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2020年5月3日

開発が進む「電動釘打ち機」、次世代の釘打ち機の各社動向を解説

リチウムイオンバッテリーの進歩やブラシレスモーターの発展によりコンプレッサーを使わない釘打ち機が販売されるようになりました。今回は、海外で販売されている電動釘打ち機「フレーミングネイラ」の解説や、日本国内の今後の「電動釘打ち機」の動向について解説します。

着実に進化している「電動釘打ち機」

電動釘打ち機

現在の釘打ち機は、コンプレッサーによる圧縮空気で動作させる方式が主流です。

圧縮空気を使用した空気工具は、コンプレッサーを含めると全体的なエネルギー効率は悪いものの、圧縮空気の膨張による瞬発的なエネルギーが利用できるので、釘打ち機などの用途で長らく主流の方式となっています。

モーターを内蔵する電動の釘打ち機は、ニカドバッテリーの時代からピンタッカやステープラなどの細い釘で実用化されていましたが、最近のリチウムイオンバッテリーの普及によって、ようやくフィニッシュネイラなどの電動化も進むようになりました。

海外市場では更に太い釘が打てる電動釘打ち機として「フレーミングネイラ」と呼ばれるN釘に近い形状の釘に対応した電動釘打ち機が販売されており、長く続いた空気工具市場は電動化へと変わりつつあります。

電動釘打ち機のメリットと課題

電動釘打ち機のメリット

  • エアホース・コンプレッサーが不要で取り回しや可搬性に優れる
  • 作業時の騒音が少なく、周辺への環境配慮が少なくて済む
  • 釘打ち作業のランニングコストが安い
  • 空気工具と比較してメンテナンスが少なくて済む

電動釘打ち機が抱える課題

  • 電動釘打ち機 1台あたりの初期コストが高い
  • 空気工具よりも本体重量が重い
  • ロール釘に非対応(後述あり)
  • 一部の釘打ち機は日本の銃刀法に抵触する恐れ

日本国内では使用不可、JISや銃刀法免除に適合しない恐れ

コンプレッサー不要の電動釘打ち機は魅力的ですが、海外で販売されている電動釘打ち機は、海外の法律や規格の元で設計された製品であり、現時点では日本国内での使用に対応した電動釘打ち機ではない点に注意が必要です。

海外で販売されている釘打ち機はあくまでも「フレーミングネイラ」であり、JIS規格に定められた釘に対応していないため、日本の構造物への使用はできません。

また、海外のコードレスフレーミングネイラは日本国内の銃刀法について明確な対象外が明示されていない製品であり、現時点でのコードレス釘打ち機の銃刀法の扱い自体がグレーゾーンな状態です。明確な指針がない以上、単純所持だけでも摘発される可能性があるので個人輸入等では注意が必要となります。

米Milwaukeeが電動釘打ち機、最後の課題「ロール釘」に対応

Milwaukee電動くぎ打ち機、ロール釘特許

これまでの電動釘打ち機で、普及を妨げる構造的な最後の課題が「ロール釘」に対応していない点でした。現在までの電動釘打ち機では、接着剤やプラスチック連結のステック連結釘の釘打ち機しか販売されていませんでした。

そんな中、2019年に米国の電動工具メーカーMilwaukeeから米国出願された特許が、電動釘打ち機でのロール釘巻き上げ構造に関する特許1です。

この特許によって電動釘打ち機でもロール釘を使用できるようになり、空気工具と同じようにロール釘を使用できる製品を開発が実現できる可能性が高まりました。

今後、Milwaukeeとのクロスライセンスによる日本メーカーでの展開や、国内メーカーによる該当特許を回避する特許出願により、JIS規格のロール釘に対応した電動釘打ち機が期待されます。

Milwaukee電動くぎ打ち機、ロール釘特許

3種類(+1種類)のコードレス釘打ち方式

フライホイール方式

  • 採用メーカー:DeWALT, Makita?

ニカドバッテリーの時代から、電動釘打ち機の打ち込み機構として開発されているのが「フライホイール方式」です。

フライホイールとは回転運動を貯め込む装置で、モーターの回転力をフライホイールに伝達させることで回転エネルギーを貯蔵し、フライホイールの回転力を打撃エネルギーへ一気に開放することで釘の打ち込みを実現しています。

フライホイールは釘打ち機の内部で高速回転しているため、重量の問題やジャイロ効果による取り回しの悪さなども懸念されます。しかし、ガスによる反発力・膨張・燃焼を使用していないため、銃刀法を回避できる可能性が高く、既にマキタが日本国内での特許を出願している点などを含め、国内展開が最も期待される方式です。

マキタ、フライホイール式電動くぎ打ち機
マキタが出願しているフライホイールを搭載した電動釘打ち機に関する特許
リンク先:「電子レンジ」や「電動釘打ち機」など新市場参入を匂わせる様々な特許|マキタ特許特集

エアスプリング方式

  • 採用メーカー:HiKOKI(metaboHPT), Milwaukee

電動釘打ち機の中で比較的新しい方式が「エアスプリング方式」です。従来方式の金属バネの代わりに、ガスを注入したシリンダを備えており、シリンダ内のガスの圧縮・開放で強い打ち込み力を実現している方式です。

この方式はフライホイールよりも軽量化が図れる点、バネよりも小型化できる方式として最も期待度の高い方式ですが、気体の圧縮・反発力を使用しているため銃刀法の影響を受ける可能性が高く、日本企業であるHiKOKIが主力の日本市場で展開を見送っている点などから日本国内での展開が難しい方式であると予想しています。

スプリング方式

HILTI 電動くぎ打ち機
  • 採用メーカー:Hilti

フィニッシュネイラなど小径の釘打ち機で採用されているのが、バネの反発力を使用した「スプリング方式」です。

金属ばねを使用した釘打ち機は古くから存在しており、電動のピンネイラやフィニッシュネイラでは既にスプリング方式の電動釘打ち機が主流になりつつあります。

より大きい釘に対応するスプリング方式の釘打ち機としては、Hiltiのコンクリートネイラが販売されています。しかし、実際の大工現場などが求める釘打ち機のサイズは大きくても常圧釘打ち機以下に収める必要があり、大型化してしまうスプリング方式はこれ以上の発展が難しいかもしれません。

プリチャージ方式

  • 採用メーカー:Airbow

電動釘打ち機ではありませんが、コードレスの釘打ち機を実現している方式として、ニュージーランドの空気工具メーカー Airbow Systems社が「プリチャージ方式」を採用しています。

この方式は、釘打ち機下部に備えられた超高圧のエアタンク内に貯め込んだ圧縮空気で釘打ちを実現する方式です。モーターやバッテリーなどの重量部品を搭載しないため、コードレス釘打ち機の中では最も軽量で、従来の空気工具の釘打ち機と同じようにメンテナンス性が高いのも特徴です。

残念ながら、この方式は狩猟・競技用空気銃の「プリチャージ式」と同構造であり、銃刀法規制の影響を強く受けると予想されるため、日本国内での販売はほぼ不可能と考えられます。

電動釘打ち機 最大の欠点は「重量」、次世代パワーデバイス待ち

ここまで電動釘打ち機について紹介しましたが、電動釘打ち機で先行する欧米市場で敬遠される要素が「重量」です。

電動釘打ち機はモーター・バッテリー・打ち込み機構などを搭載しているため、空気工具よりも約1~2kgほど重く、ユーザーの大半は空気工具の釘打ち機、またはガス燃焼の釘打ち機を使用しています。

特に、日本市場では軽量な「高圧空気工具」が大きなシェアを占めており、現状の電動釘打ち機の重量では市場への浸透は難しいものと考えられます。そのため、電動釘打ち機の本格的な展開は海外が先行し、重量問題が解決してから日本展開が進むと予想されます。

筆者は、重量問題を解決する根本的な解決策こそ、次世代バッテリーや次世代半導体など新世代の電子デバイスにあると予想しています。

電動釘打ち機を軽量化させるには、モーターを含めたメカ部分の小型化が必要であり、メカ部の小型化による打ち込み力低下を補うにはモーターの更なる高出力化が必要となります。これらを実現するには、更なる小型高出力の次世代バッテリーの登場や、次世代高効率モーターが求められるようになるでしょう。

現状ではまだまだ課題の多い電動釘打ち機ですが、2020年代の後半には技術開発も進み、釘打ち機の市場は「空気工具から電動工具へ」の転換が進み、大工現場からコンプレッサーが無くなる日も来るのかもしれません。

脚注

  1. Pusher mechanism for powered fastener driver|US20190314967A1
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