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「価格破壊」三菱商事で揺れた 第10回 WIND EXPO
スマートエネルギーWeek 2022内で第10回 国際風力発電展~WIND EXPO 2022~(2022年3月16日~18日)が東京ビッグサイトで開催されました。
今回、WIND EXPO(風力発電展)を見に行った最大の理由が、2021年12月末に秋田県と千葉県の洋上風力発電プロジェクトに三菱商事連合による価格破壊入札です。三菱商事は圧倒的な低価格入札によってレノバ・東京電力をはじめとする競合に全勝し、再生エネルギーや投資家界隈を騒然とさせました。
洋上風力は広範な海域を持つ日本における次世代エネルギー政策の柱と成り得る存在の1つであり、価格破壊とも評される三菱商事の入札は、国内の洋上風力発電の動向において無視できない出来事と捉えています。これは建設産業にとっても大きな影響を与えるものと考えています。
筆者は、国内の建築向け電動工具市場は住宅新規着工件数やリフォーム需要の低迷から中長期的に比較的悲観な見通しになると認識しているものの、大型建造物・産業プラント向けの電動工具に対しては、今回の三菱商事入札を切っ掛けに国内の洋上風力産業が活発化し、上向きの影響を与えるケースもあり得るのではないかと期待しています。
前置きが長くなりましたが、今回のイベントレポートでは、風力発電や大型建造物の施工に欠かせない充電式ナットランナーの最新モデルを展示した2社をレポートします。
- 洋上風力発電が建設業にもたらすもの|建設IT NAVI
- 三菱商連合が洋上風力発電事業を総取り、政府公募で競合を圧倒|Bloomberg
- 鹿島が洋上風力3プロジェクトを「独占」の内幕|東洋経済オンライン
- レノバ株大幅安、時価総額約1900億円吹き飛ぶ-洋上風力選定逃し|Bloomberg
- No.285 検証洋上風力入札② 低価格応札の要因と国内産業化実現の危機|京都大学大学院経済学研究科
HYTORC(ハイトーク) ユネックス合同会社
産業用ボルト締め工具ブランド HYTORC(ハイトーク)を展開するユネックスの日本支社 ユネックス合同会社のブースでは、電動トルクレンチ LION GUNを展示しました。
LION GUNはハイトークワッシャーに対応しており、締結作業時に必要とする反力受けが無くてもトルク管理締結を行えるナットランナーです。
展示ブースでは、反力受け未装着状態でのトルク管理締結の動作デモを行っていました。実際に実物をお借りして締結作業を行ってみましたが、反力受けが無くても反力を受けることなく確実に締め付けができました。
反力受けが無くても反力を受けずにトルク管理締結を行える秘密こそ、同ブランドが展開する独自ワッシャー「ハイトクワッシャー」です。ボルトと締結物の間にこのワッシャーを挟み込み、反力をワッシャー受けることで反力受けを使用しなくても高精度なトルク管理締結が実現できるそうです。
ちなみに一般的なボルト締結作業では反対側のナットの共周りを防止するためにナット側からバックアップレンチやストッパーを掛ける必要がありますが、ハイトークワッシャーによる締結ではローレットが施されたバクアップワッシャーを組み合わせて使用することで共周りも防止できます。
ハイトークワッシャーで反力受けアームが不要となることで、「作業場所の制限」や「反力受けに使用するほかのボルトに対するせん断方向の力」が無くなるので、ボルト締結の作業効率向上や信頼性向上・人件費削減などが見込めるとのことでした。
LION GUN本体の操作は、本体後部のディスプレイ上で各種操作を可能です。主な機能は1N・m単位のトルク設定、作業記録機能、トルク+角度締め制御、モード切替などトルク管理締結とその作業記録に必要な機能を工具単体で操作することができます
Bluetooth接続にも対応しており、PC上のアプリと同期することで作業プリセットの書き換えやデータ確認などの作業も簡単に行うことができます。
同ブースの展示では、36Vバッテリー動作の「LITHIUM SERIES II」や油圧トルクレンチ「MXT」「AVANTI」なども展示していました。
アトラスコプコ株式会社
欧米市場を中心にナットランナーで高いシェアを持つアトラスコプコも展示を行っていました。ブース内で展示していたのは、2020年発売の高トルクバッテリナットランナ SRB81シリーズです。
SRB81シリーズは、高い信頼性のトルクトランスデューサと角度ゲージを採用する高精度締付制御を実現するナットランナーです。Wi-Fiアクセスポイント機能やPLC連携・同社の組立ソリューションSQS3にも対応しており、高度なIoTスマート工具の側面も持つ次世代のナットランナーとして普及が進んでいます。
アトラスコプコのバッテリーシリーズはバッテリー装着構造が特徴的で、前後どちらからでもバッテリーを挿入できる仕様になっています。
こちらは後ろからバッテリーを挿入した場合の装着状態。
前側から挿入した状態がこちら。
このようなバッテリー挿入構造を必要とするシーンは思いつかないのですが、ナットランナーは高価格帯の製品なので付加機能も付けやすく、他社との差別化で僅かな違いを付けるためにこのような構造を採用したと考えるのが自然なのかもしれません。
ナットランナーの他には、油圧ポンプ・ハンドコントローラ・バッテリトルクレンチを一式にしたスマートテンショナー STSシリーズも展示していました。