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2023年7月12日

互換バッテリーブランド Waitley マキタ互換18V WTL1860バッテリーを検証

互換バッテリーブランド Waitley マキタ互換18V WTL1860バッテリーを検証
  • バッテリーセルの品目が不明
  • バッテリー容量を詐称している
  • 放電側の遮断回路が無い
  • ハイレート充放電に対応しているか怪しい
  • 温度保護が働かなかった(?)

当記事は製品の解説・調査を行う検証記事であり、解説する製品の使用や購入を推奨するものではありません。

通販サイトで人気のWaitleyマキタ互換バッテリーを検証

久々の互換バッテリーで検証するのは、Amazonで長らく販売されているマキタ互換バッテリーの定番18V互換バッテリーとも言える Waitley マキタ18V互換 6.0Ah バッテリーです。

本記事では、国内ブランドの電動工具用バッテリーが純正バッテリー相当に使用できるか・仕様上の安全性が確保されているかを検証します。

Amazon購入日付は2023年3月19日

マキタ18Vスライド互換バッテリーのチェックポイント

下記の4項目を中心に分解・検証を進め、互換バッテリーの安全性を評価します。

  • ハイレートセルの採用
    電動工具は急速充電・大電流放電で使用するため、高い充放電性能を持つハイレートセルの搭載が必須。
  • 保護回路
    リチウムイオンバッテリー機器で必須の「過放電/過電流/過充電/過熱/低電圧保護」の有無。また全セル監視を行っていること。特にマキタの14.4V/18Vスライドバッテリーは、各種保護と遮断機能をバッテリー側に依存しているため、バッテリー側に遮断機能が必要。
  • 製造元・輸入者・販売店情報
    電気用品安全法上の輸入行為を行う事業者の情報を記載していること。

2番目のバッテリーセルの監視方式については令和4年12月に電気用品安全法の改正が行われており、全セル監視搭載が必須となっています。

バッテリー検証前に外観を確認

セルメーカや品名が不明

セルの外観を確認したところバッテリーセルの刻印が無く、品名が不明でした。

電動工具用途で使われているSamsung SDI,LG Chem,村田製作所等のリチウムイオンバッテリーであれば必ず刻印があるため、このセルに関しては中国ブランドの無名セルが使われていると予想されます。

各セル監視機能は有効

互換バッテリーを開封して基板を観察してみたところ、各セルに配線が伸びており各セルへの電圧測定機能は搭載していると思われる配線パターンが確認できました。

さらに、サーミスタも実装されているようで、温度検知機能も搭載されているものと予想されます。

海外サイトに掲載されていた同メーカーの前バージョンの保護基板の接続概念図

しかし、保護基板にはコーティングが施されていないため、屋外での作業や金属加工の際には使用は避けることを推奨します。木くずや金属粉が内部に入り込んだ場合、保護基板が正常に動作しなくなり製品事故が起こるリスクが高くなります。

また、タブのスポット溶接自体は比較的良好ではあるものの、場所によっては溶接位置にズレが見られ、作業品質として最適とは言えない状態でした。

遮断用のトランジスタを1つしか搭載していない

基板外観上の懸念事項として、トランジスタを1個しか搭載していない点が挙げられます。

各セルの電圧監視と過充電保護用の遮断トランジスタは搭載しているようですが、このトランジスタは充電時の遮断しか行っておらず、放電側の遮断を行うものではないため、マキタ18V純正バッテリーの保護動作とは異なる挙動になると予想されます。

実際の使用時のリスクにおいては、過放電側の遮断機能を搭載していないため、使い方や装着する製品によっては過放電状態を起因とする破損を起こすリスクがあると考えられます。

残量表示基板は信頼性が低い

バッテリー残量表示機能は%単位で表示する機能を搭載しているものの、配線の計上からバッテリー残量を表示する手法として制度の低いバッテリー電圧を読み取って残量表示する方式を採用していると考えられます。

少なくともこの電圧測定による残量表示は百分率での残量表記を実現できるような方式ではありません。

また残量表示基板には通信端子を搭載していないため、自己故障診断機能などの実装は不可能と考えられます。販売ページにこのような表示は、景品表示法(優良誤認)に該当する可能性があります。

販売ページには自己故障診断機能があるように書かれているが、この配線では不可能なはず。

同じ輸入事業者の互換バッテリーで発火報告あり

Waitleyの互換バッテリーは国内企業の株式会社サンライズによって輸入・販売が行われています。

電気用品安全法で必要となる輸入事業者の届け出は行われているようですが、同事業者の互換バッテリーは火災事故を発生させているため注意が必要です。

バッテリーの性能・安全機能を検証

ここからは電気的な視点から性能や安全機能を検証します。主な検証内容として、販売ページ内に書かれているバッテリー容量の確認や保護機能の動作などを確認します。

バッテリー容量が公称容量よりも低い

実際に容量測定を行ったところ、放電レート0.5Cの条件下で実容量で4,500mAhしか確認できませんでした。

Waitley マキタ18V互換バッテリーは公称容量6,000mAhのバッテリーですが、実容量が異なるため景品表示法(優良誤認)に該当します。

セル内部抵抗の数値が純正バッテリーよりも悪い

電池内部に持つ抵抗成分を内部抵抗と呼びます。一般的に、内部抵抗が低いほど大電流を取り出すことができます。電動工具用途の場合、大電流のモータ負荷に使用されることが多いので、内部抵抗が低いことが求められます。

Waitley マキタ18V互換バッテリーのセル間内部抵抗をHIOKI バッテリーハイテスタBT3554で測定したところ、下記のような結果になりました。

  Waitley マキタ互換バッテリー (参考)マキタ BL1860B
#1 8.1mΩ 6.7mΩ
#2 8.0mΩ 6.7mΩ
#3 8.3mΩ 6.7mΩ
#4 8.1mΩ 6.6mΩ
#5 7.8mΩ 6.7mΩ
出力端子 42.2mΩ 36.5mΩ

純正バッテリーと比較すると内部抵抗値がやや高いので、大電流放電時には純正バッテリーほど性能を出せないものと予想されました。

バッテリーセル毎のばらつきも大きく、セルの選別工程の作業品質は甘いものと考えられ、セルアンバランスによる不良も発生しやすいと予想されます。

過放電保護遮断機能は未搭載

保護基板の外観確認から出力遮断機能は搭載していないものと予想していましたが、実際にリチウムイオンバッテリーの過放電領域まで放電を行ってみたところ、出力は遮断されずにそのまま深放電されてしまうことが確認されました。

充放電サイクル寿命で5回目でバッテリーセルが破損

リチウムイオンバッテリーは、充放電を繰り返すとセル内部の部品が劣化するため容量が低下します。

今回のマキタ互換バッテリーは充電9A(DC18RC)/放電3Aで充放電しながら放電容量を測定したところ、以下のような結果になりました。

充放電サイクルの測定では、充放電を5回行ったところで充放電が不可能となってしまいました。

これは6回目の充電を行ったところ、バッテリーセルの異常な発熱が確認されたため、安全のために一晩安置してから翌朝にセル間ごとの電圧を測定したところ、#3セルの電圧値が0Vになっていました。これによりバッテリーとして機能は果たさなくなったものとしてサイクル寿命計測は5回で終了しました。

真ん中に位置する#3のセルが過放電状態となり内部抵抗値も2倍近く上昇していた。恐らく、2本並列のうちどちらかのセルが内部ショートを起こしたことで、片方のセルから電流が逆流したことで発熱していたものと予想している。

ちなみにバッテリーセルが1つ動作不良になったことで充電は不可能な状態になったはずですが、販売ページにあるような自己診断機能のような表示は確認できませんでした。

Waitleyマキタ互換バッテリー検証の結果

ここまで複数の検証を行ったところ、結果として良いものではなく、電動工具用途のバッテリーとしていくつもの懸念点が確認されました。

バッテリー容量が公称容量よりも低く、優良誤認の可能性が高い

製品販売ページおよび製品ラベルには6,000mAh(108Wh)と記載されているものの、実測定におけるバッテリー容量が4,500mAh(81Wh)と低かったため、販売方法において法令に違反する可能性があります。

不当景品類及び不当表示防止法 第五条(不当な表示の禁止) 
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの。

に該当し、優良誤認表示に抵触するものと考えられます。

ちなみに今回計測した放電レート0.5Cは電動工具を想定する放電レートとしては非常に甘い設定値であり、理想的には7~8Cの放電レートで測定してもある程度の放電容量が確保できるようなバッテリー性能が望ましいと言えます。

過放電保護遮断機能がない

外観確認で想定していた通り、過放電に対する遮断機能は搭載していませんでした

マキタ18Vバッテリーは設計仕様の古いバッテリープラットフォームであるため、純正バッテリーは保護基板上にパワートランジスタを内蔵し異常を検知して通電を遮断する機能が必須なのですが、Waitleyのマキタ互換バッテリーには放電側に遮断機能が無いために条件次第で過放電状態に陥る可能性があります。

リチウムイオンバッテリーは、過放電状態が長く続くとバッテリーセル内部で金属が析出する現象のデンドライトが発生しやすくなると考えられており、過放電保護機能が不十分な場合、セパレータを突き破って内部ショートを起こす可能性が高くなります。

バッテリーセルがハイレート対応しているか怪しく、セル毎の特性の揃えも甘い

バッテリーセル毎の内部抵抗の測定から、電動工具に適用できるレベルのリチウムイオンセルは採用していないものと考えられます。

この辺りは価格相応なので当然の結果とも言えるのですが、セルの選別やバランスのとり方も甘いようで、特性のバラツキによるセルアンバランスが発生しやすいために充放電サイクル寿命も短いものと考えられます。

今回の充放電サイクル測定では、僅か5回の充放電で故障する結果となりました。この結果については、セルの個体差が引き起こした早期不良だとも考えられますが、根本的な問題としてバッテリーセルそれ自体が電動工具用途として適していないものが使われており、当然の結果と考えられます。

また6回目の充電ではバッテリーセルが触れないほど発熱したものの、充電器の過熱保護停止には至りませんでした。これは温度検出のサーミスタの位置が悪いために温度を検出しにくい状態になっているか、過熱状態の通信をバッテリーが発信しない仕様になっているものと考えられます。

マキタ互換バッテリーとして進歩もあるが購入は非推奨

公称する容量よりも低いバッテリーセルを採用しており、販売ページの内容で書かれている機能が実装しているか怪しい点が散見され、このバッテリーは景品表示の点で問題のある製品だと考えられます。またこの時点で自主検査でつけられるPSEマークの信頼性も甚だ疑問であり、販売ページの情報で信じられるものはほとんどありません。

バッテリー仕様としてもセルの品名が確認できずセル間のバランスマッチングも甘い傾向があるため、高レート充放電に対応しているか裏付けが取れないために純正バッテリーの代わりとして使うには高リスクです。

筆者は当サイト上で互換バッテリーに対して辛辣な評価を下していますが、本来はバッテリープラットフォームは純正メーカーが囲い込むよりも広く開放したほうがユーザーにとっても良い市場環境になるだろうとも考えており、サードパーティによる互換バッテリーそれ自体は容認しています。

とは言え、現在の互換バッテリーは、製品としての安全性や規格への適合・販売手法に問題があり、一般ユーザーへ販売できるレベルに達せていない現実的な問題があります。今回の互換バッテリーのような製品の販売が淘汰されない限り、互換バッテリーの存在を良しとすることはありません。

また、一般常識としての販売方法にも問題があり、輸入事業者の住所連作先や公式HPが存在していない、ロットや販売時期によって保護基板や搭載セルが異なるなど、リチウムイオン機器としての信頼性に足るものではありません。ユーザーが逐一検証を行わないと信頼性を担保できない状態で販売される製品は売り物として論外です。

数年前のマキタ互換バッテリーと比べれば質は上がってきているものの、それでもマキタ18V電動工具シリーズに使うためのバッテリーとして十分に安全性が配慮されている仕様ではありません。仮にバッテリー製品に対する基礎的な知見があり、性能やサイクル寿命・事故リスク等などを総合的に考慮できるなら「おすすめ」といえるような製品ではありません。

また、今回のサイクル寿命試験の結果では5回の充放電サイクルで故障する結果となりましたが、バッテリーの仕様そのものとして価格以下の格安互換バッテリーでしかない仕様であるため、ある意味で当然の結果であると言えます。偶然にも良い状態の製品を引き当てればもうちょっと寿命は長くなるかもしれませんが、製品仕様的に安全性があるとは言い難く、バッテリー発火による人命や資財消失のリスクを考えれば論外とも言える製品です。

総合的な評価としては、電動工具用途に耐えうるように作られているバッテリーパックではありません。購入や使用は控えることを推奨します。

まとめ

Waitley マキタ互換18Vバッテリー

VOLTECHNO製品評価 1 out of 5 stars (1 / 5)

マキタ18V充電式シリーズ互換バッテリー。購入・仕様は非推奨

良い点
悪い点
  • バッテリー容量詐称あり
  • 過放電遮断機能が無い
  • 過熱検知が弱い
  • セルの性能が悪い
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