ハンマードリルとは、コンクリートの穴あけやハツリ・溝掘りなどに使用する電動工具です。コンクリートの穴あけには必要不可欠な電動工具です。ハンマードリルは、コンクリートへの下穴あけやドリル作業、ネジ締めからハツリ、ランマ作業にまで使える多機能さが特徴で、現在の建築現場に無くてはならない電動工具です。
目次
ハンマードリルとは
ハンマードリルとはコンクリートに穴をあける電動工具です。名前だけは知っているという方も多いと思いますが、ハンマードリルは今や建築現場に無くてはならない工具です。
コンクリートへの穴あけも「ビットを当てて回転させれば穴は開くんでしょ?」と思う方も多いと思いますが、コンクリートは木や鉄のように回転だけで穴をあけることはできません。コンクリート穴あけには垂直方向の運動が必要で、ハンマードリルにはビットの回転運動に加え垂直方向の打撃ができる機能を備えており、径の大きなコンクリート穴あけでも効率的に作業を行うことができるようになっています。
ハンマードリルでできること
「コンクリートに穴あけするの?」と思う方も多そうですが、コンクリートを使用した建物にハンマードリルは必須の工具になっていて、主にコンクリートに直接構造物を固定するためのアンカーを打ち込むのに使用します。コンクリート以外にも、レンガや石材、タイルへの穴あけなど様々な材料への穴あけができます。
回転と打撃を同時に行うハンマードリルですが、大型のハンマードリルの中には打撃のみのモードもあり、ビットをブルポイントに変えることでハツリ作業まで行うことができます。
もちろん、回転のみのモードにすることで木材や金属への穴あけもできるため、ハンマードリルは最も多用途に活用できる電動工具と言えるのです。
コンクリートにボルトを固定するアンカー下穴空け
コンクリートのトンネル照明など、直接コンクリートに設置されている構造物はどうやって固定されているのでしょうか。コーススレッドによるネジ止めでしょうか、それともタップによるねじ穴の形成?
正解は、アンカーと呼ばれる専用の金具でボルトを固定してコンクリートへのねじ止めを行っています。
このアンカーは、コンクリートに開けた穴に差し込んで内部で膨らませることでコンクリートと密着させる金具で、目に振れることはないですが、構造物の設置や耐震補強など使われており、現在の建築物にはなくてはならない金具です。
大きな穴を開けたいときはコアドリルを使う
ハンマードリルの最大穴あけ径は、後述のSDS-MAX規格のシャンクを使っても最大でΦ40mmまでしか穴をあけられません。水道管やエアコンのダクト向けにもっと大きな穴をあけたい時はどうすれば…?と思う方もいると思います。
実は、40mmなんて大きなビットはアンカー打ち込みでもなければ使うことはありません、実際にダクトや管を通す場合に使う工具はコアドリルなんです。コアドリルはホールソーと同じくり抜く構造になっており、コンクリートに負けないよう先端切削部のダイヤモンド粒子によってコンクリートを削って穴を開けていきます。
注意点として、コアドリルの穴あけには打撃を加えてはいけません。これは逆に、ヒューム管や壁へ通し穴を空ける作業には通常の電気ドリルとコアドリルの組み合わせでも十分なのです。
振動ドリルとの違い
マキタ 震動ドリル コンクリ16mm 鉄工13mm 木工30mm M816K
コンクリートの穴あけを行う電動工具に振動ドリルがあります。
同じ作業を行うドリルでも、振動ドリルはラチェットの噛み合いによる細かな振動で、ハンマードリルはピストンとストライカの打撃で大きな打撃力を生み出しており、構造的に大きな違いがあります。
振動ドリルは構造上、ラチェットの振動を使用しているため作業者の荷重を使用しなければならず、ある程度の押し付け力を必要とします。そのため荷重を加えにくい方向の穴あけには向いていません。振動ドリルでは下方向への細径穴あけが最適な作業になります。
ハンマードリルは、ピストンがストライカーを叩くことで工具の中に強い打撃力が発生するため押し付けを必要としません。極端な話、ビットの先端が振れているだけでも穴が開いていきます。取り回しのいいハンマードリルは上向き・横向きの穴あけに適しています。
ロータリハンマドリルとの違いは?
HiKOKI(旧日立工機) 18V コードレスロータリハンマドリル 充電式 6.0Ahリチウムイオン電池、急速充電器、ケース付 DH18DBL(2LYPK)
HIKOKI(旧日立工機)のみ、最大穴あけ径24mm付近の中型ハンマードリルをロータリハンマドリルと呼称しています。
打撃のみ・回転のみに切り替えられる多機能ハンマ
コンクリートの穴あけに使うハンマードリルは打撃+回転が基本ですが、ハイエンドの機種では打撃のみ、回転のみの切り替えも可能です。
回転のみではチャックを装着することで木材や金属への穴あけ作業も可能で、打撃のみにすればブルポイントと呼ばれる破砕専用のビットを付ければ、ハツリ作業や溝掘りまで多彩な作業を行うことができます。
ハンマードリルのビット規格は3種類
ハンマードリルのビットはサイズ毎に3種類あり、穴あけの径で対応するビットが決まっています。この3種には互換性がないため、実施する作業や対応しているハンマドリルをよく確認してからビットを選びましょう。
- 六角軸シャンク
六角軸シャンクには、数サイズの種類があり、インパクトで使う6.35mm、ハンマードリルで使う13mm、ハンマーで使う17mm,21mm,30mmのビットがあります。
ハンマードリルで使われるのは13mmのものが一般的で、17mm以上ではブルポイントやチゼルなどハンマーで使うビットのみとなります。
- SDS-Plusシャンク
BOSCHが開発したハンマードリル専用の装着機構が “Steck, Dreh, Sitzt” シャンクです。ドイツ語で「差し込み、回し、固定する」を意味し、略して”SDS”と呼ばれています。言葉の通り、差し込んで回すだけでビットが固定される構造となっており、固定にはスチールボールが使用されています。
SDS-Plusシャンクの差し込み部分の径は10mmで、穴あけ径がΦ26mm付近までのビットが販売されています。取り扱うメーカーは少なくなりますが32mmのビットも販売されています。
- SDS-MAXシャンク
SDS-Plusシャンクを大きくして、大きな穴あけに対応させたのがSDS-MAXシャンクです。シャンクの差し込み部が長く、太くなったことでビットの振れを防止して確実な位置決めがしやすくなった特徴があります。
SDS-MAXのシャンクの差し込み部分の径は18mmに太くなり、最大穴あけ径もΦ40mmまでのビットが販売されています。
木材・金属の穴あけには変換アダプタを使う
Bestgle ドリルチャック 2-13mm キーレスドリルチャックアダプター キーレス ドリルチャック
木材や金属には打撃が必要ないので、高性能なSDS-Plusシャンクに対応した木材・金属ビットは多くありません。
ハンマードリルで回転のみの穴あけを使う場合は、SDS-Plusシャンクに対応したドリルチャックがあると作業の幅が広がります。
ハンマードリルを使うときの注意点!
ハンマードリルは、電動工具の中でも特に振動が激しい工具です。ハンマードリルを使う作業者特有の職業病として、白蝋病(振動障害)があります。
強い振動を伴う作業を長時間行うと、が手の血管の痙攣性収縮及び手指の白色化現象(レイノー現象)が起り、慢性的なしびれと感覚の鈍化、握力の低下や疼痛を生ずる。病状が進行すると手首や肘、肩といった関節にも同様の症状を発生します。白蝋病に根本的治療法は存在しないため、根本的には作業時間を少なくしたり、振動の少ないハンマードリルを使用するなどの対策が必要となります。
日本電機工業会ホームページ:「周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値」による振動障害予防対策について
厚生労働省 パンフレット:「振動障害の予防のために」日振動ばく露量A(8)は、厚生労働省の下記ウェブサイトの「日振動ばく露量A(8)の計算テーブル」で求めることができます。
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/090820-2a_0004.pdf
作業中の粉じんも注意
コンクリートの穴空けは、木材や金属とは比べ物にならないほど大量の細かい粉じんが発生します。
コンクリート紛を吸い込むと、微小な粉が肺の奥深くまで侵入し、じん肺と呼ばれる肺機能の低下を引き起こす疾患を引き起こします。このコンクリート紛は非常に細かく、風邪の時に使う簡易マスクでは防ぐことはできません。コンクリート作業を行う場合は、作業環境に合った防じんマスクを装着するようにしましょう。
可能であれば周囲への環境も考慮し、住宅地や屋内の作業では周りに影響が出ないよう、集じん機が取り付けられるタイプのハンマを選ぶとよいでしょう。