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2022年12月「非純正バッテリ」の安全対策に向けた法改正
経済産業省は、2022年12月に電気用品の技術上の基準を定める省令内におけるリチウムイオン蓄電池に関する技術解釈基準を改正しました。(令和4年12月28日付け20221206保局第6号)
これまでのリチウムイオン蓄電池は技術基準として別表第九も使用できましたが、今回の改正によって別表第十二に一本化されます。
本改正の施行は2022年12月28日で、施行日から2年間の2024年12月27日までは移行期間として改正前の技術基準の別表第九基準が使用できます。
今回の改正でリチウムイオン蓄電池に求められる安全性が厳しく
今回の通達は、日本国内に流通するリチウムイオン蓄電池の安全性を高めるための改正です。
これまでリチウムイオン蓄電池製品では、別表第九の技術基準を採用することもできましたが、今回の改正でほとんどのリチウムイオン蓄電池製品が別表第十二 基準番号J62133-2(2021)への対応を求められます。
別表第十二改正の特徴としては、リチウムイオン蓄電池における全ての電池ブロックの電圧監視を行うことを明示している点です。そのため、本通達にある移行期間の終了後には、電圧監視無しや一部の電池ブロックしか監視していないリチウムイオン蓄電池は販売できなくなります。
電動工具メーカーが販売している純正バッテリーは、今回の改正前から全セル監視を入れているため、今回の改正による影響はありません。しかし互換バッテリーをはじめとする格安リチウムイオンバッテリーパックは、全セル監視を行っていない製品が数多く流通しており、そのような製品は規制対象となります。
実例として、nite(製品評価技術基盤機構) が2021年に実施した「非純正リチウムイオンバッテリーの試買調査」では、12試料のうち11試料が1ブロックのみの監視、1試料がブロック監視機能なしの結果となっており、このような互換バッテリーは全て規制対象となります。
PSEに適合していても、メーカー独自基準はまた別の話
DIY系動画配信者の方などは、互換バッテリーに対して「本当に危険があるなら無くなっているはず」と呑気な発言をしている方もるのですが、実態として互換バッテリーを扱うECプラットフォームによる自主規制や事故調査はほとんど行われておらず、今回のような法改正による規制も実際に事故が起きてからのケースがほとんどです。そのため、この手の製品から身を守るには自衛するしかありません。
とは言え、最近の互換バッテリー保護回路に関しては、安全性や保護機能を増した製品も出回っており、以前ほどの危険性は無くなっているのも事実です。しかしながら、それでも互換バッテリーは安全だと言い切ることはできません。
電気用品安全法が定めるリチウムイオン蓄電池の扱いは、主に保護回路構造の設計指針や衝撃落下等に対する安全基準を示すものであり、リチウムイオンセルのグレードやメーカーが独自に定める充放電仕様まで定めるものではありません。そのため、電動工具に適さないグレードのリチウムイオンセルや粗悪な中古セルを搭載する製品までは規制できないのです。
プロ用途の充電式電動工具に使われるバッテリーには、大電流放電と冷却構造を必要とするほどの高い充放電レートが求められます。しかし、互換バッテリーの大半はこのような高性能なバッテリーセルを搭載しておらず、純正バッテリーと同じように使用した場合、セル自体への過負荷による故障や発火のリスクを無視できなくなります。
さらに、過放電保護や過充電保護機能は各メーカーの独自仕様によって実装されているもので、その詳細な動作は正式に開示されているものではありません。互換バッテリーの保護動作は模倣によって実現されているもので、純正バッテリーと同等の保護機能を網羅できているとも限りません。事実、当サイトが行った互換バッテリー検証では、PSE的には問題なさそうでも、メーカーが独自に定めている保護機能として不十分なことを確認しており、製品事故のリスクが高いことが判明しています。
国内事業者が手掛ける互換バッテリーもあり、そちらは幾分かマシなようなのですが、メーカー仕様開示によって設計されたバッテリーパックというわけでもなく、実態は中国組立品を販売するだけの単なる輸入事業者であったり、パテント侵害の懸念があったりと色々と懸念点も多い製品なので、純正バッテリーを使用するのが良いでしょう。