目次
コンクリートに穴をあける電動工具は2種類
コンクリートに穴をあけるための電動工具には、主に「ハンマードリル」と「振動ドリル」の2種類があります。
これらの電動工具は外見が似ているかもしれませんが、構造と機能面で大きな違いがあります。ここでは、それぞれのドリルの仕組みと特性を詳しく解説し、適切な使用方法と電動工具の選び方についても触れていきます。
「ハンマードリル」の仕組み
ハンマードリルの仕組みを一言で解説すると「ピストンを前後させて打撃を起こす」です。
ハンマードリルは、モーターの回転運動を前後運動に変換するレシプロベアリング(またはクランクシャフト)がピストンを摺動させて打撃を行う仕組みになっています。
ピストンの動きに連動してストライカがビットを叩いて打撃しているので、押し付ける力はほとんど必要なく、ビットの先端が触れる程度の接触でも強力な打撃でコンクリートに穴を空けられます。
下の動画は打撃機構を持つハンマの解説動画ですが、基本的な打撃の仕組みはハンマードリルもハンマも同じです。ハンマドリルの場合は、打撃機構にさらにモータの回転を伝える部品を搭載しています。
「振動ドリル」の仕組み
振動ドリルの仕組みを一言で解説すると「ラチェットの噛み合いで前後に振動を起こす」です。
振動ドリルはラチェットの歯の高さ分の振動量が発生するのが特徴です。ハンマードリルほど振動量はありませんが、その分細かい振動が素早く数多く発生するので、小さい振動量であってもビットをコンクリートに食い込ませて穴を空けられます。
ハンマードリルに比べて構造がシンプルなので、機械的な部品の体積が少なく部品の搭載も容易です。そのため、電気ドリルやドライバドリルなどの木工用途の穴あけ工具にコンクリート穴あけ機能を付加機能と搭載していることも多い電動工具です。
振動ドリルとハンマードリルのメリットデメリット
ハンマードリルと振動ドリルはどちらもコンクリートなどの石材穴あけ作業に使う電動工具ですが、その機能と使用目的には大きな違いがあります。以下にそれぞれの特徴とメリット、デメリットを挙げて説明します。
振動ドリルのメリット
振動ドリルのメリットは、価格の安さです。
コンクリートなどの石材に穴を空ける電動工具の中では最もシンプルで価格の安い電動工具なので、DIYなどのコンクリートへのちょっとした穴あけに使うにはコスト的に最適な電動工具です。
また振動ドリルは細かい振動で少しずつ先行する仕組みなので、タイル、レンガなどの脆くて柔らかい石材に対しての穴あけ作業にも向いています。
また、振動ドリルはドライバドリルやマルチインパクトに機能として搭載する製品もあるので、木工作業やボルト締結作業の傍らでコンクリート穴あけを行う作業シーンにも対応できます。
振動ドリルのデメリット
振動ドリルのデメリットは、穴あけ能力が低く作業性に優れないことです。
ラチェットによる振動を発生させるためには工具本体を押し付けなければならず、ある程度の荷重を加えなければ穴あけが進みません。そのため、上向きの穴あけ作業には向いておらず、横向きの場合でも十分な荷重を加えられない場合だと穴あけスピードが下がってしまいます。
振動ドリルは細径の穴あけ作業なら快適に穴を空けられるのですが、太径の穴あけ作業になると目に見えて穴あけスピードが落ちるので、アンカー下穴作業のような指先くらいの太さの穴を何本も連続して空けるような作業には不向きです。
ハンマードリルのメリット
ハンマードリルのメリットは、穴あけ能力が高く作業性に優れていることです。
ピストンがビットを叩いて打撃する構造なので、ビットが軽く触れる程度の押付力でも効率よく穴あけ作業を行うことができます。そのため上向きの作業時でも難なくコンクリート穴あけ作業を行えます。
最近のハンマードリルは防振構造も搭載しており、強力な打撃性能を持ちながらも振動が少なく使い勝手に優れているのも特徴です。振動3軸合成値比較だと、防振機能搭載のハンマードリルは振動ドリルの1/2~1/3程度の振動量に抑えられています。
また、中型クラスのハンマドリルであれば回転、打撃、回転打撃の3モード切替機能を持つので、回転打撃によるコンクリート穴あけ作業だけではなく、回転だけの木材や金属穴あけや、打撃だけの破砕や剥がし作業、溝堀作業など、締結作業から土木作業まで幅広い作業に対応できます。
ハンマードリルのデメリット
ハンマードリルのデメリットは製品価格の高さです。
ハンマードリルは電動工具の中でも特に複雑な機構を持つ製品なので、その価格も高めになっています。価格差は大体1~2万円なので、プロユースの充電式モデルだとバッテリーやブラシレスモータが高いので、そこまでの価格差を感じませんが、AC電源仕様のDIYグレードの製品では価格差が顕著に現れます。
また、ハンマードリルはSDS-plusと呼ばれるハンマードリル専用のビット仕様がほとんどで、事実上コンクリート穴あけ専用の仕様となっています。
メリットの項目で述べたように回転モードに切り替えれば木工作業も可能ですが、SDS-plusの木工ビットは種類が少なく、SDS-plusのチャック変換アダプタを使ってまで木工作業を行うユーザーも少ないので、ハンマードリルは実質的にコンクリート穴あけ専用の電動工具となっています。
他にも、ハンマードリルはピストンで打撃を行う仕組みなので、タイルなどの薄い装飾用石材やレンガなどに使うと割れてしまう可能性があります。
コンクリートなどの石材穴あけ作業であればハンマードリル一択
ハンマードリルは硬い素材に対して数多く穴あけするプロユースや重工業向け、振動ドリルはDIYや薄物石材の穴あけ、家庭用として適しています。
石材の穴あけ作業と言えば、ほとんどの場合コンクリート穴あけ作業を指すので、コンクリート穴あけの作業のみを考えれば、取り回しや性能の点からハンマードリル一択となります。穴あけ条件によっても変わりますが、ハンマードリルは振動ドリルの倍以上の速さでコンクリート穴あけ作業を行えます。
振動ドリルの利点は、構造がシンプルな軽さだったのですが、ここ最近はハンマードリルでも2kgを切る小型軽量モデルが普及が進んだため、細径のコンクリートの穴あけ作業においても振動ドリルを必要とするシーンはほとんどなくなりました。
振動ドリルを選ぶのは、DIY用で価格を抑えたい場合や、木工作業の傍らでコンクリート穴あけを行う作業シーンとなります。また、振動ドリルは細かい振動で少しずつ穴を空けるので、モルタルやレンガのような欠けやすく脆い材料の穴あけ作業に対して綺麗に穴を空けられる利点があります。