昇圧機(変圧器)とは、コンセントの電源電圧の低下を補償して、工具に適切な電圧を供給するための機械です。延長ケーブルを使用した時のパワー低下や溶接機のパワーの不足を解消するのに使用します。
目次
昇圧機(変圧器)とは電圧降下を補償する機械
昇圧機(変圧器)とは延長コードの電圧降下を補償するために使用する機械です。
コンセントから電気を供給する場合、コード自体の抵抗によって機器に加わる電圧は少しだけ降下します。製品に初めから取り付けられているコードの場合、その影響を含んだ状態で設計されているので気にする必要はありませんが、延長コードなどを使用すると、伸ばしたコードの長さに応じて抵抗値が増えてしまい、製品の出力が低下してしまう場合があります。
電圧降下対策には、より太く短い延長コードを使用するのが一般的な方法ですが、負荷があまりにも大きい場合や長い延長コードを使えない場合に昇圧機(変圧器)を使用して電圧降下分を補償します。
家庭用コンセントの場合、ブレーカーから距離の遠いコンセントを使っているケースなど、気づかないうちに延長ケーブルを使用しているのと同じ状況になっている場合もあるので、家庭のDIYなどでは1台用意しておくのもおすすめです。
テスターでコンセントを確認しても、電圧降下はわからないことも
コンセントの電圧降下は、延長コードや細い配線などで発生する現象です。
なら「テスターで測定して電圧降下量を確認すれば電圧降下の影響がわかる!」とテスターで測定しても、よほどの漏電でもしていなければ「100V」と表示されてしまい、一見すると電圧降下はないように見えてしまいます。
実際の電圧降下は、負荷を接続して大量の電流が発生している時に顕著になります。実際の電圧降下は機器をONにして負荷をかけた状態になるまで影響が現れません。
昇圧機を使っても電力容量の上限は変わらない
変圧器の使い方で注意しなければならないのが「性能を上げる機械ではない」ことです。
溶接機だと、溶接を安定させるために昇圧機の使用を考えるケースもありますが、昇圧機は電圧を上げる機械なので電力容量そのものを増やしているわけではありません。
例えば「家庭用100V電源はφ1.6mm溶接棒しか使えないけど、昇圧機を使えば出力が上がってもっと太い溶接棒も使えるに違いない!」なんて考えてしまいますが、実際の溶接に必要なのは電力なので、昇圧機を使ってもブレーカー容量を上回る性能を得ることはできません。
昇圧機はあくまでも、電圧降下による性能低下が発生してる状況下で電源の電力容量に余裕のある状態で使える機械です。
電動工具への使用には注意が必要
電動工具に昇圧機を使う場合、単純な構造の電動工具に限り使用できます。単純な構造の電動工具とは、モーターとスイッチだけを搭載した電動工具で、変速を搭載していないブラシモーターのグラインダーなどを指します。電子制御やインバーターを搭載している電動工具への昇圧器の使用は基本的に厳禁です。
半導体による制御を搭載している電動工具の場合、異常に高い電圧(サージ)が入力されて制御回路を破損させたり、異常な動作の原因になる場合があります。また、モーターの最大出力を高めにしてモーター制御によって適切な出力に調整している制御を行っている場合もあるので、昇圧機の使用が必要ないような制御を行っている場合もあります。
電動工具に昇圧機を使用する場合には、取扱説明書を見て使用できるかの確認が必要です。
おすすめの工具用変圧器
昇圧器(変圧器)にはさまざまな種類がありますが、大きく分けると「海外家電を動作させる変圧器」と「工具向けの変圧器」の2修理が販売されています。
この2種類の変圧器の構造に大きな違いはありませんが、容量の大きさや保護機能などが違うので、溶接機や電動工具に使用する場合には工具・機械メーカーが販売している変圧器を使用します。
スター電器製造 トランスターハイアップ SHU-20D
溶接機を展開するスター電器製造が販売しているのがSUZUKIDブランドの昇圧器「トランスターハイアップ SHU-20D」です。
定格容量は最大2kVAで、1.5VAでは使用率100%で使用できます。100Vの昇圧専用で、出力電圧は115Vと125Vの2系統を備えており、コンセントも2つ搭載しています。
マキタ(Makita) 昇圧器 DXタイプ A-05979
電動工具メーカー マキタ純正の昇圧機が「A-05979」です。
容量は2kVAで昇圧性能は115V/125VとSUZUKIDのSHU-20Dと同仕様です。性能的に他社品との違いはありませんが、マキタ純正品の昇圧器である点と、マキタ販売網による修理依頼のしやすさが大きなメリットです。