ここ最近、本格的にUSB PDに取り組んでいますが、ネット通販で流通しているようなUSB PD検証機器を持っていないことに気づいたので、比較的評判の良さそうなUSBテスターを購入してみました。
今回購入したのは、スタンドアロンで動作し、PC連携にも対応するCT-2の後継USBテスター CT-3です。正式な販売日はわかりませんが、2020年7月くらいから販売が開始された新型のUSBパワーメーターです。
目次
AVHzY CT-3、USB電源機器全般の評価に使う
今回紹介するのは、少しマニアックなガジェットです。このCT-3はUSBの電圧・電流を測定してUSB充電器の性能を評価したり、モバイルバッテリーの容量を測定したりとUSB関連の電源機器の評価に特化したデバイスです。最近ではUSB PDの普及に伴い、USB PDのパケットを測定する機能も搭載しています。
この手のデバイスはUSBテスターとかUSBパワーメーター(UPS)とか、USB Meter Current Testerとか呼ばれているらしいです。USB電源の評価を行う各機能を幅広く搭載しており、これ1台でさまざまな評価測定を行うことができます。
今回紹介するCT-3は、前モデルCT-2(Kotomi Premium)の後継となるモデルで基本的な機能は変わりません。変更内容はLCDパネルの大型化・PC連携ソフトウェアの変更など細かい部分のマイナーチェンジが行われています。
電圧・電流測定や電流・電力の積算
USBテスターの基本的な機能が、電圧・電流のリアルタイム測定や電流時・電力時の計測です。
実際にUSB端子で急速給電が行われるかの確認や、モバイルバッテリーの容量チェックやスマホのバッテリーにどれくらい充電されたのかを数値として確認できます。
USBアダプタの給電規格検出
近年のUSB充電器は、各メーカーが独自に急速給電規格の立ち上げを進めて規格が乱立する複雑な状態になっており、仮にUSB充電器に5V/2.4Aと記載されていても、各メーカーの仕様に合致しないと急速充電が行われなかったりします。
CT-3はワンタッチで各メーカーの急速充電規格の検出に対応しており、さまざまな急速充電規格の対応状況を確認することが出来ます。
トリガー機能
CT-3は急速充電規格の確認だけではなく、実際に信号を送って出力電圧を操作できます。
例えば、Qualcommの急速充電規格Quick Charge(QC)は、USB規格上の5Vより高い9Vや12Vのような高い電圧の出力を行う急速充電規格で、CT-3のトリガ機能を使えばUSB充電器から5Vより高い電圧を取り出すことが出来ます。
eMarkerの読み取り
最新の給電規格USB PDでは最大100Wの給電に対応していますが、60Wを超える給電を行うにはeMarkerと呼ばれるチップを搭載したケーブルを使用する必要があります。
eMarkerの読み取り機能では、差し込んだケーブルの情報を確認できます。
ケーブル抵抗値測定(要オプション)
CT-3ではケーブルの抵抗値も測定できます。
リップル波形の測定
USB充電器やモバイルバッテリーに搭載されているインバータが発生させるリップル波形の測定も行えます。
リップルが多いと電子部品の劣化が進行したり、接続する機器に影響を与えたりしますが、この機能を使って正しくインバータの評価を行うには電源回路設計の知識が必要になるため、あまり使うことはありません。
パソコン接続機能
測定関連の機能はパソコンに接続してモニタリングできます、長時間のデータロギングなどにも使用できます。
そのほかにも、USB PDのパケットをキャプチャして挙動を確認したり、ファームウェアのアップデートなどにも対応します。
CT-03の基本的な使い方や用途
CT-3の基本的な操作はMulti Key部分のジョグを動かして操作します。1回押すと選択・決定、2回素早く押すとキャンセルです。
電源はUSB Aオス端子・USB-C INからの給電でも動作しますが、測定対象に影響を与えたり、USB PDの動作確認時にはコールドソケットの影響で電源遮断される可能性もあるため、PC端子のMicroB端子から常時電源供給を行うのがおすすめです。
USB Aメスには、USB AオスまたはUSB-Cの入力がそのまま出力されます。
USB-C INは、左下のPD COMスイッチをOFFにしないと接続した機器のパケットが遮断されてしまうので、CT-3でPDのトリガ操作を行う場合はON、機器同士でPDパケットやり取りさせる場合はOFFにします。
ちなみに、初期状態では英語表記ですが、Multi Keyを長押しすれば各種設定画面が開くので「Language」メニューから日本語を選択できます。
下の3つの解説はUSBテスターの基本的な用途についての解説ですが、色々な検証作業に使えます。
USB機器の消費電力・バッテリーの容量確認
CT-3の最も基本的な用途が、USB機器の電力測定です。
スマホの充電電流を見て急速充電が行われているか確認したり、バッテリーの充電容量を測定してバッテリーの劣化がどれくらい進んでいるのかなどの判別に使えます。
PCに接続すれば、放電電圧曲線や電力出力状態のモニタリングも出来るので、簡易的なデータロギングデバイスとしても使えます。
USB充電器の規格確認
近年、一部の界隈で騒がれているのがUSB PD充電器の規格適合の問題です。
USB PDは策定されて日の浅い規格で、過去に乱立した独自急速充電規格のしがらみや思惑も残っているため、USB PDの動作に適合しない充電器も数多く販売されています。
実際に購入した充電器の動作を確認したり、動作が正しく行われているのかの検証に使用できます。
USB充電器の評価には十分なスペック、操作のもっさり感もなし
CT-3で特に満足しているのが、操作レスポンスの良さです。この手のガジェットは、操作性が全体的にもっさりしていたりPC連携時の挙動が不安定だったり、あまり使い勝手は良くないイメージがありましたが、CT-3は反応も良く、PC連携時も切断やフリーズ等の挙動も無いので、快適に使えています。
最近はUSB PDも普及が進み、60Wクラスどころか100WクラスのPD充電器までよく見かけるようになりました。変な挙動のUSB PD充電器も一時期に比べたらだいぶ減りましたが、eMarkerケーブルやPD PPSなど新たに普及が進む製品・規格もあります。そういう機器もCT-3が1台あれば検証できるので、気になる方は持っとくのがおすすめです。
CT-3の分解能は10u単位の細かい値まで測定できるので、USB機器を開発する時の消費電力を測定する用途など使えそうです。測定値の正確さに関しては、厳密な測定には使用できませんが、簡易的なものと割り切れば十分な性能です。
CT-3の最大入力は26V/6A、この仕様なら…
さてさて、この記事の中ではUSBパワーデバイスを測定するためのガジェットとして紹介していますが、USB PDを規格通りに測定するには最大20V/5Aの100Wまで測定できる仕様にする必要があります。
このCT-3もそれに対応するため最大26V/6Aまでの測定が可能で、電圧・電流のリアルタイムロギングや電流・電力積算の導出、さらにPCへのデータ転送など普通の電力測定デバイスとしても使えるスペックを搭載しています。
ここで目に付くのが「最大26V/6A」の仕様。当サイトVOLTECHNOをよくアクセスして頂いている方なら、この仕様ならアレの測定評価にも使えると気付いた方もいると思います。
次回は、CT-3をちょっと変則的な方法で活用してみます。