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2024年12月2日

2022年改正の電気用品安全法(PSE)の移行期間が2024年12月に終了、リチウムイオン蓄電池は別表第12基準へ

2022年改正の電気用品安全法(PSE)の移行期間が2024年12月に終了、リチウムイオン蓄電池は別表第12基準へ

2022年12月改正のリチウムイオン蓄電池 別表第九の移行期間が終了

2022年 (令和4年)12月に改正された、電気用品安全法の技術基準を定めるリチウムイオン蓄電池の移行期間が2024年12月27日に終了します。

これまで、電気用品安全法におけるリチウムイオン蓄電池の技術基準は、別表第九または別表第十二のどちらかに適合していれば良いものでしたが、本改正によって別表第九は廃止となり別表第十二に一本化されます。この改正は2022年12月28日付けで施行されましたが、2年間の移行期間が設けられており、2024年12月27日をもって別表第九に適合したリチウムイオン蓄電池は規制対象となります。

別表第十二のリチウムイオン蓄電池に関連する技術基準としては、J-62133-2 ポータブル機器用二次電池の安全性-第2部:リチウム二次電池 JIS C 62133-2:2020が定められています。

別表第十二では、別表第九が明示していなかった全ての電池ブロックへの電圧監視を規定しており、リチウムイオン組電池のセルアンバランスによる過電流状態をより確実に検出できる構造を必須としています。

どんなリチウムイオン蓄電池が今回の改正対象となるか

今回の改正では、主にマキタ初期のリチウムイオンバッテリー保護基板の模倣保護基板を搭載するマキタ互換バッテリーが対象となります。

写真の保護基板は、過去に販売されていたマキタ互換バッテリーに多く見られた保護基板で、全セル総電圧と1ブロック電圧の2カ所しか監視していないタイプの互換バッテリーです。これは別表第十二が定める全ブロックの電圧監視を必須とする技術基準には適合しない製品となります。

また、バッテリーの構造的に別表第九基準ながらも別表第十二にも適合できるリチウムイオンバッテリーであったとしても、輸入事業者が手配した外部機関によるテストレポートが別表第九基準だった場合、本改正へ対応するために新しく別表第十二基準のテストレポート手配が必要になります。

とある互換バッテリー販売ページに添付されていたテストレポート
一番右の証明書がリチウムイオン蓄電池のテストレポート表紙と見られ、解像度が低く分かり難いが「検査の方法:別表第九 (Appendix 9 : Lithium ion secondary batteries)」と記載されている。

事実上のマキタとダイソン互換バッテリーを狙い打ちした法改正

今回の法改正には、2018年頃から多発したマキタ互換バッテリーやダイソン互換バッテリーの発火事故が背景にあり、事故多発から4年経過した2022年に法改正され、移行期間を経て2024年にようやく規制に至った製品となります。

当時のnite (製品評価技術基盤機構)の報告書には低品質な非純正リチウムイオンバッテリーが多数流通していることを報告しており、2020年以前は互換バッテリー業者によるDIY系動画配信者の紹介案件なども影響したためか、多数の低品質バッテリーが市場に出回っていたものと想定されています。

画像引用:非純正リチウムイオンバッテリーの事故について│nite

中国互換バッテリーメーカーも流石に当時の互換保護基板が良くないものと危惧したのか、2024年の現在においては全セル保護監視を組み込んだ互換バッテリーを設計するようになり、保護基板としての安全性はだいぶ向上しました。しかし、電気用品安全法が定めるリチウムイオン蓄電池の技術基準はあくまでも保護回路構造の設計指針や衝撃落下等に対する安全基準を示すものであり、リチウムイオンセルの充放電レートや電動工具メーカーが独自に定める充放電仕様まで定めるものではありません。

そのため、どんなに法改正が行われようとも電動工具に適さないグレードのリチウムイオンセルや粗悪な中古セルを搭載する互換バッテリーまでは規制できないのが実情です。

また、今回の法改正は輸入事業者が義務を負う準適合確認に関する改正であり、ユーザーが所持する既販売品や販売店に納入してしまった在庫品などは、既に市場に流れてしまった製品として規制の対象外となります。

今回の改正内容は一目で製品を見ただけでは別表第九なのか別表第十二なのか区別がつかないため、公的機関による購買調査または事業者への立入検査が行われないと市場からの一掃が難しいと想定しています。恐らく、移行期間が終了したとしても全セル監視を行っていない別表第九基準の互換バッテリーは多数出回ってしまうのだろうと想定しています。

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