多種多様な木材切断用チップソーが販売されています。メーカーも従来のような刃物メーカーの製品から、工具メーカーによる高機能チップソーが普及しており、近年はマキタの「鮫肌」、HiKOKIの「黒鯱」、RYOBI「金匠」など外見にも個性が溢れるチップソーが展開されています。
今回は、木材用チップソーの基礎的な知識とメーカー毎の違いについて解説します。
目次
チップソーの歯数
一般的に、刃数の多いチップソーほど綺麗に切れますが負荷が高くて熱を持ちやすく、逆に刃数の少ないチップソーは切り口が荒くなる代わりに負荷が低く切断速度が速くなります。
少し高価なチップソーでは「改良刃」と呼ばれる刃のピッチの間隔を変えた刃構造を採用しており、ピッチの広い部分が切りくずを掃けるようになっており綺麗な切断面と快適な切断速度を両立させた構造としています。
ちなみに、歯数はチップソーの高さを調整する事である程度の調整も可能ですが、刃の出し過ぎによる危険性や直進性が悪くなるデメリットが発生するので注意が必要です。
刃の形状
刃の形状も切断能力に大きく影響しています。刃の形状には様々な種類があり、木材横挽きに適した刃や木材縦挽き用、樹脂、非鉄金属、鉄鋼用など用途に応じた最適な刃の形状と組み合わせ方があります。刃の組み合わせは統一した名称が無いため、一般的にはパッケージの「横挽き用」や「合板用」などの記載に従います。
また、刃の「すくい角」も切断能力に大きく影響します。これは角度によって切断量と断面の綺麗さがトレードオフとなり、材料や切断方向の有無によっても最適な角度が変わるため、最適な値と言うものがありません。
特定の材料を大量に切断する場合であれば、材料と切断方法に適したチップソーを使用するのが最善となりますが、丸のこなどの様々な材料を切断する場合には汎用的に様々な切断できる能力が求められるため、汎用的な切断能力を持たせた形状の組刃を使用しているのが一般的です。
メーカーが力を入れて展開する「高機能チップソー」
近年、チップソーを販売するメーカーが力を入れているのが、チップソーに様々な付加価値を盛り込んだ全部入りのチップソーです。
チップの取り付けピッチを変える「改良刃」、切断の振動を抑える「レーザースリット」、刃の種類を変えた「組刃」、そして外観の個性が最も出る「表面コーティング」など様々な構造を搭載しています。
表面コーティングはフッ素コートなどが代表的で、台金と被切削材の間に入り込んだ切断クズや接着剤カス、ヤニとの摩擦を低減する効果があり、異物を介した台金との摩擦やそれによる熱の発生を抑える効果があると考えています。
本来、最適な切断を行うのであれば、材質や切断方向などに合わせた最適なチップソーを使用する必要がありますが、丸ノコなどの現場作業で何度もチップソーを取り換えるのは不便なので、様々な材料を汎用的に切れるような多用途の高性能チップソーが重宝されるようになりました。
マキタ「鮫肌」、HiKOKI「黒鯱」、RYOBI「金匠」の違い
現在、国内3社の電動工具メーカーは競うように「高機能チップソー」を展開しています。わかりやすいセールスポイントと広大な販路によって一定の成功を収めたマキタの「鮫肌」チップソーの成功による影響を受け、似たようなマーケティングで展開が行われており、RYOBIは「金匠」、HiKOKIは「黒鯱」と名称を変えて販売しています。
これらの「鮫肌」に代表される最近の電動工具メーカーが販売するチップソーは、刃数を減らして改良刃の採用する事で切断時の「軽さ」や「作業量の増加」を重視した製品となっているため、切断の綺麗さなどを必要とする場合には少し注意が必要かもしれません。
また、チップソー全般に言える事ですが、メーカーによる僅かな違いこそあっても性能としては大きな差がなく、高価なチップソーは全体的に質も良いため、「被切断材との相性」「フィーリングによる作業者の好み」など些細な違いに収まってしまいます。
電動工具メーカーが販売する全部入りチップソーは「電動工具の販路」に乗っているため、入手が容易な特徴があります。中小刃物メーカーのチップソーは販路が限られていて「別の地区では入手できない」「生産中止で後継品が無い」などの可能性もありますが、電動工具メーカー品は販路が広大なので少し探せば同じ製品を簡単に見つける事ができます。
チップソーにとって最も重要なのは、細かな手入れ
チップソーで見落とされがちなのが、刃のメンテナンスです。
チップソーも刃物なので、適切にメンテナンスしなければ最高級のチップソーであっても特価品以下の切れ味になってしまいます。特に刃に木くずやヤニ、錆びによる異物が付着してしまうとブレードの過熱を誘発し、チップの早期劣化を招きます。
海外では「チップソーのメンテナンスは必須」とする論調もあります。これはテーブルソーが普及している点が大きく影響しており、海外のホームセンターなどではチップソー専用のクリーナーも販売されているくらいです。切断する材料に違いこそありますが、チップソーを使うのであればスライド丸ノコや手持ちの丸ノコでもある程度のメンテナンスは必要と考えています。
例えば、電動工具に「洗浄モード」のような超低回転で回転する機能を追加して、安全にチップソーをメンテナンスできる洗浄キットをアクセサリとして販売して、「チップソーの手入れ」の習慣が根付けば、キットや各種消耗品も合わせて電動丸ノコの付加価値として新しい展開できるのではないかと考えています。興味あるメーカーさんがいたら特許のお誘い待ってます。