前回に引き続き、パシフィコ横浜で開催されたET&IoT Technology2019のイベントレポートです。今回はベンチャー企業や大学研究室のブースのレポートです。
目次
IoT.Run 「Tibbo-Pi」
ET&IoT Technology2019のスタートアップパピリオンで展示されていたのは、宮城県のIoTベンチャー「IoT.Run(アイオーティードットラン)」だ。IoT.Runはこの年のET/IoT Technology Award 2019 奨励賞を受賞している。
今回展示されていた「Tibbo-Pi(ティーボパイ)」はRaspberry Piを活用した”学ぶ・試作・導入”の全てをカバーする、汎用性の高いIoTデバイスキットだ。
Tibbo-PiはビジュアルプログラミングツールNode-LEDと59種類のモジュールブロックによって、ハード構成からソフトウェアまでグラフィカルなIoTモジュールの構成が可能で、高い柔軟性と簡素な手順でIoTデバイスを構成でき、エッジデバイスからゲートウェイデバイスまで幅広いIoTシステムの構築に対応する。
似たようなコンセプトの製品にはSeeed Studio社のGroveシリーズもあるが、こちらのプラットフォームはArduinoであり、ソフトの開発はArduino Cに依存する部分が大きく、プログラミング未経験者には少し敷居の高い製品となっていた。このTibbo-Piはソフト・ハード共にビジュアル的な理解も容易で、Raspberry Piの魅力を余すことなく活用した新しいIoTプラットフォームと言えるだろう。
金沢大学「V-Generator」
金沢大学ブースで展示されていたのは、IoTデバイスの電源として活用できる振動発電デバイス『V-GENERATOR』だ。
V-GENERATORは磁歪式の振動発電デバイスで、振動による慣性力で上下に振動すると逆磁歪効果による磁束の変化でコイルに電圧が誘起される構造となっている。機械的にも板金をU字型に曲げたフレームにコイルとFeGe合金を取り付けたシンプルな構造になっており、耐久性にも優れているのが特徴だ。
この構造は特許取得済みで実地検証も進められており、工場での故障診断IoTデバイスへの電源供給や橋梁での検証プロジェクトが進行している。
「V-Generator」はサイズのバリエーションも多く、極所サイズの製品から大型で数ワットの発電に対応する製品まで、幅広いサイズに対応している。今後、IoTデバイスの主要な電源として注目の発電デバイスとなるだろう。
振動発電でIoTを加速する | V-GENERATOR 金沢大学 振動発電研究室
SONAS株式会社「UNISONet」
東大発のベンチャー企業「SONAS株式会社」で展示されていたのは、同社が開発したブロードキャストによる省電力マルチホップ無線ネットワーク『UNISONet』だ。展示ブースでは開発中のモジュールが展示されていた。
モジュールとアンテナは技適取得済であり、これを使用すればユーザー側で自由度の高いアプリケーションを構成する事も可能となる。そのためのSDKは現在開発中であり、提供が開始されれば実地検証や試作開発など、幅広い用途での展開が進むと考えられる。
モジュールの動作電圧も乾電池2本からリチウムイオンバッテリーまでの使いやすい電圧に対応しており、電源環境は比較的自由度が高い。
安定性や省電力、多数収容などを実現しているのが特徴のUNISONetだが、実際の運用に伴う電源環境やデータバッファなどの無線機器そののの扱いとしては運用設計と実地検証が必須となるだろう。現在、SONASではセミナーや相談会、評価キットやトライアルサービスの提供も開始しており、より柔軟に試験が行える環境が提供されている。