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電動工具の互換バッテリーを分解、検証してわかる安さの理由

電動工具の互換バッテリーを分解、検証してわかる安さの理由

電動工具のバッテリーは非常に高価です。バッテリーの買い替え時などには通販サイトなどで販売されている互換バッテリーの安さにつられてしまい、つい購入してしまう方も多いと思います。

しかし、互換バッテリーは本当に安全な使用ができるのか不安な方も多いと思います。今回は、実際に互換バッテリーを購入してみて、その実情を検証してみます。

電動工具のバッテリーには高い放電性能が求められている

前回の記事でも解説しましたが、電動工具のバッテリーには、モバイルバッテリーやノートパソコンに使われるバッテリーよりも高い性能が求められています。

電動工具に使われるバッテリーは、数十分で放電してしまう高負荷な作業から、軽い負荷で長時間放電する用途など様々な使用方法が想定されています。そのため電動工具などに使われているバッテリーには大きな負荷が掛かる場合でも安全・確実に電力を供給できる高性能なセルが採用されています。結果として、この条件を満たせるバッテリーセルは非常に高性能で高価なものを採用せざるを得ないのが現状です。

しかし、ネット通販などで販売されている互換バッテリーは、電動工具の純正バッテリーとは比べ物にならないほど安い価格で販売されています。これは一体何故なのでしょうか。

  • 互換バッテリーの中身を開封し調査検証した
  • 互換バッテリーは表記とバッテリーの容量が合っておらず、容量が表記よりも少ない
  • 急速充電や大電流放電に対応したバッテリーセルを採用していない製品があり、使用自体が非常に危険
  • バッテリーセル毎の電圧監視が入っておらず危険性が高い
  • 互換バッテリーメーカーの電動工具使用への保証は不確かであり、それをユーザー側で検証する方法がない以上、互換バッテリーの使用は危険である

なぜ互換バッテリーは安いのか?

互換バッテリーは、主に通販サイトによって販売されており、電動工具メーカー純正のリチウムイオンバッテリーの相場よりも安価な価格で販売されています。

現在、電動工具に使用されている高出力なリチウムイオンバッテリーは、EV車・電動バイク需要から市場価格が高騰しており、原料のレアメタルの高騰も重なって値上がりが進んでいる現状です。

通販サイトで安価な価格で販売されている互換バッテリーが、価格を安くできる理由として下記の3点が推測されます。

  • ・容量を偽って販売(6.0Ah表記だが実質4.0Ahなど)
  • ・高レート充電・大電流放電に対応していないバッテリーセルを採用している
  • ・EVや電動バイクのバッテリーを電動工具用にリサイクルしている

リチウムバッテリーにおいて、予想される最悪のケースは、2番目の高レート充電・大電流放電に対応していないセルを採用していた場合です。この場合、電動工具への使用そのものが非常に危険なものになります。

急速充電未対応 互換バッテリーによる火災事故事例

過去には、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(nite)が提供する製品事故情報・リコール情報の2016年10月で、互換バッテリーによる火災が報告されています。(年度番号A201600532

本件は、Panasonic製電動工具への互換バッテリーを充電した際に発生した火災事故であり、この事故の原因として「純正バッテリー用の充電器は急速充電器のみであり、当該製品は急速充電に対応していなかった」との記述があります。

最終的に、この案件は急速充電に対応していないバッテリーセルの使用が火災の原因と結論づけています。

NITE 互換バッテリーの火災事故情報
過去にはPanasonicの互換バッテリーによる発火事故も報告されている。安価な互換バッテリーの使用による高い危険性を認識しなければならない。

互換バッテリーを分解してセルの品名を確認

互換バッテリーの開封

実際に通販サイトで販売されている互換バッテリーを分解して、リチウムイオンバッテリーセルの実態を検証します。通販サイトでは色々なメーカーの互換バッテリーが販売されていますが、レビューが多い2社をピックアップして互換バッテリーを検証してみます。

リチウムイオンバッテリーセルには、製造元品名などの情報が印字されており、品名からバッテリーセルのデータシートを参照するとバッテリーの容量や最大放電電流などを確認できます。

なお、リチウムイオンバッテリーの分解は大変危険な作業となります。不意のショートやセルの損傷により火災の原因にもなりますので真似はしないでください。

①M社製 マキタBL1860B互換バッテリー 結果:電動工具非推奨

電動工具互換バッテリー

レビュー一位のM社製の互換バッテリーです。外観についてはマキタの純正バッテリーとほぼ同じケースとなっています。ラベルには6.0と書いてあるものの、6.0Ahとは書いていないので表現上の抜け道になっているのかもしれません。

電動工具への装着感についてはスライドや端子の位置が少しずれているのか、途中で引っかかってしまいかなり強く押し込まないと装着できませんでした。この時点で端子を傷つけてしまうので割とアウトですが、とりあえず充電・放電共に可能でした。

電動工具互換バッテリーの分解
セルを取り出して品名を確認する。メーカーはk-techで品名はINR18650Pと記載されていた。

バッテリーセルのメーカーは中国k-techで、品名はINR18650Pでした。

データシートでバッテリーセルのスペックを確認すると、1セル当たりの容量は2000mAであり、このバッテリーの容量は2並列構成で4.0Ah分しかなく6.0の表記とは差異があります。

また、「充電電流」「放電電流」の項目を確認した所、この互換バッテリーに採用されているセルは共に電動工具の使用に適していないバッテリーセルと判明しました。

k-tech INR18650P 2.0Ahデータシート
データシートを確認したところ、MAX,Charge Current(最大充電電流)の項目が1C(2000mA)となっていた。このバッテリーは4.0Aまでの充電電流しか許容できず、DC18RCなどの充電器の充電電流9.0Ahで充電してはいけない。

このセルの最大充電電流は1C(2000mAh)と記載されており、2並列構成にしているバッテリーパックでも充電電流は4.0A以下にしなければなりません。マキタの急速充電器DC18RCでは9.0A充電、DC18RFは12.0A充電を行っているため、この互換電池を純正充電器で充電すると過電流充電となり非常に危険です。

②D社 マキタBL1860互換バッテリー  結果:電動工具非推奨

電動工具互換バッテリー

次はD社のバッテリーです。先ほどのM社のバッテリーとは微妙にバッテリーケースの寸法が異なるようで、装着はスムーズで、しっかりとした取り付けができました。

蓋を開けたところ、制御基板は①のM社の物と同一のものでした。これも、同一のベンダーが複数の互換バッテリー業者に配布しているものと考えられます。

バッテリーセルの品名確認ですが、セルは厚紙に覆われており品名を確認するのにも一苦労でした。3本目にしてやっと品名が記載されているセルに当たりましたが、肝心のセル製造元は記載されておらず詳細は分かりませんでした。

互換バッテリーの分解
分解確認したがメーカー名の記載がなく詳細は分からなかった。唯一、品名の20Rだけは確認できたが、製造メーカーまでは判明しなかった。ちなみに本来20RはSAMSUNG SDIの品名である。

唯一の手がかりとなりそうなのが「18650-20R」と記載された品名のみです。

20Rの名称はSAMSUNG SDI社製のバッテリーセルです。SAMSUNG純正品であればラベルにメーカーロゴが印字されているはずで、これはコピー品と推定されます。

SAMSUNGの20Rと同スペックのバッテリーセルの場合、セル容量は2000mAhで、セル当たりの最大充電電流は2C(4A)となります。このバッテリーパックの構成では8Aまで許容できるため、M社のバッテリーよりは安全かもしれません。しかし、品名が同じだけで実際のスペックは不明のためこれも危険なバッテリーと判断します。

直接構成のリチウムイオンバッテリーに必須となる電圧監視を行っていない

2つのバッテリーに共通した危険性が「セル毎の電圧監視がない」点です。

リチウムイオンバッテリーの充電は最大充電電圧を超えると危険性が高くなり、容易に発火や破裂などを引き起こす状態となります。

電圧を高くするために直列で構成されているリチウムイオンバッテリーの場合、セル間の電圧バランスが崩れることによる過充電や過放電を保護するためにリチウムイオン保護ICなど組み込むのを原則としており、リチウムイオンバッテリーには何重にも安全機能を備えた保護基板を搭載するのが一般的です。

これらの互換バッテリーには、セル毎の電圧監視機能が搭載されていないため、単セル過充電による発火リスクが非常に高くなっているものと考えられます。

互換バッテリーの高いリスクを理解しなければならない

通販サイトで評価の高かった互換バッテリーを購入してみましたが、残念ながら今回検証したバッテリーの中に、純正品相当として使用できる互換バッテリーはありませんでした。

特に、懸念していた最大充電電流については致命的です。

急速充電器で充電した場合、バッテリー設計上の最大電流値をオーバーしているため、バッテリーそのものの安全性が失われている状態になっています。

レビューで良く見かける「互換バッテリーはすぐ使用できなくなる」理由の一つには、バッテリーセルの充電電流条件を満たしていないのが関係している考えられます。 安全弁が開放されてバッテリーが使用不能な状態ならまだ良い方で、最悪の場合で発煙・発火等の危険性も考慮しなければなりません。

バッテリーは単純に「放電できた」「充電できた」だけでOKとなる製品ではありません。ユーザーが要求する性能を満たし、十分な安全性を考慮したバッテリーでなければいけません。

ただ、先述に「発煙発火の可能性がある」とは記載していますが、現在のリチウムイオンバッテリーの安全設計自体は非常に成熟しており、セル自体にも何重もの安全構造が入っているため、電動工具に適していないバッテリーセルを使ったと言って100%発煙や発火に至るわけではありません。

しかし、バッテリーセルの仕様と用途が根本的に違っている以上、非常に高いリスクは考慮しなければなりません。「納期間際で急にバッテリーが使えなくなったら?」「急に発火して現場検証で作業が止まってしまったら?」等の明確なリスクを考える必要があります。

ちなみに、「制御基板で充電電流をセーブしていて、バッテリー側で低電流充電されるのでは?」とも思い、DC18RCで充電電流を測定してみましたが、DC18RCの最大充電の9.0Aでしっかり充電されました。結局、危なかったので充電器からすぐ取り外しました。

互換バッテリーの充電電流測定
互換バッテリーの制御基板には充電電流を少なくするための仕組みが入っているのでは?とも期待したが、DC18RCの仕様上の最大電流9Aで充電されていた。データシート上では、このバッテリーの充電電流は4.0A以下でなければならないため、この状態で充電を続けるのは非常に危険だ。

互換バッテリーは電動工具の使用に適しておらず、リスク高

今回の検証内容から、互換バッテリーが安い理由は「容量詐称、及び低レート充電セル」を採用しており、低コストなバッテリーを採用しているためと判明しました。

互換バッテリーの最大の問題は、純正充電器の急速充電を許容できないバッテリーセルを使用している点になります。急速充電に耐えられないバッテリーセルでは、電析によるセル破損のリスクが非常に高くなり、早期のバッテリー故障を引き起こしたり、最悪の場合で熱暴走からの発火にまで至る可能性まで懸念されます。

電析が起こる原因と条件 起こさないための対応策は?|電池の情報サイト
http://kenkou888.com/category18/%E9%9B%BB%E6%9E%90_%E5%8E%9F%E5%9B%A0%E6%9D%A1%E4%BB%B6.html

互換バッテリーの中には、電動工具に適したバッテリーセルを採用したものも販売されているのかもしれませんが、同一メーカーによる継続的な販売が保証されておらず、販売中に中身のセルを別のものに変える可能性がある以上、やはり互換バッテリーはリスク高と考えます。

レビュー等では「互換バッテリーは個体差が大きくアタリハズレがある」等の内容も見られますが、互換バッテリーに使用されているバッテリーセルが電動工具用でない以上、全て「ハズレ」であると言わざるを得ません。

ちなみに、互換バッテリーには同一の制御基板が採用されており、特にマキタバッテリーの互換保護基板は相当数が出回っているようです。最近では、マキタバッテリー充電保護ボードの名称でネット発売までされるようになっています。

それでも互換バッテリーを長期間安全に使い続ける方法

さて、ここまで互換バッテリーの危険性は解説しましたが、この記事を見ている方などは既に互換バッテリーを使っている方もいると思います。購入してしまった互換バッテリーはどうすれば良いのでしょうか。

本記事の要点は、互換バッテリーは電動工具の大電流充放電に適していない点であり、低電流での使用する事に限ればある程度のリスクは抑える事ができると考える事ができます。

互換バッテリーでは大きな放電電流を必要とする丸ノコやグラインダー等の使用は控え、ライトやラジオなどの負荷が少ない製品へ使用にとどめた方が良いでしょう。

また、充電電流が低いマキタDC18SDやHiKOKI UC18YKSLなど低電流充電の充電器の使用に限れば、互換バッテリーの充電電流の条件は満たすことができます。ただし、これも互換保護基板にセル毎の電圧監視がないため、セル電圧バランスの崩れを含む他の要因の電池異常に対してはある程度のリスクが伴います。

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