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【工具コラム】日本メーカーが充電式コンプレッサーや電動釘打機を販売しない理由

【工具コラム】日本メーカーが充電式コンプレッサーや電動釘打機を販売しない理由

海外市場では、バッテリーで動作する充電式のコンプレッサーやフレーミングネイラのようなコードレスの空気工具が普及しています。しかし、これらの電動工具は日本で見かけることはなく、メーカー側も積極的な製品展開を行っていません。

今回はコードレス空気工具の課題と日本特有の法規制について解説します。

本記事の内容は、筆者の法解釈やメーカー動向について独自の見解で解説する記事です、一部実例と異なる場合もありますのでご了承ください。

海外で普及が進むバッテリー式空気工具

海外市場では、バッテリーで動作するコンプレッサーや電動釘打機が普及しています。

日本ではAC電源の高圧コンプレッサーを使ったエア釘打ち機が一般的です、近年は仕上げ釘打ち機のバッテリー製品が普及しはじめたばかりで、海外のような高性能なバッテリーエア工具はほとんど販売されていません。

海外の釘打ち機には、バッテリーで動作するコンプレッサーや躯体工事に使うフレーミングネイラなど、バッテリーで動作するエア工具が販売されています。今回は、これらのバッテリー製品がなぜ日本で販売されていないのかを解説します。

バッテリー式エア工具の普及を阻む銃刀法

バッテリー式コンプレッサーや電動釘打ち機の普及が日本で進まない最大の理由こそ銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)です。

例えば、警視庁はエア釘打ち機に対し下記のような見解を公表しています。

>圧縮空気を利用した自動釘打器については、常時電源を必要とし、多くの場合他の用途にも利用可能な別置式エアーコンプレッサーとホースで接続された状態で使用されるため、使用時の形態から犯罪者等が凶悪犯罪に使用する危険性が少ないとして、警察庁により、空気銃に該当しないものと判断されている。

この文面と銃刀法の構文から解釈すると、現在販売されているエア釘打ち機は「常時電源が必要」「コンプレッサーとホースで繋がれる」「使用時の形態から犯罪に使用されるリスクが少ない」の3点によって空気銃に該当しないと判断されています。

この警視庁見解に違反する具体的な例として、「安全装置を取り外した(機能しない)改造釘打ち機」や「圧縮エアを充填したタンク単体で釘打ち機を使用」などは銃刀法に抵触すると解釈できます。

電動釘打ち機の銃刀法解釈では、「エア供給機器とホースで繋がれる」を満たさないため銃刀法に抵触すると考えられます。

高圧エア工具市場が釘打ち機の電動化を阻む

銃刀法で厳しい規制がかけられている釘打ち機ですが、「高圧エア工具」も電動釘打ち機の普及を阻んでいます。

日本では、高圧式エア工具が広く使われていますが、海外では常圧エア工具が普及しており高圧はほとんど普及していません。

電動釘打ち機は、コンプレッサー不要の取り回しの良さや経済性などの面で優れていますが、重量・サイズでは高圧エア工具に太刀打ちできないので、日本ユーザーの好みの水準を満たすことはできないと考えられます。

(補足)電動釘打ち機の打ち込み方式の違い

ここまで電動釘打ち機の問題について解説しましたが、既存の電動フィニッシュネイラやピンネイラのような電動釘打ち機についても補足しましょう。

銃刀法では「装薬銃砲及び空気銃(圧縮した気体を使用して弾丸を発射する機能)」を銃砲と定義しています。そのため、鉄砲の解釈は釘を打ち込む方式によって変わります。

国内で販売されている電動フィニッシュネイラやピンネイラは、バネの力で釘を打ち込むスプリング方式に該当するため、銃刀法には抵触していません。

エアスプリング方式空気銃に該当
スプリング方式バネで直接打込む方式はOK。エアガンのような構造なNG
フライホイール式銃刀法に抵触しない

バッテリー式コンプレッサーを所持するリスク

バッテリー式コンプレッサーを直接規制する法律は無いものの、このコンプレッサーとエア釘打ち機を組み合わせると、先ほどの「釘打ち機は空気銃に該当しない」の解釈が揺らぐため、銃刀法に抵触する可能性が高くなります。

ちなみに、釘打ち機を動かすにはタンクが必要なので、タンクレスのコンプレッサーの場合は問題ありません。

バッテリー式コンプレッサー最大の問題は、エア釘打ち機で使用していないことをどのように証明するかです。

コンプレッサー単体の単純所持を規制する法律はありませんが、現行販売されている製品は「使い方次第で銃刀法に抵触する」特殊な製品であり、今後の動向次第では銃刀法改正や許可制などの規制案が検討される可能性もあります。少なくとも、釘打ち機を所持する大工ユーザーや事業者は手を出さない方が良いでしょう。

エア釘打ち機を販売しているメーカーも銃刀法の問題を避けるため、バッテリー式のコンプレッサーの販売を避けています。

筆者の個人的な見解ですが、現在販売されているバッテリー式コンプレッサーは、メーカー側の対応として「釘打ち機を取り付けられないカプラにする」「ユーザーが意図して改造しないと釘打ち機が取り付けられない」が必要です。現在市販されているバッテリー式コンプレッサーは、銃刀法抵触の可能性を十分に排除しきれておらず、法規制対策が不十分な製品と考えています。

バッテリーコンプレッサーを使用した場合、銃刀法に抵触するのは「釘打機」となるのがポイント。

ちなみに、バッテリー式のコンプレッサーは、くみ上げ速度が足りないので釘打ち機に使うにはあまり実用的ではありません。タンク自体が小容量なのに加え、タンク内圧力も0.9MPaの常圧までしか貯められないのでエア不足になりがちです。さらに、18V/6.0Ahバッテリーだと10分程度しか稼働できないため、作業量が全く足りません。

仕上げ釘以下の釘打ち機にならある程度は実用的ですが、このクラスは既に電動化されているので現場作業にバッテリー式のコンプレッサーを使用するメリットはほとんどありません。

日本の釘打ち機市場には技術革新や規制緩和を行う体力がない

日本の建設産業は、住宅新規着工件数の減少や職人不足を受け、停滞期に差し掛かっている段階です。

釘打ち機市場も今から日本のユーザーに受け入れられる電動釘打ち機を販売したとして、既に普及している高圧エア工具の買い替えや市場そのものの規模、市場成長性を考えると開発費を回収するのは至難でしょう。

現在の法規制とユーザーの好みを考慮すると、超高速回転フライホイール方式の電動釘打ち機が高圧釘打ち機を置き換える製品となりそうですが、それを実現する製品の登場は相当先になりそうです。

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