

木工DIYからプロ現場での使用など、一番最初に購入する電動工具は電動ドライバーだ思います。
電動ドライバーは用途に応じてさまざまな種類がありますが、その中でも広く使われているのが「インパクトドライバー」と「ドライバドリル」です。どちらもネジを絞めたり穴を開けたりする電動工具ですが、電動工具に慣れていない方は用途の使い分けに悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、そんなインパクトドライバとドライバドリルの違いや使い分けについて解説します。
目次
インパクトドライバ:長い木ネジやボルトの締結が得意なドライバ

インパクトドライバとは、主にネジを絞めるために使用する電動工具です。
形状の特徴としては、電動ドライバの中ではヘッド部分の形状が小さく、スリーブと呼ばれる構造で六角軸のビットを装着するのが特徴です。
インパクトドライバは、その名前の通りインパクト(衝撃)によって回転方向に打撃を加えて力強い締付力を可能にしている電動工具です。この打撃は回転を押さえつける負荷が加わった時に打撃構造が動くようになっています。
下は、インパクトドライバの部品が内部で動いている様子を観察した動画です。ビット先端の回転が止まると、打撃する部品が持ち上がって回転軸を叩いている様子がわかります。
インパクトドライバは、六角軸のビットをスリーブに取り付けるだけのシンプルな構造が特徴の電動ドライバーです。
ビットの装着はスリーブを手前にスライドさせてビットを差し込めば簡単に固定できます。ビットを交換する時もスリーブをスライドさせればビットが抜けるようになります。

インパクトドライバが得意とするのは、長い木ネジやボルトナットの締結作業です。長い木ネジなどもインパクトドライバの打撃力で下穴無しでも強力に素早く締付ができます。

パイプ材の固定にはボルトナットが使われることが多いので、こういう時もインパクトドライバが役に立ちます。レンチ締めでは1本1本の締結に時間がかかってしまいますが、インパクトドライバを使うことで素早く組立・解体が行えるようになります。

より大きな径のボルトを締結する時には、ソケットビットを装着して作業を行う場合もあります。特に、大径のネジボルト締めでは締め付ける時の反力も相当なものになりますが、インパクトドライバは細かい打撃を加えて締付を行うので、ネジ締め付け時の反力の影響が少なくなる特徴もあります。

インパクトドライバはプロ用途でも広く使われる電動工具です。小型で締結力が高いこともあり、大工作業から足場組立など幅広いプロユーザーがインパクトドライバを使用しています。特に、インパクトドライバは木造躯体の固定に使うコーチスクリューの締付や単管パイプの固定に使うクランプ締めなどで使われるシーンが多いです。

これらの太径ネジボルト類は締結に高いトルクが必要なのでインパクトドライバが必須。インパクトは細かい打撃によって締付を行うので、締付中の反力も少なく作業しやすいのもポイント。
ドライバドリル:大径の穴あけ作業や小ビス締結が得意なドライバ

ドライバドリルは、ドリルの名前の通り、穴を開けるために使用する電動ドライバです。
主な用途はドリルビットを装着した穴あけ作業ですが、ドライバドリルは負荷がかかった時に回転の伝達を止めるクラッチ構造を搭載しており、ネジの締付を防ぐ機能を搭載しています。
ドライバドリルのビット装着は、チャックと呼ばれる部品にビットを噛ませることで固定する構造になっています。チャックは手で回せるようになっていて、ビットを差し込んで手で締め付けることで固定ができます。

ドライバドリルが得意としているのは穴あけ作業です。穴あけ作業は材料に応じた適切な回転力を維持することが大事なので、強力で一定の回転力を持つドライバドリルは穴あけ作業に必須です。写真は木材に穴を開けていますが、鉄板や石材の穴あけもできます。

ドライバドリルのもう一つの機能がクラッチです。クラッチとは先端に一定の負荷がかかるとビット先端の回転の伝達を止めるです。
クラッチ機能を使うと、ネジが材料に着座した時に自動で回転を止めてくれるので、トリガ操作による手間がなくなり、ネジの絞め過ぎによる材料の破損やネジ山を壊してしまうトラブルも防げるようになります。

ドライバドリルはプロ用途だと、木造躯体の下穴あけやサイディング外壁の配管用の穴あけなど大きな穴あけ作業や木材以外の穴あけに使用します。鉄工穴あけや長尺ネジ締付などに使用するシーンもありますが、電気ドリルやインパクトレンチなど別の電動工具を使うユーザーも多いです。

小型クラスだとスリーブ構造のドライバドリルもある

ドライバドリルの特徴としてチャックでのビット固定を上げましたが、例外のドライバドリルもあります。
10.8Vなど小型バッテリーの充電式ドライバドリルではスリーブ構造のドライバドリルもあり、インパクトドライバと同じように六角軸のビットの装着が可能です。
このドライバドリルはチャック構造のように丸軸のドリルビットを装着できず、六角軸のドリルビットしか使用できませんが、全長が小さく取り回しに優れ簡単にビットが交換できる利点があります。
それぞれのドライバで、逆の作業を行うことも可能

それぞれ、インパクトドライバはネジ締め、ドライバドリルは穴あけが得意と説明しましたが、実際は逆の作業を行わせることも可能です。
例えばインパクトドライバにドリルチャックを装着すれば、ドライバドリルと同じ丸軸のドリルビットが装着でき穴あけ作業も行えるようになります。

逆にドライバドリルにプラスビットを装着すれば、ネジ締め作業を行うこともできます。

このように、インパクトドライバでも穴あけ、ドライバドリルでもネジ締めは可能ですが、作業としては使いにくい点もあるので注意が必要です。
例えば、インパクトドライバにキーレスチャックを付けて穴あけを行う場合、キーレスチャック装着時の軸ブレによって穴あけがブレてしまい、穴あけ中にインパクトの打撃が働くとドリルビットを破損する場合があります。
また、ドライバドリルで穴あけを行う場合、インパクトドライバと異なり回転力がそのままネジに伝わるため締結中には相当な反力が発生します。特に、長尺のネジや高トルクのボルト締結を行う場合、反力によってドライバドリル本体が振り回されて危険な状態になるため、ドライバドリルでの高トルク締結は原則としてサイドハンドルの装着が必須となります。

画像引用:マキタ 充電式ドライバドリル DF001G
ドライバには適材適所がある
インパクトドライバとドライバドリルは似ている電動工具ですが、それぞれ得意不得意があるので作業に応じて使い分けるのがおすすめです。
使い分けとしては、インパクトドライバは長い木ネジやボルトナット止めの作業に、穴あけ作業や小さいビスのネジ止めはドライバドリル、のように使い分けると適切な作業で失敗も少なくできます。
慣れれば18Vインパクトドライバで全て済んでしまうケースも
上はインパクトドライバとドライバドリルの対する一般論なのですが、最近の製品事情としては少し変わってきている部分もあります。
最近の18Vクラスの充電式インパクトドライバに関しては、昔に比べて性能が向上していることもあり、木工DIYに限れば、ネジ締めから穴あけまでインパクトドライバだけで完結できてしまう場合がほとんどで、ドライバドリルとの使い分けは要らない場合もあります。
インパクトドライバが万能ではないのは穴あけ作業において打撃する動作が不都合なためですが、実際のところ、最近の18V充電式インパクトドライバはよほどの負荷でなければ打撃が始まらない仕様になっており、SPF材へのネジ下穴空けやダボ穴程度であれば、打撃が発生すること無くドリルとして問題なく使用できてしまいます。
この辺りは回転数を調節するためのトリガ操作が必要な話になってしまいますが、DIYとして効率よく作業ができるのはインパクトドライバであり、DIYにおいてはインパクトドライバとドライバドリルを使い分ける必要がない場合もあるので「ドライバドリルが必ず必要」の場合でなければインパクトドライバ1本で対応してしまうのも一つの方法です。