VOLTECHNO(ボルテクノ)

ガジェットとモノづくりのニッチな情報を伝えるメディア

電動工具の互換バッテリーを選ぶための徹底解説ガイド

電動工具の互換バッテリーを選ぶための徹底解説ガイド

当記事は製品の解説・調査を行う検証記事であり、解説する製品の使用や購入を推奨するものではありません。

何だかんだで売れている電動工具の互換バッテリー

当サイトでは互換バッテリーが大きな問題となる以前から電動工具の互換バッテリー検証を行っているのですが、互換バッテリーは今でもその存在感が衰えることなく、Amazonを始めとするECサイトで大量に販売されています。

今回の解説記事では、少し視点を変えて「危険な互換バッテリーの具体的な判別方法」を紹介します。

日本でリチウムイオン蓄電池を販売するための法令適合であったり、販売ページとしての明らかなおかしい点、互換バッテリーを分解した時の確認方法から測定器で計測を行って判別する方法まで解説します。

こういうの手順書みたいなものを公開してしまうと、悪質な業者側も対応してしまうので不本意な事態になるかもしれませんが、法令方面で正しく対応してくれるなら結果オーライですし、1人でも多くの電動工具ユーザーに適切なバッテリーの知識が備わり、巷に溢れるDIYブロガーや動画配信者の互換バッテリー関連の紹介コンテンツのクオリティ向上にも繋がればと思っています。

一応念のためですが、当サイトによる互換バッテリーの判断基準として当記事の検証に全て適合するような互換バッテリーブランドは存在しません。基本的に互換バッテリーは高リスクな製品であるため、純正バッテリーを使うことを強く推奨します。

【初級編】販売サイトページと法令適合表記の確認

この【初級】では、PSEマークの表記判別や販売ページの記載から怪しい互換バッテリーを判別する方法を解説します。

電動工具用のリチウムイオンバッテリーは、電気用品安全法における”特定電気用品以外の電気用品”に位置付けられており、丸型のPSEマークの表記が義務づけられています。

一部の互換バッテリー輸入事業者は、海外サプライヤーの指示をそのまま鵜呑みにして丸型PSEマークの表記すら適切に表示できていない場合も多いので、敢えて互換バッテリーを選ぶのであれば、最低限のラインとして製品のラベル表記や販売ページの内容を確認して判別しなければいけません。

安い互換バッテリーは全て高リスクな粗悪品

この時点で九割の互換バッテリーはダメと言っているようなものですが、基本的に安い互換バッテリーは電動工具用途に適していない粗悪品です。具体的な価格を挙げるのも良くないのですが、マキタ BL1860Bの互換バッテリーの場合1個あたり4,000円程度の互換バッテリーは例外なく粗悪品です。

互換バッテリーはリチウムイオンバッテリーを搭載しており、リチウムイオンバッテリーと一括りに言っても用途によって色々と細分化されています。例えば、見た目が同じであっても「安いだけのもの」「大容量のもの」「高出量のもの」「充放電サイクルが長いもの」など用途に応じて使い分けされています。

海外ベンダーによるリチウムイオンバッテリーセルの品目リスト
リチウムイオンバッテリーと言っても種類や価格で千差万別で、メーカーやグレードでこのリストに収まらない100倍以上の品目がある。
画像:BATEMO understanding batteries

安い互換バッテリーが搭載するのは基本的に「安いだけのもの」です。本来はハンディ扇風機とか小型ライトに採用されるクラスのもので、数Wくらいの低い消費電力の低価格機器に搭載するのが本来の用途です。

そんな性能の低いリチウムイオンバッテリーに何百Wもの電力を必要とする電動工具に繋げてしまったら、どうなるかは想像に容易いでしょう。

現場を見て回ると「安全のために互換バッテリーはクリーナーだけ使っている」な方もよく見かけるのですが、充電式クリーナーは強モードであれば丸ノコやドリル作業くらいの負荷になるので、クリーナーこそ純正バッテリーを使わなければいけません。

巷では「純正バッテリーは不当に高いもの」と考えているユーザーも多いのですが、「高出力で安全な」リチウムイオンバッテリーパックの原価や設計・販売・流通コストを含めて考えれば純正バッテリーの価格設定はそこまで高いものではありません。

PSEマークの近傍に事業者記載がない or XXX株式会社となっている

最初に確認しなければならないのが、バッテリー裏側の製品ラベルに記載されているPSEマークです。

PSEマークは表記方法が決まっていて、PSE対象の製品は「PSEマークの記載とともに近傍に事業者を明記する」と定められています。互換バッテリーは大半が中国から輸入している製品であるため、輸入事業者が法人格であれば社名を記載し、個人であれば個人名が記載しなければいけませんなりません。

PSEマークだけの場合やブランド名しか書かれていない場合は、PSEが定める表記ルールに違反していることになります。また、製品ラベルがドラフト版の”XXX株式会社”となっているラベルもありますがこれも違反です。もちろん、PSEマークが無いのも論外です。稀に”Amazon合同会社”と記載しているラベルもありますが、Amazonが互換バッテリーの輸入事業者になることは無いと想定しているのでこれもアウトです。

稀に見かけるXXX株式会社。中国企業にPSE適合手続きを全て委託するとドラフト版の状態で製品化する場合がある。XXX株式会社はドラフト版のまま出荷しているもの。

販売事業者は販売に際してPSEマーク表示を確認する義務があるので、PSEマークの表記違反を見逃して販売した場合は、販売事業者も罰則対象になります。(電気用品安全法第57条)

ちなみに、互換バッテリーの輸入事業者は充放電ができなくなった不良品の交換程度なら快く対応してくれますが、発火のような重大事故の問い合わせになると、ほぼ100%無視されて販売ページごと削除して雲隠れするのが互換バッテリー販売業者の通例です。重大事故が発生した場合には、輸入事業者に当たるPSEマーク記載の企業に製品責任を問うのが正しい製品事故対応の手順となります。

そのため、互換バッテリーを使うのであれば、ラベル裏PSEマーク近傍に記載している事業者名を必ずメモしておく必要があります。

PSEを”認証”や”取得”と書いている

互換バッテリーの販売ページに”PSE認証”と記載している事業者はちょっと怪しめです。

リチウムイオン蓄電池におけるPSEは電気用品安全法が定めている技術基準や自主検査条件を満たしていることを自ら示す自己宣言として記載するものであり、国や機関の認証を必要とするものではありません。

外部機関によるテストレポート発行を行う事業者もいるので、事業者が行う手続き的には認証のようにも見えるのですが、この点に関しては経済産業局も正式に「PSEは認証を取得するものではない」と回答しています。

よく誤解されることですが、PSE マークは国が許可をしたり、国から認証を取得するものではありません。電気用品安全法に定められる義務を果たした証として、届出事業者が自らの責任で電気用品に表示を行うものです。

引用元:中部経済産業局 製品安全室 よくあるお問い合わせ

“認証”や”取得”と記載している事業者は、PSE運用を事業者側が正しく理解しておらず、例え上記のPSEマークの表示が正しかったとしても実際の運用に問題のある可能性があります。

ちなみに、ACアダプタやUSB充電器もPSEの対象製品で”認証”と書かれているのですが、リチウムイオン蓄電池よりも規制が厳しい”ひし形PSEマーク(特定電気用品)”は政府から認定された検査機関による認定を通さなければならないため、この場合は”認証”や”取得”の表記をしてもいいかなと思っています。

事業者申請書や別表第九基準のテストレポートを乗せている

たまにPSEの事業者申請書やテストレポートを掲載している販売ページも見かけますが、これも一つの判別基準となります。

事業者申請書は事業者が国に対して「PSE対象の製品を販売する」と申請するだけの書類であり、製品としての安全性や販売方法の妥当性を証明するものではないため、PSE適合の証明として本書類を記載する意味はありません。それでも一応、輸入事業者の連絡先の情報源にはなるのですが、中には一番肝心な企業名にモザイクをかけている販売ページもあるため、根本的な部分でPSEの運用基準を何一つも理解していない可能性があります。

また、一部の事業者は販売ページにリチウムイオン蓄電池の基準適合確認を外部機関に委託した際に発行される”テストレポート”を記載しているケースもあります。

テストレポートはPSEにおける基準適合確認の資料として有効な資料なのですが、このテストレポートの技術基準を2024年12月27日で効力が切れる”別表第九 (Appendix 9)”で取得、掲載しているケースが散見されます。

解像度が低く分かり難いが、リチウムイオン蓄電池の検査方法が「Appendix 9」となっている。中国企業にPSE適合を委託するとほぼ別表第九基準のテストレポートが送られてくる。

現在のリチウムイオン蓄電池の技術基準は”別表第十二 J-62133-2″なので、別表第九のままだと危険性の高い互換バッテリーである可能性が高いです。特に、別表第九から別表第十二への一本化改正はマキタ互換バッテリーの事故多発によって改正された背景があるので、そのままテストレポートのスキャン画像を放置している事業者は法令適合に無頓着なリスク高めな事業者と判定しています。

ちなみに、製造工場がISO9001 (品質マネジメントシステム)の取得を謳う事業者もいますが、これはあくまでも中国製造工場が品質マネジメント認証を取得しているだけであり、企画や販売を行う国内事業者によるISO9001取得も伴っていなければ大した意味はありません。

基板を”基盤”と表記している

これはちょっと偏見も含んでいるのですが、基板を「基盤」と記載する事業者は避けた方が良いです。

電子回路は一般的に基板と表現するものであり、物事の基礎やシステムを表現する基盤とは別の意味を持つ言葉です。このことを指摘する人は結構多いですし、電子機器の設計や製造を生業とする企業で”基盤”と”基板”の表現を混同する企業はまず存在しません。

素人による表現や変換ミス程度ならまだ良いとして、専門性の高い製品を取り扱いながら根本的な用字の誤りに無頓着な事業者が、バッテリーの安全性や膨大かつ複雑な規格適合に対しても正しく気を配れるのか少し疑問です。

【中級編】内部部品の確認

初級は主にPSEの運用を基準とする確認や販売ページによる判別でしたが、中級ではバッテリー分解を分解して判別を行います。

この辺りは、電動工具メーカーの独自構造に関する所見やリチウムイオンバッテリーの知識が必要となってくるため少し難易度が上がります。互換バッテリー事業者の中にはこの部分まで切り込めていないまま販売している業者も多いです。

一応、技術的な解説として分解を前提としていますが、リチウムイオンバッテリーを分解して確認を必要としている時点で互換バッテリーはまともな製品ではないことを理解して頂ければと思います。

マキタ初期保護基板のコピー基板を乗せている(マキタ14.4V/18V互換)

バッテリーを分解して保護基板を確認した時に、写真のような小さい基板が乗っていたらアウトです。

リチウムイオンバッテリーは各ブロックの電圧状態がばらつくとセルアンバランスと呼ばれる状態になり、各ブロックが過充電状態や過放電状態になり危険性が跳ね上がります。

そのため、現在のリチウムイオン組電池は各ブロックに電圧検知を設けて過充電・過放電にならないよう監視する保護回路の搭載が必須になっていますが、画像のような保護基板は全ての電池ブロックを監視するようになっていないので危険性の高い製品です。

マキタ互換バッテリーにおいては、超初期のマキタ純正リチウムイオンバッテリーがこの方式を採用していたため、そのコピー基板を搭載していた互換バッテリーにも数多くの採用例が見られました。そのため、未だにこのタイプの保護基板を搭載するマキタ互換バッテリーが多数流通しています。

日本国内においては、2024年12月27日以降に本保護方式のリチウムイオン蓄電池は規制対象となります。

ちなみに、過去には全ブロック監視に見せかけた単ブロック監視の悪質な保護基板を搭載していた互換バッテリーブランドも存在していたので、全ブロックタブのはんだ付けがあるからと言って過信するのも危険です。

写真は保護基板を取り外してバッテリーの配線パターンを確認しているところ。この互換基板ははんだ付けランドしかなく電圧検知を行うためのパターンが無い。(2020年時点の製品)
画像:Rebuild Storeブランドのマキタ互換バッテリーを分解・検証

セルホルダが無くタブだけでバッテリーセルを保持している

ケースからバッテリーを取り出したときに、セルを保持するホルダーが無いバッテリーは高リスクです。

電動工具は基本的に振動や衝撃に晒される製品なので、バッテリーも耐久性を上げるためにセルホルダーに入れて実装されるのが望ましいです。

セルホルダーが無いとセル同士が衝突してセルを損傷させたり、タブ外れによる断線や接触不良による発熱などのリスクが上がるため、ホルダーの無い互換バッテリーを使用するのは避けましょう。

ちなみに、マキタの純正バッテリーも残量表示搭載以前のモデルはセルホルダーが無い仕様となっていて、一部のマキタ互換バッテリーはこの世代のマキタ純正バッテリーをコピーしてしまったものとなっています。

残量表示機能搭載以前のマキタ純正バッテリー BL1850
バッテリーホルダーが無く、上部カバーとバッテリーケースで保持する構造になっている。
現行のリチウムイオンバッテリー BL1860B
バッテリーセルはケースホルダーに納められた堅牢な構造に変わっている。耐久性を求められるリチウムイオンバッテリーパックでは基本的にセルホルダーを使うのが一般的一般的。

ラベル記載のバッテリー容量と製品記載の容量が異なる

互換バッテリーは6.0Ahと書いてありながら実測4.0Ahの容量詐称が定番ですが、実際に容量を測定しなくても容量詐称がわかる場合があります。

互換バッテリーの分解

バッテリーセルのラベルには品番や容量を記載している場合が多く、そのラベルを読み解くと公称容量を把握できます。

例えば、2000mAhと書いてあればそのまま2セル構成で4.0Ahバッテリーです。容量が書いてなくても、セルサイズを表す18650の後に20と書いてあれば2,000mAhのセルの可能性が高いです。中にはラベルに一切記載していないバッテリーセルもありますが、経験上その場合は大体2,000mAhセルの場合が多いです。

バッテリーの品名を検索すれば、主要なリチウムイオンバッテリーメーカーの製品であればデータシートが出てきて性能も確認できますが、品名やメーカー名すら検索で出てこない場合、中国ローカルブランドの低価格低品質セルで電動工具用途としては適していない可能性が高いです。

【上級】リチウムイオンバッテリーセルの特性測定

上級からは、実際に測定機器を用いてリチウムイオンバッテリーの特性を確認する工程になります。

ここまでくると、高価な計測機器やその結果の良否を適切に判断できる知識が必要です。動画配信などで互換バッテリーをおすすめ商品として紹介するのであれば、PSE適合確認は当然の事として最低限この辺りをスタートラインとした検証が必要です

内部抵抗が高い、各ブロックのばらつきが大きい

バッテリの内部抵抗を測定するバッテリハイテスタを使って各バッテリブロックの内部抵抗のばらつきを測定します。

リチウムイオンバッテリーの性能を表す1つの基準として内部抵抗があります。内部抵抗について簡単に説明するとバッテリーそのものが内部に持つ抵抗成分のことで、この数値が低ければ低いほど放電性能に優れたバッテリーとなります。

純正バッテリーに用いられているリチウムイオンバッテリーはハイレートセルに分離される内部抵抗が低くてハイレート放電に対応できるセルですが、互換バッテリーのバッテリーセルの多くは内部抵抗が高く、大電流放電を行うと発熱が大きくなり発火や発煙などのリスクを伴います。

また、リチウムイオンバッテリーをパック化する時には、製造時のバラつきを整える選別によって近い特性のセルで組み合わせてパック化しますが、互換バッテリーは選別工程が甘くセル毎の特性バラつきも大きい傾向にあります。

ちなみに、2023年にwaitley互換バッテリーを購入して内部抵抗を測定した時は下記のような結果になりました。

  Waitley マキタ互換バッテリー (参考)マキタ BL1860B
#1 8.1mΩ 6.7mΩ
#2 8.0mΩ 6.7mΩ
#3 8.3mΩ 6.7mΩ
#4 8.1mΩ 6.6mΩ
#5 7.8mΩ 6.7mΩ
出力端子 42.2mΩ 36.5mΩ
基本的に中国ブランドの互換バッテリーは中国ローカルの出自不明な低価格セルを使用していることが多いです。消費電力の低い1セルだけ使う充電式製品なら良いのですが、電動工具用途に使うには、セル特性も低くセルの選別も甘いので純正バッテリーと比較すると不安が残ります。

内部抵抗の測定にはバッテリハイテスタと呼ばれる高価な測定器が必要ですが、最近は内部抵抗測定機能付きのマルチメータも低価格で買えるようになっているので、ブロックごとの内部抵抗のばらつき判別だけであればそれでも問題なさそうです。

実測容量が表記と異なる

リチウムイオンバッテリーの実容量測定には、電子負荷を使用します。

ほとんどの場合、バッテリーセルのラベルを見れば容量を判別できますが、ラベルを張り替えた偽物のリチウムイオンセルやEVや無停電電源装置から取り出して中古セルをリサイクルした互換バッテリーもあるので、ラベルに良い品名が書かれていても実測結果と異なっていたなんてことも珍しくありません。(→マキタ互換18V-12.0Ahバッテリーを検証、21700セル採用の大型マキタ互換バッテリー

21700-40TはSamsung SDIの品名だが、このリチウムイオンセルのラベルはサムスン本来のラベル書式とは異なるため粗悪なコピーセルかラベルを張り替えたリサイクルセルと想定される。

バッテリー容量測定には電子負荷装置を使用するのが一般的ですが、18Vバッテリーまでの簡単な測定ならUSB PD 100Wに対応する電子負荷機能付きのUSBテスターでも測定ができます。PCに接続すれば放電波形もキャプチャできるので意外と便利です。

ちなみに、Panasonic、Samsung SDI、村田など大手リチウムイオンバッテリーのセルは、原則として10万本単位の出荷が基本であり、販売先や用途も厳密に管理されているため、互換バッテリーのような数千本単位の需要に対応してくれることはほとんどありません。仮に何らかの方法で運よく調達出来ても、それは一時的なもので安定した長期生産は不可能だと認識しています。

過放電遮断機能が無い(マキタ14.4V/18Vのみ)

電子負荷で放電を行っている時、低電圧状態になっても出力遮断状態にならないバッテリーは危険です。

互換バッテリーブランド Waitley マキタ互換18V WTL1860バッテリーの放電電圧波形
4V付近まで放電できてしまう

これはマキタ14.4V/18Vバッテリーに見られる保護動作ですが、放電時にバッテリー単体で遮断機能が付いていない互換バッテリーは高リスクです。下のグラフはマキタ互換バッテリーの電圧下限制限を設定せずに放電した時のグラフです。

電子負荷装置で深放電行った時、マキタ純正バッテリーは1.2V/単セルで出力が遮断されますが、一部のマキタ互換バッテリーは0V付近まで放電してしまいます。

マキタ14.4V/18Vバッテリーはプラスとマイナスの2端子だけで電源を取れるお手軽仕様なのが特徴ですが、製品側ではバッテリーパックの各ブロック単位の過放電状態を検知できない構造になっており、マキタ14.4V/18Vバッテリーはバッテリー側での遮断機能搭載が必須となっています。

極端な過放電状態になると、リチウムイオンバッテリー内部の電極を劣化させて発火の原因となる可能性があります。過放電時に遮断機能がないバッテリーはWaitleyなど人気の互換バッテリーにも見られる仕様なので注意が必要です。

一部のマキタ互換保護基板には出力遮断用のFETを搭載していない。
画像:互換バッテリーブランド Waitley マキタ互換18V WTL1860バッテリーを検証

互換バッテリーの普及は止められず品質も上がってきているが、玉石混交な製品であることを忘れない

最後の補足ですが、本記事内の検証を行い全てパスしたとしても、その互換バッテリーが完全に安全と言い切ることはできません。

本来であれば、本記事で解説した検証に加えてハイレート放電時の測定に必要な1kW級の電子負荷装置 (50万円~)やバッテリーセルの内部構成を確認するX線撮影 (1ショット10万円)なども行いたいところです。しかし、ここまでくると個人レベルで対応できるものではありません。言い換えれば、本来のリチウムイオンバッテリーパックの検証とはそこまで行わないと安全性の証明とは言えないのです。

さて、ここからはリチウムイオンバッテリーの資材調達の話になるのですが、現状の電動工具メーカーが採用しているリチウムイオンバッテリーは、日本や韓国のバッテリーメーカーが開発したハイレートセルであり、10万本単位での大量注文が無ければ担当営業との交渉すらできない資材です。

しかし、タブレスセルが普及した2024年からはバッテリーの調達事情も変わってきており、中国 EVE Energy製のセルが純正バッテリーにも採用されるなどの事例も見られ、リチウムイオンバッテリーセルの調達状況は一変しています。

そういう背景も含み、調達条件が比較的緩い中国セルメーカーや互換保護基板に対する信頼性の向上、危険なバッテリーに対する規制強化や法規制に正しく対応する輸入事業者の増加によって、そう遠くないうちに、互換バッテリーの中にも本当の意味で純正相当に匹敵する製品が出てくるだろうと想定しています。

ただし、互換バッテリーが本当の意味で純正バッテリーに匹敵する時代がやってきたとしても、電動工具の互換バッテリーそれ自体が市場として玉石混交の状態であることには変わりなく、粗悪な互換バッテリーと高品質の互換バッテリーが同時に棚に並ぶ状態が続くでしょう。そういう状態になってしまった時点で、互換バッテリーはマトモな製品ではありません。

あとは最後の個人的意見なのですが、互換バッテリーと言えども、純正相当のバッテリーを作って売るのであれば、もやは純正バッテリーと大差ない価格設定にせざるを得ないので、万が一の事故リスクや周囲とのいざこざを避ける意味でも普通に純正バッテリーを使うことをオススメします。

Return Top