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電動工具の互換バッテリーを分解、検証してわかる安さの理由

電動工具の互換バッテリーを分解、検証してわかる安さの理由

電動工具のバッテリーは非常に高価です。バッテリーの買い替え時などには通販サイトなどで販売されている互換バッテリーの安さに目移りしてしまい、ついつい購入する方も多いと思います。

しかし、互換バッテリーは本当に安全に使用することができるんでしょうか?今回は互換バッテリーを実際に購入して実情を検証してみます。

電動工具のバッテリーには高い性能が求められている

前回の記事でも解説しましたが、電動工具のバッテリーには、モバイルバッテリーやノートパソコンに使われるバッテリーよりも高い性能が求められています。

電動工具に使われるバッテリーは、数十分で放電してしまう高負荷な作業から、軽い負荷で長時間放電する用途など様々な使用方法が想定されています。そのため電動工具などに使われているバッテリーには大きな負荷が掛かる場合でも安全・確実に電力を供給できる高性能なセルが採用されています。結果として、この条件を満たせるバッテリーセルは非常に高性能で高価なものを採用せざるを得ないのが現状です。

しかし、ネット通販などで販売されている互換バッテリーは、電動工具の純正バッテリーとは比べ物にならないほど安い価格で販売されています。これは一体何故なのでしょうか。

  • 互換バッテリーの中身を開封し、調査検証する
  • 互換バッテリーは表記とバッテリーの容量が合っておらず、容量が詐称されている。
  • 急速充電、大電流放電に対応しておらず、使用自体が非常に危険
  • 中には電動工具に適した互換バッテリーもあるとも考えられるが、それをユーザー側で確認することは不可能である

なぜ互換バッテリーは安いのか?

2018年現在における互換バッテリーは主に通販サイトで販売されており、電動工具メーカー純正のリチウムイオンバッテリーの相場よりも安価な価格で販売されています。

電動工具に使用されている高出力なリチウムイオンバッテリーは、EV車・電動バイク需要の背景もあり市場からの需要も多く、原料のレアメタルの高騰も重なり値下がりが進まないのが現状です。

価格を極端に安くできない電動工具用純正バッテリーに対し、互換バッテリーが価格を安くできる理由として下記の3点が推測されます。

  • ・容量を偽って販売(6.0Ah表記だが実質4.0Ahなど)
  • ・高レート充電・大電流放電に対応していないバッテリーセルを採用している
  • ・EVや電動バイクのバッテリーを電動工具用にリサイクルしている

リチウムバッテリーにおいて、予想される最悪のケースは、2番目の高レート充電・大電流放電に対応していないセルを採用していた場合です。この場合、電動工具への使用そのものが非常に危険なものになります。

互換バッテリーを分解してセルのスペックを確認

今回は、実際に通販サイトで販売されている互換バッテリーを分解して、使用されているリチウムイオンバッテリーセルの実情を検証します。通販サイトには色々なメーカーの互換バッテリーが販売されていますが、今回は通販サイトでのレビューが多かった2社を選びバッテリーを購入してみました。

18650サイズのリチウムイオンバッテリーセルの場合、ラベル側面に製造元や品名、製造番号などの情報が記載されています。記載された品名からバッテリーセルのデータシートを参照することでバッテリーの容量や想定された用途などを確認することができます。

なお、分解は互換バッテリー品と言えども非推奨行為であり、分解自体も危険を伴う作業となります、保障対象外にもなるためメーカーサポートが受けられなくなります。

①M社 マキタBL1860B互換バッテリー

某通販サイトでレビュー上位のM社製の互換バッテリーから調査してみます。外観についてはマキタの純正バッテリーとほぼ同じ筐体となっています。ラベルには6.0と書いてあるものの、よく見ればAhの単位については記載されていません。

工具への装着感については純正より少し硬く、充電器への取り付けもスムーズにはいきませんが、とりあえず充電・放電共に可能でした。

この互換バッテリーに使われている制御基板は、マキタの互換バッテリーによく採用されている基板が使用されていました。互換バッテリーの制御基板はどの互換メーカーの物でも同じ基板なので、同一ベンダによるものと推測されます。最近ではマキタバッテリー用のモジュール基板と言うものまで単体で発売されるようになっており、かなりの量が市場に流通しているようです。

電動工具互換バッテリー
セルを取り出して品名を確認する。k-techというメーカーで品名はINR18650Pと記載されていた。

バッテリーセルはk-techと言うメーカーで、INR18650Pと言う品名でした。

データシートでバッテリーセルのスペックを確認すると、1セル当たりの容量は2000mAであり、このバッテリーの容量は2並列構成で4.0Ah分しかないということになります。6.0Ahと書かれた販売表記と実際の容量に差異があります。

また、バッテリーセルのデータシートを参照したところ、懸念していた通り、電動工具には適していないセルであることが判明しました。

データシート上では、このセルの最大充電電流は1C(2000mAh)となっており、2並列構成にしたバッテリーでも充電電流を4.0A以下にしなければなりません。マキタの急速充電器DC18RCなどは9.0Aで充電を行うため、過電流充電となり大変危険です。

結論としては、通常使用だけでも大変危険であり、電動工具のバッテリーとして使用することはほぼ不可能であると考えます。

データシートを確認したところ、MAX,Charge Current(最大充電電流)の項目が1C(2000mA)となっていた。このバッテリーは4.0Aまでの電流しか許容できず、DC18RCなどの充電器の充電電流9.0Ahはとても許容することができない。

②D社 マキタBL1860互換バッテリー

次はD社のバッテリーです。先ほどのM社のバッテリーとは微妙にケースが異なるようで、装着は割とスムーズで、しっかり取り付けることができました。

蓋を開けたところ、制御基板はM社の物と同一のものでした。これも、同一のベンダーが複数の互換バッテリー業者に配布しているものと考えられます。

バッテリーセルの品名確認ですが、セルは厚紙に覆われており品名を確認するのにも一苦労でした。3本目にしてやっと品名が記載されているセルに当たりましたが、肝心のセルの製造元は記載されておらず詳細は分かりませんでした。

分解確認したがメーカー名の記載がなく詳細は分からなかった。唯一、20Rセルと言う品名は分かったが、20Rは本来SAMSUNG SDIの品名である。

唯一の手がかりとなりそうなのが「18650-20R」という品名のみです。

20RはSAMSUNG SDI社製のバッテリーに同じ品名のバッテリーセルが存在しています。SAMSUNG純正品であればメーカーのロゴがあるはずなので、これはコピーバッテリーか同等品と推定します。

SAMSUNGの20Rと同スペックのバッテリーセルである場合、セル容量は2000mAhでありセル当たりの最大充電電流は4Aとなります。このバッテリーの構成では8Aまで許容できることになり、電動工具への使用は問題なさそうです。ですが、品名が同じだけであってSAMSUNG製のセルではないので実際に問題ないのかは不明です。

互換バッテリーの高いリスクを理解しなければならない

通販サイトで評価の高かった互換バッテリーを購入してみましたが、残念ながら今回検証したバッテリーの中に、純正品相当として使用できる互換バッテリーはありませんでした。

特に、懸念していた通り、最大充電電流については致命的です。

急速充電器で充電した場合、バッテリー設計上の最大電流値をオーバーしているため、バッテリーそのものの安全性が失われている状態になっています。

レビューで良く見かける「互換バッテリーはすぐ使用できなくなる」という理由の一つには、バッテリーセルの充電電流条件を満たしていないことが関係している考えられます。 安全弁が開放されてバッテリーが使用不能な状態ならまだ良い方で、最悪の場合では発煙・発火等の危険性も考慮しなければなりません。

バッテリーは単純に「放電できた」「充電できた」だけでOKとなる製品ではありません。ユーザーが要求する性能を満たし、十分な安全性を考慮したバッテリーでなければいけません。

ただ、先述に「発煙発火の可能性がある」とは記載していますが、現在のリチウムイオンバッテリーの安全設計自体は非常に成熟しており、セル自体にも何重もの安全構造が入っているため、電動工具に適していないバッテリーセルを使ったと言って100%発煙や発火に至るわけではありません。

ですが、バッテリーセルの仕様と用途が根本的に違っている以上、非常に高い可能性のリスクはどうしても考慮しなければなりません。万が一「納期間際で急にバッテリーが使えなくなったら?」「急に発火して作業を止めざるを得なくなったら?」等の明確なリスクを考える必要があります。

ちなみに、「制御基板で充電電流をセーブして、低電流充電されてるんじゃ?」とも思い、DC18RCで充電して充電電流を測定してみましたが、そんなことはありませんでした。DC18RCの最大充電の9.0Aでしっかり充電されています。結局、危なかったので充電器からすぐ取り外しました。

互換バッテリーの制御基板には充電電流を少なくするための仕組みが入っているのでは?とも期待したが、DC18RCの仕様上の最大電流9Aで充電されていた。データシート上、バッテリーの充電電流は4.0Ah以下でなければならないため、この状態で充電を続けるのは非常に危険だ。

それでも互換バッテリーを長期間安全に使い続ける方法

さて、ここまでで確認できた互換バッテリーの問題点は「容量詐称」「急速充電できない」の2点です。

1つ目の容量詐称については価格相応の品として許容してもいいのかもしれませんが、2つ目の「急速充電に対応していない」という問題はバッテリーの発煙・発火にも繋がりかねません。

じゃあ互換バッテリーは全く使用できないのか?というわけでもありません。一応ではありますが、原理上、充電電流が2.0A付近の通常充電の充電器を使うことで、互換バッテリーを安全に充電できるものと考えられます。充電器の品名としては、マキタ DC18SD、HiKOKI(旧 日立工機)UC18YKSLなどが相当します。

また充電電流が低いバッテリーセルは、大きな負荷も許容できません。丸ノコやグラインダー等の電流が大きい電動工具への使用は控え、インパクトドライバーやライト、ラジオなどの負荷が少ない製品へ使用が推奨されます。

結論|互換バッテリーは表記詐称品が多く、実使用にも耐えられるものではない

今回の検証内容から、互換バッテリーの多くは「容量詐称、及び低レート充電セル」を採用しているために安くなっているものと推定されます。

特に互換バッテリーの最大の問題は、電動工具の純正充電器の急速充電を許容できないバッテリーセルを使用している点になるでしょう。急速充電に耐えられないバッテリーセルでは、電析によるセル破損のリスクが非常に高くなり、早期破損や最悪の場合で熱暴走からの発火にまで至る可能性まで懸念されます。

電析が起こる原因と条件 起こさないための対応策は?|電池の情報サイト
http://kenkou888.com/category18/%E9%9B%BB%E6%9E%90_%E5%8E%9F%E5%9B%A0%E6%9D%A1%E4%BB%B6.html

互換バッテリーの中には、電動工具に適したバッテリーセルを採用したものも販売されているのかもしれませんが、ユーザーでそれを証明・検証する方法が限られている以上、互換バッテリーの使用には常に高いリスクが付きまといます

レビュー等では「互換バッテリーは個体差が大きくアタリハズレがある」等の内容も見られますが、互換バッテリーに使用されているバッテリーセルが電動工具用でない以上、全て「ハズレ」であると言わざるを得ません。

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