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2024年1月17日

HiKOKI マルチボルトアライアンスを発表、コードレス化を促進する共通プラットフォーム

HiKOKI マルチボルトアライアンスを発表、コードレス化を促進する共通プラットフォーム

工機ホールディングス株式会社(本社:東京都港区)は、2023年3月31日にマルチボルトバッテリーの共通化を実現するバッテリーアライアンス マルチボルトアライアンスの立ち上げを発表した。バッテリーの提供と開発を効率化し、製品のコードレス化を促進するとしている。アライアンス立ち上げ時点のパートナー企業は14社。

HiKOKI マルチボルトバッテリーを搭載できる
「マルチボルトアライアンス」が開始

マルチボルトアライアンスとは、工機HDが展開するHiKOKIマルチボルトバッテリーを中核とする着脱式バッテリーの共通化アライアンスです。

HiKOKI マルチボルトバッテリーは、工機HDが自社工具ブランド HiKOKI向けに開発した汎用のリチウムイオンバッテリーです。今回のマルチボルトアライアンスに参画することで、HiKOKI以外の製品へのバッテリー搭載も可能となり、リチウムイオンコードレス化に伴うバッテリー開発や検証のコスト削減などが実現できます。

マルチボルトアライアンスで使われるマルチボルトバッテリーは、電動工具用途で使用されるバッテリーなので汎用性が高く、コンパクトサイズながらも1kWを超える出力に対応しており、耐水性・耐衝撃性にも優れ、1時間を切る急速充電機能などにも対応します。

ちなみに、このマルチボルトアライアンスは参画企業のコードレス製品化を促進する取り組みであり、個人ユーザーに対してのバッテリー取り付け寸法開示やバッテリーターミナル部品の販売を行うものではありません。

2023年4月時点のアライアンスパートナー企業は14社

2023年4月のマルチボルトアライアンス発表時のパートナー企業は14社です。

マルチボルトアライアンス公式ページには専用メール窓口もあり、今後のパートナー企業の新規参画にも期待されます。

バッテリーの共通プラットフォーム登場に期待はしたいものの…

今回のマルチボルトアライアンスに近い取り組みは以前から日東工器やTONEと行っていましたが、正式にアライアンスとして展開されたことは、業界のバッテリー共通化として今後に大きな期待があります。電動工具のバッテリーはメーカーごとに異なるバッテリー構造が乱立していましたが、もしかすると業界統一のバッテリーはマルチボルトバッテリーになる可能性があるかもしれません。

とは言え、これまで電動工具のバッテリーにフォーラム標準ディファクトスタンダードが生まれなかった要因として、リチウムイオンバッテリーの対応はそこまでの難易度やコストを必要としておらず、バッテリーセルのアッシ化生産技術の確立やプロテクトICの標準化によって低価格化も進んでいるため、業界的な統一規格を作る必要性が無かったためです。

この手のライセンスビジネスは、ライセンス提供側の人員コストや供給部品の卸売価格・バッテリー性能の高さからくるコストが普及の妨げとなります。総合的なコストを考えれば、アライアンスとして参画できる製品は市場売価10万円を超えるような専用機器に限られてしまいます。事実、マルチボルトアライアンスに対応している製品ほぼ全てが15万円を超える高価格帯の専用機器です。

家電領域やアウトドア分野の製品のような比較的価格の安い製品に対しては、これらのコストを製品価格に転嫁することが不可能であるため、中国企業のバッテリーパック購入や外注設計で対応した方が安く済んでしまう現実があります。

この辺りについては、工機HDも十分把握しているはずであるため、改めてマルチボルトアライアンスとしてバッテリープラットフォーム展開を始めたのであれば、プラットフォーム拡大に向けた何かしらのアクションを起こしてくれると期待したいところです。

ちなみに今回のマルチボルトアライアンスで残念だと思っている点は、ACアダプタ ET36AやBluetooth機能に全く触れていない点です。

AC電源からのコードレス化を初めて検討している企業は、稼働時間の長さや「やっぱりAC電源で使いたい」なユーザー要望を気にする印象があるので、ET36AによるAC電源兼用プラットフォームの強みをアピールしないのは残念と言えます。また、実際に対応できる企業は少ないかもしれませんが、Bluetoothバッテリー通信機能によるIoT関連企業の取り込みを全く考えていないページ構成ももったいないと思ってしまうポイントです。

また別の印象として、今回のアライアンスは、工機HDの経営戦略の急激な転換の結果のように見えている面があります。

過去の動向として、もし以前からマルチボルトアライアンスの構想があり、その準備があったとするなら、日東工器のコードレス電動工具シリーズをHiKOKIブランドとして発売する必要はありません。HiKOKIブランド化とマルチボルトアライアンスパートナーの製品は市場的に競合してしまうので、この辺りの配慮の無さを見ると、マルチボルトアライアンスは突発的に始まった企画と見ています。

少なくとも、2021年時点まではマルチボルトアライアンスの構想は無かったものと考えられる。

これはマルチボルトアライアンスに対する個人的な不満点ですが、アライアンスを象徴するアイコンや認証が存在していないのが残念な点です。このあたりはHiKOKIバッテリーが使えるだけの中国互換工具と判別しようがない状態なので、後々のアライアンス普及後やHiKOKIバッテリーの関連特許が切れたあたりに色々と弊害が出ててしまうのではないか?と考えています。

このあたりはmetabo CASやBOSCH AMPShareのように、アライアンスを表明するアイコンを策定して統率を取った方が良いと思うのですが、マルチボルトアプライアンスに参画するメーカーの中には何年も前の日立工機の時代から日立コードレス電動工具を母体として製品転用していた実情があることから、今更統制を取れない色々な事情があるのかもしれません。

海外市場で先行している共通バッテリープラットフォームのロゴ。アライアンス参画の製品にはこのロゴが付与されておりバッテリーの対応製品は一目でわかるようになっている。
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