電動工具を製造・販売する株式会社マキタ(本社:愛知県安城市)は、2024年5月に充電式フロアタッカST003Gを発売する。4MA線に対応する建築用のステープラーで、打ち込み方式にフライホイール方式を採用することで強力な打ち込み力と低反動を実現する。本体標準小売価格は89,800円(税抜)
目次
マキタ 充電式フロアタッカ ST003G
電動工具を製造・販売する株式会社マキタは、2024年5月に充電式フロアタッカ ST003Gを発売します。
ST003Gは、マキタ初の充電式フロアタッカです。
4mm MA線に対応するフロア張り向けの充電式タッカで、マキタ充電式モデル初となるフライホイール方式の採用によりハイパワーと低反動を両立しているのが特徴です。
1充電当たりの作業量はBL4025装着時で約1,100本。38mmまでのフロア用ステープルの打ち込み作業に対応します。
販売仕様は本体のみのST003GZで販売します。
- ST003GZ 本体のみ 希望小売価格89,800円(税抜)
ST003G 製品仕様
製品名 | ST003G |
---|---|
外観 | |
ステープル装てん数 | MA線フローリング:84 (1連) / 90 (最大) MA線:79 (1連) / 90 (最大) |
使用ステープルサイズ | MA線フローリング:幅4×長さ25~38 MA線:幅4×長さ16~38 |
隅打ち性能 | 壁際3.5mm |
打ち込み方式 | フライホイール |
バッテリー | 40Vmax |
重量 | 3.3kg |
寸法 | 324×104×302mm |
本体価格 | 89,800円(税抜) |
販売年月 | 2024年05月 |
製品の特徴
「フライホイール式の充電式電動釘打機」
打ち込み機構にフライホイール式を用いることで、ナラ材などの硬い材料へのステープル打ち込みにも対応できるハイパワーを実現します。
フライホイールは打ち込み部先端を打ち込むことで高速回転が始まり、トリガーを引くことでドライバがフライホイールに押し当てられ、摩擦によって先端に走り出してステープルを打ち込む構造になっています。
打ち込み時のフライホイール減速が反動を相殺
ステープル打ち込み時にフライホイールの急減速による慣性によって打ち込み方向にめり込む力が働くので、打ち込み時に発生する反動と相殺して低反動を実現します。
連発モード搭載で連続打ち・引きずり打ちに対応で素早く作業
連発モード搭載でトリガーを引きながら先端を押し込むことで連続・引きずり打ちにも対応し効率の良い作業を実現します。
壁際3.5mmの隅打ちで余裕の隅打ち
壁際でも打ち込める隅打ち性能3.5mmを実現、巾木が完全に隠れる余裕のある隅打ちが可能です。
防水防じん保護等級IP56に適合
防水保護等級IP56に適合。屋外作業での急な雨天時でも安心して使用できます。
打ち込みのフィーリングは未知、フライホイール方式は普及するか
今回のフライホイールを使った釘打ち機ははなかなか聞きなれない方式ですが、実はフライホイール方式は電動工具史の中でも比較的歴史の長い方式であり、特許としては2001年頃からSENCO (現 京セラグループ)が出願を始めており、マキタも2006年頃からフライホイールに関する特許出願を始めています。
また情報源はどこか忘れてしまいましたが、ニカドバッテリー時代の米国市場では、AC電源で動作するフライホイール方式のフレーミングネイラなども販売するメーカーがありました。
筆者が記憶している限り、フライホイール方式はマキタとして本機で初めての実用化であり、充電式の釘打機としても国内初となる製品と考えられます。ちなみに、海外市場のフライホイール採用電動釘打機では、米DeWALTが2020年頃からコイル釘対応のルーフィングネイラ DCN45RNを展開しており、最近でもフライホイール方式のフレーミングネイラ DCN930を発売しています。
マキタがスプリング式でも対応できるクラスのフロアタッカをフライホイール方式にした真意は不明ですが、好意的に捉えるのであれば、今後、より大きいクラスの釘打ち機もフライホイール方式で製品展開が期待できるようになったものと考えています。例えば、スプリング式はサイズに限界があり、エアスプリング式は銃刀法の解釈がかなり厳しい方式のため、マキタがフライホイール方式の電動釘打機を開発できるようになったことで、日本市場における充電式コイルネイラの製品展開もあり得ない話ではなくなりました。
そういう意味で、今回のマキタフライホイール釘打ち機の登場は、ある意味で、国内釘打機市場そのものにおけるターニングポイントにもなり得る製品と考えています。
さて、フライホイール方式の特徴としては、打ち込み力はスプリング方式よりも高く、打ち込み時のフライホイール減速によって打ち込み口方向に本体が前面にめり込む運動が働くので、打ち込みそれ自体のフィーリングとしては優れた方式となります。ただし、フライホイールを十分に回転させなければ打ち込み力を確保できないため、レスポンスには限界があり、バッテリの消耗も大きいのが欠点となります。
加えて、フライホイールはジャイロ効果による回転軸の位置を保つ性質を持つため、取り回しに関しては少し独特なフィーリングとなっているものと想定しています。試射などでは気にならないかもしれませんが、実用作業中などでは普通の釘打ち機とは異なる感覚があるかもしれません。
とは言え、新製品の電動釘打ち機に関しては、カタログスペックで記載されない性能となる連射速度や打ち込み力、重心位置、反動などが大きな要因となります。今回のフロアタッカに関しては重ね張りリフォームや強化石こうボード張りにも対応できることをアピールしているので、パワーの面では期待できる性能を持っているものと考えられます。
販売店や展示会などで試射して使い勝手を確認しなければならない製品と考えているので、機会があるならば購入前に触れた方が良い製品と言えそうです。