株式会社マキタは2018年6月に同社初となるバッテリー式の充電式シャーレンチ WT310DZを発売した。
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『WT310D』シャーレンチの充電式モデル
電動工具の充電式化を進めるマキタが2018年6月に追加したのはシャーレンチだ。
『シャーレンチ』と言えば鉄骨構造の建築物には必須の電動工具であり、シャーボルト(トリシア形高力ボルト)と呼ばれる専用のボルトを使って鉄骨の固定を行う建築工具だ。
従来のシャーレンチはシャーボルトのチップを破断させるために高トルクが必要になるため、AC電源での動作が一般的だったのだが、マキタは自社の持つ36Vシリーズにてシャーレンチのコードレス化を実現した。
電源環境に左右されないシャーレンチ
WT310DはAC電源を使わずバッテリーで動作するので、電圧降下の影響を受けなくなった。
電圧降下とは電源の延長コードを使用した場合に発生する現象で、コードが細く大電力の工具を使用した時ほど電圧が効果してしまう。電圧降下が発生してしまうと正常に動かなくなるだけではなく、モータ破損(電子制御工具など)に繋がる場合もあるため、太く重い延長コードを手配する必要がある。
今回のWT310Dはバッテリー化によって電源環境に左右されることがなくなり、漏電や高所作業での安全性が高くなっている。作業量もM22ボルトを約380本締め付けられる能力を持っており、作業量にも問題はないだろう。
防じん・防滴『APT』対応
コードレス化でブラシレスモータと言えば防じん・防滴機能の搭載だ。WT310Dは防じん・防滴『APT』に対応しており、野外作業においても雨や砂ぼこりの影響が抑えられている。
鉄骨締結を行う現場では野外作業が多くなるため、防滴対応することで野外作業でも使いやすくなるだろう。
コードレス化で2.3kgの重量増加
WT310Dはコードレス化によってコードがなくなった分、バッテリー2個分の重量が増加した。
マキタの同クラスAC電源シャーレンチ 6922NBが本体重量4.8kgだったのに対し、WT310Dはバッテリ含みで7.1kgと2.3kgの重量増になっているため、直ぐに「コードレスシャーレンチに置き換えよう」即断できない範囲となってしまっているだろう。
コードリールの手配や電圧降下の心配がなくなった分、取り回しには優れるようになったシャーレンチのコードレス化だが、この増加した重量をどのように捉えるかは好みが分かれてしまいそうだ
WT310D仕様
締付け能力 | 常用最大締付けトルク | |
HTB | SHTB | (N・m)[kgf・cm] |
M16・M20・M22 | M16・M20 | 804[8,200] |
回転数 | 本機寸法 | 質量 |
(min-1)[回転/分] | (長さ×幅×高さmm) | (kg) |
14 | 296×130×377 | 7.1 |
マキタ WT310D まとめ
36V化により大型工具のコードレス化は進みつつあり、今回のマキタWT310Dはシャーレンチをコードレス化した同社初となる電動工具だ。
シャーレンチはシャーボルト専用の用途が限られる電動工具ではあるが、マキタはこのような電動工具のコードレス化も展開することによって、『充電式工具のマキタ』のイメージを強く印象付ける事になるだろう。
現在の作業現場では、『安全性』が強く求められている。シャーレンチは従来コード付きのものしかなく、コードを足に引っかけたり漏電などによるトラブルで事故の原因となっていたため、充電式シャーレンチの仕様が義務付けられる現場も出てくるかもしれない。
電動工具のリチウムイオンバッテリー化は、性能面からみてまだまだ厳しい面もあるが、今後のバッテリー性能向上により大型工具の更なる能向上が見込めそうだ。