ったものと比べても非常に小さく、軽量な部品です。

電気を流すだけで冷却させることが可能なので、機械的な付属部品も少なく、回路的にもシンプルな構成を実現する事ができます。

この特徴を活用した製品では、防湿庫やポータブル冷温庫など小型製品に使用されています。

ペルチェ素子は非常に軽くて小さい。このサイズのペルチェ素子でも40Wの最大吸熱量がある。

制御も簡単、直流電源で動作が可能

ペルチェ素子の動作には複雑な回路を必要としません。ペルチェ素子は直流電圧を加えるだけで動作するため、駆動回路もシンプルな回路構成にする事ができます。

出力量の調整も電圧の変更を行う事で簡単に調整する事が可能です。

ペルチェ素子には極性が無く、印加する極性を入れ替えれば吸熱と発熱を入れ替える事ができる。

極性を変えるだけで冷却から発熱へ切り替えできる

ペルチェ素子には極性がありません。電源端子のプラスとマイナスを入れ替えるだけで吸熱面と放熱面が入れ替わるので、冷却させるだけではなく、発熱する電子部品としても使用する事が可能です。

ただし、ペルチェ素子の耐熱温度は約150℃と高くはないため、発熱させすぎると故障の原因となります。

冷却効率が悪く大規模な冷却システムには向かない

ペルチェ素子がヒートポンプの代わりとならない理由は効率の悪さです。

ペルチェ素子による吸熱はヒートポンプを使った熱交換よりも圧倒的に悪く、ペルチェ素子で大きなシステムを構成する程効率の悪さが大きくなり、ペルチェ素子の他のメリットを全て潰してしまいます。

ペルチェ素子を使った冷却システムはクーラーボックス大の大きさが現実的であり、それ以上はコンプレッサーを使ったヒートポンプの方が効率的となります。

ペルチェ素子は割れやすいので取り扱いに注意

ペルチェ素子はセラミック基板をベースにした割れやすい材質でできています。ヒートシンクなどの放熱板に組み込む場合は衝撃やネジ締め時の偏りなどで破損させないように注意が必要です。

割れた時の故障モードは短絡状態となる事もあるため、ペルチェ素子の取扱には最善の注意を払います。

ペルチェ素子を動作させるのに必要なもの

ペルチェ素子を使用するために必要なものは下記の3点です。

  • ペルチェ素子
  • 安定化電源(電源回路)
  • 放熱器(ヒートシンク・ファン等)

ペルチェ素子は単体のまま電圧を加えるだけでも冷却させることが可能ですが、実用的な冷却能力を得るには適切なサイズの放熱器を必要とします。

放熱量に応じて要求される電流も大きくなるので、出力電流の高い安定化電源や電源回路が必要になります。

クーラーボックスサイズの冷却を行う場合には能力の高いペルチェ素子を使用しなければならないため、12V, 5A以上のACアダプタや包絡体積の大きいヒートシンクなどが必要になります。

ペルチェ素子の吸熱量

ペルチェ素子の放熱量は下記の計算式で表すことができます。

この計算方式は理論的な最大発熱量を表す式ですが、注目するべきはペルチェが吸熱する熱量の他、消費電力も含んだ状態で発熱量Qとなっている点です。

ペルチェ素子は、加えた電力がそのまま熱に変換されてしまうため、大型化すればするほどそのまま発熱量が増大してしまいスケールメリットを受ける事ができません。

もし、1000W級のペルチェを使った冷蔵庫があったとしたら、常に業務用ドライヤー以上の熱を排熱しなければならず、膨大な放熱設備が必要となります。

ペルチェ素子を動かしてみる

ペルチェ素子を動かすだけであれば、電源端子をそのまま安定化電源に繋いで電圧を加えればOKです。

ペルチェ素子に定格電圧を加えたまま素手で掴んでしまうと、発熱と吸熱で指が同時に火傷と凍傷になってしまうため、はじめは1V程度から様子を見ます。ほんのりと放熱面と吸熱面を指で感じる事ができると思います。

ペルチェ素子は2V加えただけでも1A近い電流を必要とするため、大電流の安定化電源が必要になる。3V以上加えると素手で触れないほど発熱するため注意。

ペルチェ素子を最大限に活用するには、放熱面に最大放熱量以上の放熱器を装着する必要があります。

ペルチェ素子にはICのようなねじ止め穴がないため、ヒートシンク側を加工して取り付け方法を考える必要があります。通常であればペルチェ素子やヒートシンクのサイズに合わせて金属加工を行う必要がありますが、今回は簡易的な動作確認のためヒートシンクの上に金属製の重りを乗せて密着させる事で放熱します。

ペルチェ素子の放熱にはTDP 60Wに対応したヒートシンクを用いているが、CPUクーラーTDPの指標はCPUが熱暴走しない限度を基準にしている。可能な限り放熱側の温度を低くすることが望ましいペルチェ素子に対しては、CPUのTDP計算を基準にしても十分な冷却性能が出せない場合がある。
室温27℃の部屋でペルチェ素子を放熱しながら動作させた。室温から10℃程低い温度を得る事ができる。このペルチェは最大温度差63℃だが、放熱側の能力が足りないため理想的な冷却性能は得られない。

効率的な冷却が難しいペルチェ素子

冷温庫や恒温槽のような冷却ボックスを作る場合には、放熱側は強力に放熱できるヒートシンクなどでサイズの許す限り熱抵抗を低くし、吸熱側の密閉容器の断熱性を上げて熱抵抗を高くする必要があります。

ペルチェ素子のデータシートに記載されている最大吸熱量は両面の温度差が0℃の時を表しているので、温度差が大きくなるにつれ吸熱量は下がります。効率的な冷却を行うには十分に大きい放熱器を必要としますが、吸熱側の温度が下がり最大温度差に達すると吸熱量が0となるため、消費した電力は発熱のみに使われることとなります。

ペルチェ素子はこの放熱と吸熱のバランスを両立させることが難しく、ヒートシンクの放熱量が足りない場合などに定格電圧を加えると、消費電力で発生する熱が吸熱面まで伝わり逆に内部が温まってしまう本末転倒な事も発生する事もあります。

5V印加時に冷却温度は19℃となる。放熱器にも余裕がありもう少し印加電圧を高くできる。
少し電圧を加え8Vとすると冷却温度は16度まで向上した。さらに電圧を上げると…?
印加電圧を10Vまで上昇させると、冷却温度は逆に18度に上昇してしまった。これは消費電力と吸熱量の和がヒートシンクの放熱能力を超えてしまい、放熱側の熱がペルチェ自体を通して吸熱側に伝わってしまったためだ。
このヒートシンクを使う場合は7~8Vで使用するのが最も効率的となる。

効率の悪さと熱管理の難しさのため大型化によるメリットが無くなってしまうペルチェ素子ですが、卓上サイズの小型冷蔵庫や3Dフィラメント用の乾燥機など、軽い冷却や暖房などであれば十分実用的に使えそうなのがペルチェ素子の魅力でもあります。

今後は、このペルチェ素子を使った小型クーラーボックスなどを制作してみたいと思います。

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