2019年にBOSCHが新型のディスクグラインダー「X-LOCK」を展開しました。
ディスクグラインダー(ヘビーサンダー)の砥石取り付けはロックナット止めが主流でしたが、2020年にはマキタもX-LOCKに追従して100mm X-LOCKグラインダ「GA420D」を販売し、日本市場でもX-LOCKグラインダの普及が期待されます。
今回は、X-LOCKとはどのような製品なのか、X-LOCKの利点について、メーカーによる違いを解説します。
目次
ディスクグラインダの新構造「X-LOCK」とは
ディスクグラインダのディスク取り付け構造は長い間ロックナット止めによる砥石固定構造が主流でした。2019年になるとBOSCHがディスクの新しい取付構造「X-LOCK」を発表し、長年同じ構造が続いていたディスクグラインダーの大きな進化が始まろうとしています。
X-LOCKは2019年にBOSCHがグラインダを発表した構造で、2020年にはマキタもX-LOCKグラインダの展開に追従し、日本国内でもX-LOCKの普及が期待されています。
ワンタッチでディスク着脱、ディスク交換の作業性が大幅向上
X-LOCKとは、グラインダーの砥石を固定する新方式の名称です。
X-LOCKグラインダの場合、取り付けは「押し込むだけ」、取り外しは「レバーを引くだけ」のワンタッチ操作でディスクの着脱を実現しています。
従来のロックナット止めと比べると、着脱工具も不要なのが特徴で、ディスクの交換が一瞬で完了するので、1つのグラインダーで様々な作業を瞬時に切り替えられます。
例えば、消耗の激しい薄厚切断砥石を使用する作業や、研削と研磨を繰り返す頻繁にディスク交換を行う作業でディスク着脱の手間を大きく低減できます。
X-LOCKグラインダには、X-LOCK対応ディスクが必要
X-LOCKグラインダは新たな固定構造を採用しているため、従来のナット締め砥石を装着することが。X-LOCKグラインダには、X-LOCK対応ディスクが必要になります。
逆に、X-LOCK対応ディスクは従来のグラインダに装着できるため、X-LOCK対応ディスクは上位互換のような立ち位置になります。
X-LOCKディスクは調達に難あり。ネット通販頼み
X-LOCKグラインダは発表されてから1年しか経過しておらず、X-LOCK対応グラインダやアクセサリの普及は進んでいません。
特に、日本市場では元祖X-LOCKを展開するBOSCHの電動工具シェアが低いため、X-LOCK対応製品の流通はほとんど進んでいません。
2020年3月にはマキタもX-LOCKに参入したので、日本市場でのX-LOCK普及が期待されますが、従来方式のグラインダが既に市場に普及しているためX-LOCK普及には相当な時間がかかると推定されます。
現在、X-LOCKディスクグラインダやX-LOCKに対応するアクセサリを取り扱う販売店も数も少なく、ネットなどのECサイト販売が中心となっています。
「BOSCH」元祖X-LOCK、性能と価格で先行中
X-LOCKを2019年2月に提唱したのがドイツの総合機械メーカー「BOSCH」です。BOSCHは過去にも、ハンマやマルチツール・ジグソーなどの先端工具の新たな構造を提案し、普及させた実績を持ちます。
ボッシュは市場の新たな規格としてX-LOCKを定着させる方針を示しており、今後はX-LOCK未対応ディスクグラインダの製品開発数は減らしていくと明言しています。
マキタがX-LOCKに参入してから、BOSCHも日本市場でのX-LOCK普及に本腰を入れており、本体価格の値下げやX-LOCKアクセサリの付属など積極的な販売キャンペーンを推進しています。
125mmディスクグラインダーを中心に展開
BOSCHのX-LOCKは充電式125mmグラインダのみ展開しています。
日本では100mmグラインダが主流ですが、海外市場では125mmグラインダも多く普及しており、125mmディスクは研削量が2.5倍、カット数1.8倍・切断スピード1.4倍と高い作業性を実現できるサイズとなっています。
2020年4月時点では「GWX 18V-10SC」の1,000W相当のグラインダしか販売されていませんが、2020年5月には1,500W相当の高出力グラインダ「GWX 18V-15SC」、6月にはAC電源の「GWX 750-125S」の発売も予告されています。
BOSCHブランドのX-LOCKディスクは種類が豊富
初めにX-LOCKを提唱したこともあり、X-LOCK対応ディスクの取扱数はBOSCHが業界トップです。特に、BOSCHのX-LOCKグラインダ「GWX 18V-10SC」は変速機能に対応しており、様々な作業に対応できるよう研削砥石からワイヤブラシまで幅広いラインナップを揃えています。
「マキタ」取扱店の多さでX-LOCK普及を図る
特に、マキタのX-LOCKグラインダは、唯一となる100mm X-LOCKグラインダ「GA420D」を取り扱っており、100mmのグラインダに使い慣れた方も移行しやすいのが特徴です。
マキタブランドのX-LOCKグラインダや対応アクセサリは、発売直後の点もありラインナップでは不足している状態ですが、今後のマキタの展開によっては一気に普及が進むことが期待されます。
国内唯一の100mm X-LOCK「GA420D」
マキタは、100mm X-LOCKグラインダを。
一般的に普及しているのは100mmグラインダなので、125mmグラインダを扱ったことが無い方や、100mmのグラインダに使い慣れた方もX-LOCKに移行しやすいのが特徴です。
今後、マキタは日本市場で普及している100mmを中心に販売を進め、BOSCHは125mmグラインダを中心に展開すると予想されます。
現在の製品展開は2機種のみ、変速やAWS対応製品は未販売
2020年4月時点では、マキタのX-LOCKグラインダは「GA420D」と「GA520D」の2機種しか販売されていません。
どちらのグラインダも回転数固定・AWS非搭載モデルなので、今後のマキタX-LOCK対応グラインダのラインナップ拡充に期待したいところです。
参考リンク:マキタ、X-LOCK対応18V充電式グラインダ「GA420D」を発売。ワンタッチでディスク脱着|VOLTECHNO
100mm X-LOCKグラインダはバリエーションの少なさがネック
マキタの100mm X-LOCKグラインダ「GA420D」は、回転数固定の8,500min-1なので、その回転数に適したディスクの研削・切断・ダイヤモンドカッターの3種類しか取り扱いがありません。
100mm X-LOCKグラインダのGA420Dが発売して1か月程度経過していますが、現在でもマキタブランドのX-LOCKディスクの流通量は少なく、100mmのX-LOCKディスクが普通に購入できるようになるには、もう少し時間が必要と考えられます。
日本の砥石メーカーでは「日本レヂボン株式会社」がX-LOCK関連アクセサリ参入を予定しており1、今後の流通改善が期待されます。
X-LOCK対応グラインダ 製品一覧
現在、国内市場で購入できるX-LOCK対応グラインダはBOSCHが2機種、マキタが2機種で計4機種のX-LOCKグラインダが販売されています。
BOSCHは更なる製品展開も予定しており、2020年春に2機種の発売を予定しています。
[125mm・変速]BOSCH GWX 18V-10SC X-LOCK高性能モデル
製品名 | GWX 18V-10SC |
砥石径 | 125mm |
変速 | ○ |
回転数 | 4,500–9,000min-1 |
モーター | ブラシレスモーター |
スイッチ | スライドスイッチ |
バッテリー | 18V |
寸法 | 360×445×155 mm |
重量 | 2kg(バッテリ無) |
その他 | Connect対応 |
X-LOCKグラインダの中で、最も高いスペックを持つのがBOSCH「GWX 18V-10SC」です。
1,000W相当のブラシレスモーターを搭載しながらも、充電式125mm変速グラインダなので幅広い作業に対応し、BOSCHの無線機能「Connect」も装着できます。
BOSCHのX-LOCK普及キャンペーンによって、「X-LOCK スタートキット」の価格改定と付属品の拡充が行われ、18V, 8.0Ahバッテリーと充電器・切断保護カバー・砥石が14枚付属して約54,000円と高性能ながら高いコストパフォーマンスの大容量バッテリーグラインダです。
[125mm]BOSCH GWX 18V-8 低価格X-LOCK入門モデル
製品名 | GWX 18V-8 |
砥石径 | 125mm |
変速 | × |
回転数 | 11,000min-1 |
モーター | ブラシモーター |
スイッチ | スライドスイッチ |
バッテリー | 18V |
寸法 | 160×370×100 mm |
重量 | 2.6kg |
BOSCH 「GWX 18V-8」はX-LOCK対応グラインダの中で最も低価格なモデルです。
充電器・18V, 5.0Ahバッテリー・切断砥石カバー・砥石11枚が付属したセット仕様で約35,000円と低価格な価格設定なので「まずはX-LOCKを試してみたい」と考えているユーザーにオススメです。
[100mm]マキタ GA420D 100mmディスク対応X-LOCK
製品名 | GA420D |
砥石径 | 100mm |
変速 | × |
回転数 | 8,500min-1 |
モーター | ブラシレスモーター |
スイッチ | パドルスイッチ |
バッテリー | 18V |
寸法 | 376×117×147 mm |
重量 | 2.5kg |
X-LOCKグラインダで唯一100mmグラインダを販売しているのが、マキタの「GA420D」です。
マキタのX-LOCKグラインダは回転数8,500min-1で固定で固定されていて、研削・切断を対象にした仕様になっています。
スイッチはパドルスイッチ方式のみ展開されており、マキタの集じん機連動AWSには対応していません。
[125mm]マキタ GA520D マキタの125mm X-LOCK
製品名 | GA520D |
砥石径 | 125mm |
変速 | × |
回転数 | 8,500min-1 |
モーター | ブラシレスモーター |
スイッチ | パドルスイッチ |
バッテリー | 18V |
寸法 | 376×140×147 mm |
重量 | 2.6kg |
マキタのX-LOCKグラインダ、125mm品が「GA520D」です。
単純なスペックで比較するとBOSCHのGWX 18V-8と製品仕様に大きな違いが無く、販売価格も高めなので、「マキタバッテリーが使える」「パドルスイッチ仕様」以外の特徴がありません。
[125mm・変速]【2020年5月発売】BOSCH GWX 18V-15SC
製品名 | GWX 18V-15SC |
砥石径 | 125mm |
変速 | ○ |
回転数 | 3,400–11,000min-1 |
モーター | ブラシレスモーター |
スイッチ | スライドスイッチ |
バッテリー | 18V |
寸法 | – |
重量 | 2.2kg(本体のみ) |
BOSCHが2020年5月の発売を予定しているのが、1,500W相当のモーター出力を実現したフラッグシップモデル「GWX 18V-15SC」です。
18Vモデルでありながら、国内他社の36Vモデルに迫る高出力モーターを搭載しており、X-LOCK・幅広い変速レンジ・無線機能搭載と製品仕様上では国内最高の充電式グラインダとなるスペックを備えています。
[125mm・AC電源]【2020年6月発売】BOSCH GWX 750-125S
製品名 | GWX 750-125S |
砥石径 | 125mm |
変速 | ○ |
回転数 | 2,800–11,000min-1 |
モーター | ユニバーサルモーター |
スイッチ | スライド |
電源 | AV100V |
消費電力 | 750W |
寸法 | – |
重量 | 2.0kg |
充電式グラインダの展開ばかり進んでいますが、AC電源のグラインダも発売予定となっています。
BOSCH 「GWX 750-125S」は2020年6月発売です。
モーター出力は750Wと一般的なプロ向けグラインダ相当の出力ですが、幅広い変速レンジを持ち、125mmACグラインダながら重量2.0kgと比較的軽いのが特徴です。