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2024年5月25日

USBテスタを電動工具バッテリーの容量測定チェッカーとして使う

USBテスタを電動工具バッテリーの容量測定チェッカーとして使う

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USB PDの出力範囲は電動工具バッテリーに近い

以前、USB PD充電器のチェックに使うUSB PDチェッカーのAVHzYのCT-3を紹介しましたが、今回はUSBテスターの変則的な活用方法として、電動工具バッテリーの容量測定にUSBテスターを使用する方法を紹介します。

14.4Vバッテリーの実用放電の電圧範囲は約12~16V、18Vの場合は約15~20Vなので、USB PDチェッカーの動作範囲の4-26Vなら問題なく使用することができます。

放電電流は最大6Aなので高負荷時の容量測定や波形測定には使えませんが、単純なバッテリー容量測定なら十分なスペックです。PC接続モニタリングや容量計算など各種機能も充実しているので、測定器としてのコストパフォーマンスに優れているのが特徴です。

マキタバッテリー用のUSB取り出しアダプタを作る

USBテスターの接続端子はUSBなので、USB端子の取り出し口が必要です。USB出力を取るだけなら市販されているUSBアダプタもありますが、出力が5Vに降圧されて放電時間が長くなってしまうのと、DCDCコンバータの損失によって測定容量が少なくなってしまうので、電動工具用バッテリーから直接端子を取り出せる専用アダプタを作ります。

この場合、電動工具用バッテリーの電圧がUSB端子に直接加わるので、一般的なUSB機器の接続は厳禁です。間違って接続しないように警告シールや注意書きを入れておきましょう。

マキタ取扱店からターミナル343843-3を取り寄せて、むき出しのままUSB端子を取り付けても良いんですが、せっかくなので、以前モデリングしたマキタバッテリー装着3Dモデルと3Dプリンタを使ってUSB取り出しアダプタを製作します。

USB取り出しアダプタは、STLデータをもとに3Dプリンタで造形します。難しい形状ではないので、3Dプリンタの造形は容易です。

基板のサイズは横40mm、縦25mm。USBコネクタは真ん中に配置する。

ターミナルとUSBコネクタの配線は、バッテリー(+)端子をUSBコネクタの+(+5V)に、バッテリー(-)端子を-にはんだ付けします。D+とD-は何も接続しません。

USBコネクタの配線図。画像はオスなので、メス側コネクタのはんだ付けする場合は配線の位置関係に注意

ちなみに、配布しているハウジングモデルでは基板のランドの半田部分の足の出っ張りの考慮を忘れていたため、普通にユニバーサル基板にはんだ付けすると干渉してハウジングに取り付けできません。表面実装の容量でUSBコネクタと配線をはんだ付けします。

マキタバッテリーターミナルとの接続には250型平端子メスを使用します。圧着端子を使用するので、圧着ペンチも必要の準備を忘れずに。

線材は最大電力に注意して選定しましょう。18Vバッテリーの最大電力を想定すると、21V×6A=126Wになるため、配線には数100Wクラスのケーブルを使用します。車載用のVFFケーブルが入手性も良くて価格も安いのでおすすめです。

配線が完了したら、ターミナル-USBコネクタ基板をハウジングに納めてねじ止めします。ハウジングの締付にはΦ3×12mmのタッピングねじを使用します。FDM方式の3Dプリンタで造形している場合、締付力が強すぎるとネジ山を破壊してしまうので注意しながらねじ止めしましょう。

バッテリー容量測定には電子負荷装置も必要

バッテリーの容量測定では、満充電状態のバッテリーに負荷を接続して電力量を測定する必要があります。測定器そのものはUSBテスターで代用できますが、負荷は別途用意する必要があります。

大容量抵抗や電動工具・その他どんな負荷を使用しても、USBテスターは電圧や負荷変動時に測定容量を自動計算してくれますが、バッテリーの容量測定においては定電流負荷による放電が望ましいので、電子負荷装置のような安定した放電器の使用が推奨されています。

今回は汎用的な電子負荷装置を使用しますが、今回使用するUSBテスター CT-3では、電子負荷(SM-LD-00)がオプションで販売されているので、そちらを使用するのも良さそうです。

電動工具用バッテリーの容量を測定する

バッテリー・USB取り出しアダプタ・USBテスター・電子負荷の3つが用意できたら、さっそく容量を測定してみましょう。

電動工具用バッテリーにUSB取り出しアダプタを装着して、USB端子にUSBテスターを接続します。この時点でUSBテスターに給電が開始されるので現在のバッテリー電圧が表示されます。

このまま測定を開始しても良いんですが、この状態だとUSBテスターは電動工具バッテリーで動いている状態なので、USBテスター動作分の電力が消費されてしまいます。USB充電器やパソコンからmicroB端子にケーブルを接続して、バッテリーを消費しないようにします。

USBテスターのUSB Aメス側に電子負荷を接続します。電子負荷の放電電流はUSBテスターの仕様上の放電電流を超えない値に設定しましょう。USBテスター最大電流の6A放電で放電しても問題ありませんが、少し余裕をもって3~5A範囲に設定します。

電子負荷装置の放電遮断電圧を指定できる場合は、バッテリーの過放電を防止するために遮断電圧を指定します。放電停止電圧は3.0V/単セルが目安です。14.4Vバッテリーの場合は12V、18Vバッテリーの場合は15Vに設定しましょう。放電遮断機能が無い電子負荷装置を使用している場合は、手動で放電を止めなければいけないので容量測定中は目を離さないようにしましょう。

ここまで準備が出来たら、電子負荷装置をONにして放電を開始します。USBテスター上には自動で放電電流と電力を計算して表示してくれるので、電圧値が放電終止電圧になるまで待ちます。

放電終止電圧になったら放電を停止します。その時の電流/時[mAh]が測定されたバッテリー容量になります。パソコン接続で波形も観察すると、どのような放電カーブで放電が行われていたかも観察できます。

画像は18V/6.0Ahのマキタ互換バッテリーの容量を測定[画像クリックで拡大]

放電測定を行う時の注意点

メーカー製品以外の機器でリチウムイオンバッテリーを放電する場合、過放電状態は必ず避けなければいけません。特に、多セル直列構成の電動工具バッテリーは、バッテリーセルの電圧バランスの崩れに注意する必要があります。

セルのバランスが崩れた状態のバッテリーを放電してしまうと、一部セルが過放電状態になり、発熱や発火の原因になります。特に、電子負荷装置による放電は過放電保護回路が無い状態の放電となるため、放電中は常に注意と監視が必要です。

バッテリー放電を行う前には、バッテリーを分解して各セルの電圧状態を測定して、バッテリーセルの電圧バランスが崩れてないかを確認してから放電を行うのを推奨します。また、放電中も目を離さず、発熱・異臭・異音等が発生したらすぐに放電を停止し、鉄缶に入れて安全な場所に隔離できるよう安全管理にも気を配りましょう。

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