センサーや微弱電圧に欠かせない「オペアンプ」。抵抗を繋げるだけで増幅できるので色々な所で使用されます。特性や仮想短絡などオペアンプの動作を理解しなくても使えるのがオペアンプの大きな利点ですが、計算だけで使用できるので基本的な動作原理を理解しないまま使ってる方もいるんじゃないでしょうか。
本記事では、オペアンプの最も基本的な動作原理「反転増幅回路」の動きを説明します。
目次
オペアンプの基本回路「反転増幅回路」
オペアンプの最も基本的な増幅回路が「反転増幅回路」です。オペアンプ1つと抵抗2つで構成できるシンプルな増幅回路なので、色々なところで活躍する回路です。
この反転増幅回路は下記の式で計算ができるので、オペアンプの動作原理を深く理解していなくても簡単に回路設計できるのが利点です。
- 反転増幅回路は抵抗R1とR2で決まる
- 入力と出力の極性は反転する
オペアンプは反転増幅回路でどのように動くか
オペアンプは反転入力端子と非反転動作の電位差が常に0Vになるように動作します、この働きをイマジナリショート(仮想短絡)と呼びます。
イマジナリショートと言っても、実際に2つの入力端子間が短絡しているわけではありません。オペアンプは出力端子の電位を調節することで2端子間の電位差を0Vにするに調節する働きを持ちます。
この働きは、出力端子を入力側に戻すフィードバック(負帰還)を前提にしています。もし負帰還が無ければイマジナリショートは働かず入力端子の電位差はそのままです。
オペアンプの動きをオペアンプなしで理解する
オペアンプの動きを解説するには、数式や電流の流れで解説するのが一般的ですが、数式だらけにすると回路の動きのイメージはできなくなってしまうこともあるので、ここではよりシンプルに電位反転増幅回路の動きを考えてみます。
ここでは、入力電圧1Vで-5倍の反転増幅を行うケースを考えてみます。回路条件は下記のリストに表します。
- 入力電圧:1V
- R1:100Ω
- R2:500Ω
- 非反転増幅端子:0V
- 出力電圧:0V(初期状態)
回路の動きをトレースするため、回路図からオペアンプをはずしてしまいます。
オペアンプの入力端子は変えることはできませんが、出力側は人力で調整できるものと考えます。
出力は初期状態として0Vにします。
この状態のそれぞれの抵抗の端の電位を測定すると下の図のようになります。この状態では反転入力端子に0.83Vの電位が発生しているため、イマジナリショートは成立していません。
ここから出力端子の電圧だけ変えてイマジナリショートを成立させるにはどうすれば良いか考えてみましょう。
この状態からイマジナリショートを成立させるには、出力端子の電圧を0Vより下げていって、R1とR2の間に存在する0.83Vの電位差を0Vまで下げる必要があります。
出力電圧を少しずつ下げていくと、出力電圧-5VでR1とR2の電位差は0Vになります。
この結果、入力電圧1Vに対して、出力電圧が-5Vの状態を当てはめると、各R1とR2に加わる電位の分布は下記の図のようになります。
反転入力端子と非反転入力端子に加わる電位は0Vで等しくなるのでイマジナリショートが成立しました。
最後に、オペアンプを戻して計算してみると、同じような計算結果になることがわかります。
ほかのオペアンプ回路も同じ考え
今回の説明では非反転増幅回路を例に解説しましたが、非反転増幅回路やほかのオペアンプ回路でも同じような考え方でオペアンプの動きを理解できます。特にイマジナリショートの考え方は理解を深めておかないと計算式からのイメージが難しいので、よりシンプルに動作をなぞっていくのが重要です。
オペアンプの動きを理解するには数式も重要ですが、実際の動きを考えながら理解を進めると数式の理解にも繋がってオペアンプも使いやすくなります。
オペアンプを使うだけなら出力電圧の式だけを理解すればOKですが、オペアンプの動作をより深く理解するために、このような動作原理も覚えておくのもおすすめです。