建築業やDIYに必須となっている電動工具ですが、独自見解と偏見によって電動工具を世代分けしてみました。
この電動工具の世代分けはあくまでも筆者個人による見解しかないので、流し読み程度にご参考ください。
目次
黎明期 1960年~ バッテリー内蔵
- 1961年 米ブラックアンドデッカーからコードレス電動ドリルが発売
このころの情報は非常に少なく、資料もあまり出回っていないので、正確な情報はわかりません。
工具本体にバッテリーが内蔵していたり、工具からコードが伸びてバッテリーにつながっていたりと様々なコードレス工具がありました。
現在でも安価な電動工具やプライベートブランドの電動工具はバッテリー内蔵式の物があります。
第1世代 1980年~ 差込バッテリーモデルが登場
- 1980年~2000年半ばまで(一部の廉価品は現在も流通)
- バッテリー共通化によって電動工具間でが使いまわせるように
- バッテリーはNi-CdまたはNi-Mh
- 主流は12V
この時代は電動工具とバッテリーを切り離して、充電と放電を別にできる充電式電動工具の普及が進みました。
バッテリーの構成も時代とともに直列本数が増えていき、この時代に現在主流の電圧となる18Vのバッテリーも登場しました。しかしながら、重量や体積が大きくなってしまうため普及はしませんでした。この世代のコードレス工具は9.6~12Vのバッテリーが中心に普及が進んでいます。
1980年から普及し始めたコードレス工具は、電動工具を取り巻く技術発展が進み、トリガー引き量による変速機能やモーターの構造の変化による高出力化・ハウジングのエラストマ成形など現在の充電式電動工具にもみられる仕様の製品の展開が始まりました。
この頃からコードレスの丸ノコやレシプロソーなど高負荷作業の充電式電動工具も発売するようになりましたが、まだまだバッテリー性能が低く、重量的な面からも使いやすいものではなかったため本格普及はしませんでした。締結工具以外のコードレス展開は2000年代のLi-ionバッテリーの登場を待つことになります。
第2世代 スライドLi-ionバッテリー
- 2000年半ば~
- Li-ionバッテリー採用による高容量・高出力化
- スライド構造によるバッテリーの取り付けの安定化
2000年代半ばになると、それまで主流だったNi-Cd, Ni-MH電池を置き換える形でLi-ionバッテリーが台頭してきます。
工具へ差し込む構造からスライド構造へ変化し、バッテリーごとの互換性はなくなってしまいましたが、Li-ion電池そのものの性能の高さやスライド構造の安定した装着方法などが市場に受け入れられ劇的に普及が進みました。
Li-ion電池はこれまでの電池より全ての面で性能が優れており、締結工具のみならず締結工具を含む様々な電動工具がコードレス展開するようになりました。
Li-ionバッテリーは当初14.4Vの3.0Ahの時代がしばらく続きましたが、2010年頃からLi-ionバッテリー高容量化が進み現在では最大6.0AhのLi-ionバッテリーまで販売されています。
第3世代 ブラシレスモーター搭載モデル
- 2000年末~現在
- 工具の小型化・軽量化・省エネ化
- ソフトの追加による機能追加
ここまでは電動工具の世代と言うよりもバッテリーの違いでしかありませんでしたが、2000年代末に電動工具の革命と言えるモーターが電動工具に実用化されます。モーターに必須だったブラシを不要にしたブラシレスモーターです。
ブラシレスモーターはメンテナンスフリー化・小型化、そしてなによりコードレス工具の稼働時間を延ばす高効率モーターであることから、コードレス工具の主流のモーターとなっていきました。
また、ブラシレスモーターはモータの制御に高性能なマイコンが必要な事もあり、その副次的な要素としてソフト制御によるソフトウェア的な機能が追加されるようになりました。代表的な機能としてインパクトドライバのテクスモードや、インパクトレンチのオートストップなどです。
当初は締結工具しか採用されなかったブラシレスモーターですが、現在ではパワーエレクトロニクス業界の発展に伴ってモーターも高出力化できるようになり、6インチ丸のこやセーバソーなどの重負荷作業にも使えるブラシレスモーター工具が発売されるようになりました。
第4世代 スマート化・高電圧化
- 現在~
- スマート工具化は通信機能などを持たせた工具のIoT化(Milwaukee OneKey, DeWALT TOOL CONNECT, マキタ AWS当)
- 高電圧化は従来の18Vバッテリー以上の電圧に変えた電動工具(DeWalt FlexVolt, マキタ 18V X2, 日立工機 マルチボルト等)
現在は第3世代から第4世代への転換期にあると言えるでしょう。
工具業界の動向をみると、ほぼ全てのメーカーがほぼ同じような時期に高電圧化またはスマート化による次世代独自技術の開発を始めています。これは電動工具発展の基礎となっていたバッテリー業界・パワーエレクトロニクス業界の進歩に電動工具が追い付いてしまったため、電動工具業界そのものが独自技術に走り出したものと推測しています。
スマート工具化は少し前に話題になったIoTを電動工具にも投入しようという活動です。これは電動工具をスマホや外部サーバー・他製品と通信させることによって、電動工具の使い方そのものに新しい使い方を導入しようという試みです。これにはMilwaukee OneKey, DeWALT TOOL CONNECT, マキタ AWSなどが該当します
高電圧化は電圧を上げることによってモータ効率を向上し、電動工具そのものの性能を上げようという方法です。この方式を採用しているメーカーはDeWalt FlexVolt、 マキタ 18V+18Vシリーズ, 日立工機 マルチボルトなどが挙げられます。
第3世代までは電動工具の性能や機能ににメーカー毎の差異はほとんどありませんでしたが、これから始まる第4世代の電動工具こそメーカー毎の特色が大きくなり電動工具メーカーの今後を決定づける世代と言えるのかもしれません。
ただし、現時点ではこの第4世代の開発は全ての電動工具メーカーが参入しているわけではなく、廉価品が中心・低シェアのメーカーなどは後述の第5世代待ちになると推定しています。
第5世代(予想) 次世代二次電池
- 2020年半ば?~
- 次世代2次電池による更なる高容量・高出力化
- ほぼ全ての電動工具のバッテリー工具化
未来の電動工具は次世代2次電池の普及によって第5世代に進むと予想しています。
最近のバッテリー業界動向を見ているとポストLi-ion電池に繋がる技術的なブレイクスルーも発生しており、EV業界による次世代2次電池への出資も増えてきていることから、今後電動工具へ実用化されるものと推定されます。
第5世代では、ほとんどの電動工具がAC電源からコードレス工具に置き換えられるものと予想されます。また、バッテリー容量も増えることによって今以上の電動工具以外へのコードレス化も進む事でしょう。