小型屋外作業機械の製造販売を行う株式会社やまびこ(本拠地:東京都青梅市)は、2023年10月11~13日開催の第13回農業WEEK(会場:幕張メッセ)で同社が展開するバッテリーシリーズ ECHO 50Vシリーズの協業企業コンセプトモデルを展示した。
本記事はイベント取材時点の製品情報を紹介・解説するものであり、製品仕様や発売時期を保証するものではありません。
目次
ECHO DC50Vバッテリー 協賛企業コンセプトモデル
小型屋外作業機械の製造販売を行う株式会社やまびこは、2023年10月11~13日開催の第13回農業WEEK(会場:幕張メッセ)でECHO 50Vバッテリー共通化のコンセプトモデルを展示しました。
今回展示したのは、やまびこECHOブランドで展開している50Vシリーズのバッテリーを共通化して、異なるメーカー間で同じバッテリーを使えるようにするバッテリー共通化戦略の一環となるものです。
展示ブース内では協賛する4社の製品のほか、同やまびこブランドの新ダイワや共立の2ブランドを加えた計6機種の製品を展示しました。
KIORITZ ロボットスプレーカ
やまびこ展開の農業用管理機械ブランド KIORITZが展示したのはロボットスプレーカです。
現行モデルのロボットスプレーカは鉛バッテリーで動作する製品ですが、ECHO50Vバッテリー化によってバッテリーメンテナンス性の向上や軽量化が図れるとアピールしています。
新ダイワ バンドソー
こちらは同じくやまびこの作業工具ブランド 新ダイワのバンドソーコードレスモデルです。
バンドソーの消費電力は数100W程度であり、ECHO 50Vバッテリーのような高出力性能は必要としませんが、1作業あたりの切断作業時間は長い傾向があるため、大型バッテリーによる連続作業時間の向上は大きな魅力になるものと考えられます。
ちなみに定置型充電式バンドソーの業界動向に関しては過去に工機HDが関連特許を出願していましたが、こちらの新ダイワブランド品の方が製品化は早いのかもしれません。
オカネツ工業株式会社 バッテリー式耕うん機
小型農業機械の製造販売を行うオカネツ工業株式会社のバッテリー式耕うん機です。
母体となる製品は同社の電動ミニ耕うん機 Curvoです。24V 12Ahの鉛バッテリーを装着するモデルですが、ECHO 50Vバッテリーの対応によって軽量化とメンテナンス性の向上が実現できるとしています。
最近の充電式製品でで耕うん作業が行える主要な製品としては、マキタの充電式管理機 MKR001Gやカルチベータアタッチメント A-67309があります。
株式会社CuboRex ねこ車電動化キット
ねこ車の電動化キットで話題の株式会社CuboRexのねこ車電動化キットのECHO 50Vコンセプトモデルです。
先日発売したE-cat kit2はHiKOKI マルチボルトアライアンスの参画で話題になった製品ですが、それとは別にECHO 50Vバッテリーへの協賛も行っていたようです。
汎用性の点では今のところマルチボルトシリーズの方が優位ですが、農機方面ではECHO 50Vバッテリーも期待の高いシリーズなので、バッテリープラットフォームの用途的な親和性を考えるとこちらのほうが市場で優位となる可能性もありそうです。
株式会社ニッカリ 高設栽培用管理機
農林土木機械の製造販売を行う株式会社ニッカリが販売する高設栽培用の管理機です。
この製品は本体上部にホンダやヤマハの汎用エンジンを搭載し、それを動力源に動作する製品です。今回の展示品ではエンジンに変わって電動刈払機のモータユニットを搭載することで電動化を実現しています。
高設栽培に使う管理機は人の顔に近いところで動作するため、エンジン動力では作業者が排ガスの影響を受けやすくなるなどの諸問題もあるのですが、電動化によって作業者の負担が軽減できるとアピールしています。
吉徳農機株式会社 歩行溝切機
農業機械の製造販売を行う吉徳農機株式会社の歩行溝切機です。
元モデルでは汎用エンジンを動力源としているため、足場の悪い圃場でのエンジン始動によるトラブル時の不安定さが欠点となっていましたが、電動化によって振動や排出ガスによる作業負担を減らすことができ快適に作業を行えるようになります。
こちらの製品も電動刈払機のモータユニットを組み合わせることで電動化を実現しています。
バッテリープラットフォームは協賛企業の誘致合戦の時代へ
やまびこECHOブランドの50Vシリーズは比較的新興のバッテリーシリーズであるため、共通バッテリー化の思想は無いものと思い込んでいたのですが、今回のイベントで複数企業が絡むコンセプトモデルの展示が行われていたことに正直驚いています。
ちなみに、やまびこの役員人事を確認してみたところ、現在の上席執行役員が電動モジュール開発室長であることから、今回のバッテリー共通化の流れは全社的に力を入れて取り組まれている事例の1つであると予想しています。もしかすると、これから数多くの農機メーカーを取り込んで本格的なECHOバッテリー共通化に向けた展開が始まるのかもしれません。
現在は園芸や農機分野での脱エンジン化の勢いが強く、技術トレンド的にも汎用エンジンからモータバッテリーユニットへの移行がひとつの通過点となっているため、50Vもの高電圧バッテリーユニットはエンジンからの移行環境として大きな魅力になると考えています。
今回のECHO 50Vシリーズの共通バッテリー化に関しては、モータユニットの提供している製品があったのは結構好印象に感じている部分だったりします。農機分野では汎用エンジンを動力源としているメーカーも多いので、エンジンからそのままモータバッテリーユニットに換装できれば最小のコストで充電式化製品を構成できる利点があります。
ここ最近、バッテリーを自社で展開するメーカーは他企業へバッテリープラットフォームの提供を進める傾向が強く、他社動向としては、HiKOKI マルチボルトアライアンスやBOSCH AMPShare/POWER FOR ALL ALLIANCE、ホンダの汎用パワーユニット eGXなどがあります。
バッテリーの共通化と言っても、単にバッテリーを提供するだけではリチウムイオンバッテリーやモータに対するノウハウを持たないメーカーとして対応できないのが正直なところではないでしょうか。本格的にプラットフォームとして業界統一のバッテリー普及を進めていくためには、技術指導や制御回路配布、モーターユニットの提供などを含む包括的なプラットフォーム提供を行い、徹底した囲い込み戦略が肝要になってくると考えています。