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トルク管理締結を実現する電動トルクレンチ
ナットランナーとは、トルク管理締結作業に対応できる電動のトルクコントロールレンチです。モータ動力を遊星歯車で高トルクの回転力に変換し、ボルトナットを高いトルクで締結します。

インパクトドライバと異なり打撃機構を使用していないので、安定した低騒音・低振動トルク締結作業が可能で、指定したトルク値での制御締結も行える電動工具です。
ナットランナーは締結作業における作業性も高く、作業者の熟練度や個人差の影響を受けないため、高精度なボルト締結を簡単に実現できる特徴があります。

画像参考:The Atlas Copco High Torque Pneumatic Nutrunner RTP- Atlas Copco
インパクトと異なり、作業を行うには反力受けが必要

ナットランナーはボルトナット締結作業に対して容易なトルク管理締結作業を実現できる電動工具ですが、その動作には「反力受け」と呼ばれる反力を取るための受け部品が必要です。
反力受けとは、ボルト締結時に逆回転に工具本体が回ろうとする力を受け止めるための部品です。
ナットランナーの構造は、モータ回転を多段ギアで大きなトルクを生む方式であるため構造的にはドライバドリルと大きな差はなく締結方向と逆方向に大きな反力が発生します。インパクトレンチのような打撃やシャーレンチのトルシア形高力ボルトによる固定が無いと、作業者に大きな逆回転の反力が加わるため、この反力を抑えなければいけません。
この逆回転の反力は確実な固定によって受ける必要がある、周囲の別のボルトや突起・くぼみによって確実に反力を受け止める必要があります。

ナットランナーは産業向け電動工具

ナットランナーは簡単にトルク管理締結が行える便利な電動工具ですが、実際に使用するシーンは一部の建設作業や大型構造物・造船・プラント等の産業用途に限られています。
最大の原因は販売価格であり、ナットランナーを購入するには低出力モデルでも最低10万円~程度の予算が必要です。そのためDIYや一般的な民間の現場でナットランナーが使われることはほとんどありません。
基本的に産業向け電動工具なので、ホームセンターやプロショップ・工具専門店での取扱いもほとんど無く、商社経由での購入や専門店、大型ネット通販サイトでの通販が一般的な購入方法となります。
トルク管理締結を行う関係上、トルク精度を維持するための点検が必須の工具なので、校正証明書の発行や定期点検を行ってくれるメーカーの製品を選ぶことが大切です。
IoT活用が最も進んでいるナットランナー

電動ナットランナーは、産業用途であり高価な製品なので付加価値が付けやすい点から、IoT技術の活用が最も進んでいる電動工具です。
プラント向けのナットランナーはネットワークの接続による締結管理記録を持つのが一般的になっており、独Boschの子会社Rexrothのコードレスナットランナーにおいては、電動工具でありながらもブラウザベースのOS(オペレーティングシステム)を搭載しています。
高機能・多機能のハイテク電動工具を上手く運用するには、ユーザー側にもそれなりの知識や学習コストを必要としますが、うまく運用できた時の作業効率や品質はそれまでの電動工具とは比較にならない程向上するでしょう。
ナットランナー参考製品
TONE コードレスシンプルトルコン CST20(マキタバッテリ対応)
マキタ18Vボルトバッテリーを使用できるコードレスナットランナー CSTシリーズです。
電子制御によって20~400N・mまでトルク制御範囲を設定でき、コードレスならではの取り回しの良さを兼ね備えたナットランナーです。
マキタバッテリーを使用できる手軽さはありますが、販売価格が30万円~なので一般作業で使用することはほとんどありません。
TONE シンプルトルコン 20-2500PXSA
TONEが販売する最大出力トルク23,500N・mのナットランナーです。
ナットランナー用増幅器を組み合わせることで10,650~23,500N・mの範囲のトルク管理締結作業を実現しています。
本体重量は92kg・100万円を超える販売価格となっていて、通常の電動工具とは一線を画す超弩級の電動工具です。









