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パワーMOS FETで作る電子負荷の製作

パワーMOS FETで作る電子負荷の製作

ACアダプタの性能やバッテリーの容量を確認したい場合、どのような方法でそれを実現すれば良いでしょう。

この記事ではそのような電源の性能確認や評価を簡単に行える機器「電子負荷」について紹介します。

どうやって電流を固定できる負荷をつくるか


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例えば手元に12V, 1A出力できるACアダプタがある場合、本当に1A出力できるのか、発熱させてもちゃんと動作するか、1A以上になったらどうなるかなど確認しなければならない時があります。

そんな時、簡単に必要な放電電流を得られるようにする装置が「電子負荷」です。電子負荷は簡易的なものから研究用の大容量ハイグレードなものまでさまざまな種類があります。

電子負荷が優れている点は?

電子負荷が抵抗負荷より優れているのは「電流を任意に変更できる」のと「電流が変動しない」点です。相反している事を書いてますが、1つずつ説明していきます。

電子負荷は対応する範囲内で電流を自由に設定する事ができます。ダイヤル1つで数Aから数十Aまで自在に調整できるので、この電源が何Aまで使えるのか確認したい!なんて用途に活用できます。

例えば、12VのACアダプタを評価している時、1Aのアダプタで進めていたのに、負荷側の都合が変わって2A必要となる場合があります。電子負荷であれば電流を設定するだけで必要な電流値に設定できます。

電池は放電して容量が少なくなると共に電圧が低下する。常に同じ電流を維持しなければバッテリー残量を図ることは難しい。
(参考:Panasonic 円筒形リチウムイオン電池 NCR18650PF

電子負荷のもう1つの特徴として、電流値をセットした後は電圧が変動しても電流が変わらない点です。例えば、バッテリーの容量を測定する場合には、常に同じ電流値で放電を行うことで放電時間を測定し換算値を算出する必要があります。

バッテリーは放電が進むと電圧が低下するので、常に同じ電流値で放電できる電子負荷でなければバッテリーの容量確認も難解な作業になってしまいます。

電子負荷の基本回路(電流型)

前置きはこれくらいにして、電子負荷についての簡単な原理を説明します。

電子負荷を構成する電子部品は「シャント抵抗」「オペアンプ」「パワートランジスタ」の3つです。

シャント抵抗で電流を検出する

シャント抵抗とは、電流を検出するための使われる抵抗器の総称です。抵抗器自体に厳密な区分はなく、電流検出に使われている抵抗をシャント抵抗と呼びます。

シャント抵抗は回路に影響が現れない程度の低い抵抗を使い、その電圧が降下した値を測定する事で電流値を算出します。

例えば、1Ωの抵抗を使うことでオームの法則は「E=I×1」となり電圧の測定値をそのまま電流値として読むことができます。実際のシャント抵抗では、更に低いmΩオーダーの値を使い、四端子法などで計測を行います。

オペアンプの仮想短絡の働きを定電流動作につかう

オペアンプの動作の概念には仮想短絡(イマジナリーショート)と呼ばれる考え方があります。仮想短絡とは、オペアンプの+入力と-入力の電位差をOUTの出力を変動させる事で同じ電圧にしようとする働きです。

オペアンプOUT端子を入力信号側に戻すと、+入力と-入力は同じ電位となった所で安定します。+と-の入力端子は同じ電位となるので見かけ上短絡しているように見えます。これが仮想短絡の簡単な説明です。

電子負荷の最小構成となる基本回路。Rを1Ωにすると電圧がそのまま電流値となり、Vrefの電圧と同じ電流値になるよう制御される。

電子負荷では+入力端子に任意の電圧を加え、-入力端子にシャント抵抗の電圧を入力してオペアンプに定電流となるように働かせています。

オペアンプは+入力と-入力を同電位にする仮想短絡となるように動き、+入力の電圧値と同じになるようOUT端子を出力を調節して-端子が+端子と同じ電位になった所で安定します。

トランジスタが電流を制限する

オペアンプの働きによって電流は制限されますが、実際のオペアンプは数Aもの電流を駆動する事は出来ないので、パワートランジスタを駆動させて負荷を肩代わりさせます。

実際に加えられる最大電流は、このトランジスタのスペックと放熱器で決まります。数Aの電流を流すだけでも放熱器が必須となるのでヒートシンクの大きさなど熱計算も必要になります。

パワーMOSFETによって使用できる電圧・電流が決定する。パワートランジスタは熱も発するため放熱器なども考えなくてはならない。
(参考:TOSHIBA TK100A06N1データシート

最小構成の電子負荷を製作する

電子負荷の組み立てにはブレッドボードを使用します。安定化電源には今回、負荷用1台、オペアンプの電源1台、リファレンス電源1台で3台使いますが、抵抗や配線で1台にまとめてもOKです。

回路は下図の回路を基本にそのまま電子部品ブレッドボードとワニ口で結線します。

オペアンプの配線

オペアンプは動作させるだけなら配線だけ動きます。2回路入りのオペアンプの場合、空いている端子はボルテージフォロワ処理を行います。

パワーMOSFETの配線

トランジスタにはNch パワーMOSFETを使用します。ゲート端子はオペアンプのOUT、ドレインは負荷側の+、ソースはシャント抵抗に接続します。ドレインとソースの接続を間違えるとFETの寄生ダイオードによって大電流が発生します。

放熱器には入手性の良いアルミフィンを使用して、MOSFETはねじ止めで固定します。トランジスタは裏側に電極が露出しているものもあるので、必要に応じて短絡しないよう絶縁シートなどで絶縁します。

シャント抵抗の選定

今回使用するシャント抵抗は1Ωと比較的大きめなので、許容電力が大きい抵抗を使用します。写真はメタルクラッド抵抗で50Wまで対応しているので、電子負荷の用途では最大50Aまで電流を流すことが可能です。

抵抗値を小さくすれば許容抵抗の小さい安価な抵抗を使用できますが、その場合はオペアンプ側で高精度な検出回路が必要となります。

電子負荷の動作確認

電子負荷として動いていれば、リファレンス電源の電圧値がそのまま電流となって放電されます。

左のリファレンス用電源をオペアンプに入力し、右の負荷用電源の電流値を読み取って動作を確認してみます。

(左)テスター:オペアンプに入力するリファレンス電圧 1.0V (右):負荷側の電圧と電流12V, 1.0A
リファレンス電圧1Vに対し、放電電圧1Aが維持されている。
(左)テスター:オペアンプに入力するリファレンス電圧 1.0V (右):負荷側の電圧と電流24V, 1.0A
負荷側の電圧を24Vに増加させたが、電流値は1Aを維持している。
(左)テスター:オペアンプに入力するリファレンス電圧 3.0V (右):負荷側の電圧と電流12V, 2.98A
リファレンス電源を調節して3Vにすると放電電圧も3Aまで上昇する。
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