先日紹介したミスミの金属加工サービス「meviy」を使って、切削プレートを1枚発注してみました。今回の記事はAutodesk Fusion360を使ってMeviyに発注するレポートです。
目次
部品調達のデジタル革命「meviy」とは
「meviy(メヴィー)」とはミスミが提供するモノづくりプラットフォームで、アップロードした3Dデータでそのまま製造可否を行い、即時見積もり最短出荷に対応する新時代の部品調達サービスです。
従来の工場発注や機械加工と異なり、図面の二次元化や打ち合わせなども必要なく、画面上の操作だけで切削プレートや板金を発注する事ができます。
Fusion360で切削プレートの図面を設計
ちょうど、電動工具の締付けトルクを測定する「ボルト締結締付トルク測定用鋼板」を作りたいと考えていたので、早速Fusion360で設計を行います。
設計に難しい部分はなく、普通の鋼板に各種サイズのボルトが通るようなスケッチを書いて完成です。ボルト穴はM12~M20, M24, M30の6種類のボルトに対応させており、市場で販売されているインパクトドライバ・レンチの小型から中大型のサイズまでカタログ条件下と同じ条件下で締結できます。
今回作成する鋼板には万力に固定するためのポケット穴も追加します。この部分を万力で挟み込んで固定するので、しっかりフィットするように測定誤差と公差を確認して値を指定します。
完成した3D CADデータをmeviyにアップロードできる形式にエクスポート
3DプリンタではSTL形式からGCODEを生成するのが一般的ですが、機械加工に使うCADデータの受け渡しでは「中間ファイル」と呼ばれる形式にエクスポートする必要があります。meviyでは様々な中間フォーマットやCADファイルに対応していますが、今回は国際標準(ISO)規格であるSTEP形式を使用します。
Fusion360は、オフラインでのSTPE形式出力に対応しています。それ以外の一部の形式ではオンラインサービスによる変換が必要になるので注意が必要です。
meviyにデータをアップロードして自動見積もりを行う
meviyにログインすると、3D CADデータをアップロードできる画面に移行します。今回使用するのは切削プレートなので、画面上のタブから「FA用メカニカル部品」を選択します。
画面中部の「3D CADファイルをドロップしてください。」へFusion360からエクスポートしたSTEPファイルをアップロードします。稀にファイルの読み込みに失敗するので、その場合は再エクスポートしてアップロードします。
アップロードが終わるとウィンドウに「板金部品」か「切削プレート」の選択画面が出るので、「切削プレート」を選択します。検証が終わると、自動見積もりの結果が表示されます。
加工が不可能な形状の場合は「見積もり不可」となる
3D CADデータ自体は形状的に難しくないはずですが「加工不可」と判定されてしまいました。なぜこのような判定を受けてしまったのでしょうか。
その答えは、切削プレートの実際の加工方法にあります。フライスなどの切削加工は「円」形状をベースに切削を行っておりポケット加工では必ず隅にR(角の丸み)が発生します。エラーが出る形状では、ポケット部分の隅が直角となっており、フライスでは加工できないために見積もり不可と判定されてしまいました。
加工できない図面はエラーと表示されるので、図面を書き始めて日の浅い設計者にも優しい仕様になっています。見積もり判定が進むように「設計ガイドライン」を確認しつつ、Fusion360に戻ってCADデータの修正を行います。
「逃がし」を作って自動見積もり、材質と表面処理を指定
見積もりを通るように修正したのが上の図面です。今回の用途では隅の直角こそ必須ではないものの、Rが残っていては困るので、エンドミルRの「逃がし」を設けました。これでフライス加工が出来るようにったので、自動見積画面に進みます。
パーツビューの画面では、穴形状、材質、公差、表面処理などを指定します。読み込み直後では自動判定でM12とM14の穴がM16のタップ穴と認識されてしまったのでストレート穴の指定に訂正します。(画像は訂正済み)
公差などを追加するとそれだけ加工費が上がります。今回はそこまでの寸法管理は必要ないので、全て無指定で発注を行います。表面処理も行うか悩みましたが、ボルトを何度も締結してしまうとその部分の傷から錆が進行してしまうため、表面処理なしで発注を行います。
形状を工夫して「原価低減」にチャレンジ
ポケット加工の形状はもう少し改善の余地があるため、形状を調整して加工費の低減に挑戦してみます。今回は1枚だけなので数百円の効果しかありませんが、仮に100台生産品であれば100倍の原価低減となるのでなかなか大きな原価低減効果になります。
加工費の低減は、いかに「加工しやすい形状」にできるかがポイントなので、実際のフライス加工現場などを想像しながら図面を考えてきます。
原価低減の策としてフライスの「逃がしを大きく」すると初めのデータより200円ほど安くなりました。しかし、これで安くなったのはΦ20までで、逃がしの径をΦ25以上にすると逆に価格は上がってしまいました。更に太くすれば価格は下がるかもしれませんが、固定の問題があるためこれ以上は大きくしません。
次は、作業のし易さを考えて「T字型」のポケットを指定してみました。しかし、これは「逃がし」程の価格低減効果はありませんでした。meviyの加工費用の判定は切削体積と連動しているようです。切削作業の容易さ自体はCNCでコンピューターが操作してしまうので、形状そのものはあまり関係ないのかもしれません。
手軽に機械加工部品を発注できるのが強みのmeviy
これまでの個人で依頼する機械加工品と言えば、「個人依頼を受け付けている工場を探し」、「図面や見積もりなどやり取りを行い」「銀行振り込みなどで支払う」と、非常に手間と時間のかかる作業でした。
これがモノづくりへの熱意の高い状態が続いていればまだしも、少しでも熱意が薄れたり面倒に感じてしまうと、途端に調達や手配にかける時間が惜しくなってしまいます。実際、今回発注したボルト締付鋼板は構想がありながらもずっと後回しにしていたモノであり、今回のmeviyが無ければ作る機会自体なかったかもしれません。
meviyは自動見積もりなら何度も即見積もりが繰り返せて、コストや納期など納得のいくまで何度も再見積もりできるのも大きな強みです。相手が機械なので、提示された金額も素直に納得でき、問題があるなら気兼ねなく試行錯誤してコスト削減に繋げられるのが良いポイントだと思います。
残念な点と言えば、「個人には非対応(個人事業主は可)」「サイズや加工方法に制限がある」などの点ですが、今後もミスミはmeviyの機能拡充を明言しており、meviyのサービス内容は今後も増えていくのかもしれません。
meviy(メヴィー)| 3DCADデータアップロードで即時見積、最短1日出荷 | ミスミ